ブロックチェーンを活用しないみずほの仮想通貨Jコインの狙い
えええええええぇ!!? みずほの仮想通貨Jコインはブロックチェーン使わない仮想通貨だってぇ??!
あったりまえだよ。仮想通貨とブロックチェーンは別物だもん。一種の仮想通貨、ビットコインの創設でサトシナカモトがブロックチェーン技術考え出しただけだよ。
技術とサービスは切り離して考えましょう。これは常識だよ^^
仮想通貨の歴史を調べて、改正資金決済法読めばすぐわかるよね。
みずほ銀行の雄姿!!
<出所 WIKI >
2017年9月、みずほフィナンシャルグループは、日経新聞主催の講演会で2020年を目指して「ブロックチェーンを活用しないみずほの仮想通貨Jコイン」を発表しました。仮想通貨のレートは固定されており円と等価交換できます。また「全ての邦銀が大同団結すべきだ」と述べ、他メガバンクや地銀などとの共同発行を目指すと説明されています。提携先にはゆうちょや地銀が挙げられています。そして銀行口座と繋ぎ、参加した仲間内の企業間、更に個人や企業が買い物や取引の決済に使え、決済や送金が自由にできるとされています。
仮想通貨MUFGコインを計画している三菱東京UFJ銀行にも参加を呼び掛けています。(尚、MUFGコインはブロックチェーンによる分散記帳方式)
仮想通貨ビットコインはブロックチェーン方式を提唱し、ブロックチェーン方式が脚光を浴びていましたが、みずほの提案する仮想通貨Jコインは通常の集中処理方式です。尚、Jコイン検討以前にみずほがテストしていたみずほマネーはブロックチェーン方式でした。
これはビットコインなどブロックチェーン方式や仮想通貨ファンの間で大変な物議をかもす事件です。仮想通貨とブロックチェーン技術は切り離して考えるべきだと申し上げた筆者の書籍の分析は間違っていませんでした。(電子マネー革命がやって来る!)
ブロックチェーンを活用しないみずほの仮想通貨Jコインの狙いは一体、何でしょうか?
その前に銀行業界は、長く続いているマイナス金利など低金利政策で国内では全く稼げない状況にあり、金融庁のレポートでも地方銀行の過半が本業赤字となっています。そうした中、都市銀行は既に収益の半分近くを海外で稼いでおり、収益の軸足を海外に移すと共に国内での不採算店舗の廃止、人員削減の方向にあります。(三菱UFJ銀行はチーフトランスフォーメーションオフィサーを任命して、国内従業員の3割、9500人分の仕事を削減予定、店舗も2割削減を検討、みずほ銀行は今後10年で1万9千人分の業務量を減らし、店舗も20-30店を統廃合)そして更に国内のリストラによって北欧や英国、米国など世界中の銀行が目指しているキャッシュレス社会に対応した21世紀型の金融サービスにおいて戦える組織体制を作る方向です。そのキャッスレス化の手段としてみずほの仮想通貨Jコインが提案されています。
1、改正資金決済法上、仮想通貨にブロックチェーン方式は要求されていない。
改正資金決済法上、仮想通貨が決済手段として定義されました。しかし仮想通貨は、金融庁の説明書では以下のようになっています。
「仮想通貨とは以下の性質を持つ財産的価値をいいます。
① 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法的通貨と相互に交換できる。
② 電子的に記録され移転できる。
③ 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない。
有名な仮想通貨として例えばビットコインがあります。」
ブロックチェーンなど技術論は全く述べられていません。この点をみずほフィナンシャルグループは、考慮したのでしょう。
2、 銀行にとり前払い式支払い手段(電子マネー)は魅力が無い。
改正資金決済法の金融庁説明では銀行も前払い式支払い手段(電子マネー)の発行は可能です。しかし、銀行口座のサービスに比べて「前払い式支払い手段(電子マネー) + 為替取引」の制約が大きい為、魅力が無いと考えられます。前払い式支払い手段と為替取引の区分などです。
従ってみずほフィナンシャルグループにとって電子マネーと言う選択肢は考えられません。これは他の国においても同じですが。
3、 何故スマートフォン版のデビットカードでは駄目なのか?
北欧の銀行業界はクレジットカードとデビットカードにより、外部からのサーバー型電子マネーの侵略無しに、スマートフォン主体によるキャッシュレス社会を実現しました。一方タイはサーバー型電子マネーが急速に伸びています。(スマートフォン型のLinePayやアリペイ)それに対してタイの銀行業界とタイ政府は2017年初からスマートフォン決済・送金型のプロンプトマネーを出しています。(年末までには店舗決済まで拡大予定)これは明らかにスマートフォン型のデビットカードサービスです。また米国銀行業界も時間がかかり過ぎるACHなどに替わる新たな銀行ネットワークZelleに参加する銀行連合により、スマートフォン版デビットカードアプリを出し始めています。Zelle(旧clearXchange)の共通アプリやChase Payなど各行の独自アプリによりデビットカード、クレジットカードのスマフォ版対応ができます。(アップルペイやPayPal、Venmo、Square Cash対抗サービス)Zelleもプロンプトマネーも共にブロックチェーン技術は採用していません。
従って本来、JコインはZelleもプロンプトマネーのようなスマートフォン版デビットカード(含む銀行クレジットカード)を目指していると考えるのが自然です。
4、 敢えて仮想通貨の仮面を被る訳。
2020年を目指すJコインを発行する銀行業界が最も恐れているのは2018年春に始まるとされるアリペイの国内版の登場であり、アリペイ登場の波に乗り、アリペイに刺激を受けて成長する可能性が高いLinePayの存在です。銀行業界としては本来、スマートフォン版デビットカードで対抗したいと言うのが本音でしょう。
まずみずほがJコインに関してブロックチェーン技術を外したのは賢明な選択だと考えられます。ブロックチェーン技術は英国のイングランド銀行や中国の中央銀行などで未来技術として高く評価されていますが、規模の面やセキュリテイの面で十分実績があるとはいえず、運用面でもビットコインは分裂を繰り返しています。ブロックチェーンの世界的な研究コンソーシアムR3CEVも問題があることを認めています。投機を狙ったビットコイン型は兎も角、大手の銀行が消費者相手に活用する、本丸での本格金融利用には早すぎると言う判断でしょう。実際、みずほフィナンシャルグループも貿易金融などの個別領域ではブロックチェーン技術を採用し始めています。
一方国内の改正資金決済法や今後の再改正では、決済手段としての仮想通貨は、自由度が極めて高い可能性があります。例えば円ベースでの全銀ネットにアリペイやLinePayが参加するのは、恐らく日本では不可能でしょう。(このあたりが柔軟な新興国のインドや米国などとちがいますね)しかし、仮想通貨の送金・決済ネットワークであれば、一般事業者も銀行も等しく参加できる可能性があります。みずほフィナンシャルグループが敢えてJコインに仮想通貨の冠を被せたのは、キャッスレス社会に向けた自由度を見据え、そのコントロール権を握るためでしょう。
そう考えれば三菱UFJのMUFGコインは少し早すぎ、みずほの、Jコインはデビットカードのスマフォ版狙いとしては、よく考えられていますね。
世間が仮想通貨=ブロックチェーン論を礼賛する中、仮想通貨とブロックチェーン技術は別物と論じ、みずほグループで推薦図書に指定して頂いた書籍です。