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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

RPAと知識論、RPAは暗黙知の表出化にあらず、埋め込み知

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<出所  https://kminalearningorganization.weebly.com/creating-and-effectively-leading-learning-organizations.html>

 長年日本ナレッジマネジメント学会に関わり、日本CFO協会のWinActorなどのRPAセミナーに1.5年ほどかかわった経験からRPAと知識の関係について一言情報発信させて頂きます。その背景にはAI学派の台頭と手の技(暗黙知)に基礎を置く日本のモノつくりの衰退があり、モノの上にソフトウエアが載りデータを加工する(サイバーフィジカル)デジタル資本主義、新しい産業革命の台頭があります。

■ モノつくりと知識理論

日本のモノつくりにおける高品質と国際競争力の源泉を明らかにしたのは、ポラニーの暗黙知論を知識創造論に発展させた野中理論(SECIモデル)でした。そこでの評価は、「知識の源泉は人の身体にある(知の身体性、手の技を知識と喝破した)点にありました。しかし中国の深圳や米国のシリコンバレーに代表されるサイバーフィジカルの時代には、開発の目線はソフトウエアとデータによるサービスにあり、モノつくりにはありません。(ものは既存のモジュール備品をかき集め、プロトタイプを1-2日で作るやり方)その結果、新しい資本主義における知識論では手の技(暗黙知)の重要性は薄くなり始めています。

■ ISO30401やKMグローバルネットネットワークで復活する「学習する組織論」

野中理論が華やかに登場する90年代以前には、知識は身体ではなく頭で考えるものであり、また組織開発とか、システム思考(一般システム論)、組織学習と言う事が盛んに言われていました。その一つがピーター・センゲの「学習する組織論」です。ある意味で野中理論以前への先祖返りが始まっています。

ナレッジマネジメントのISO30401(国際標準)が提示され、2018年秋にも最終決定されます。また海外のナレッジマネジメント研究組織の国際連合(11か国が参加)するKMGNの活動も盛んになっています。注目すべきは新しい産業革命の時代を迎えて「学習する組織論」がISO30401、KMGN共に再評価されている点でしょう。

これまで学習する組織論においては知識がどこにあるか問われたことはありませんでした。しかし学習する組織論における知識の説明として知識を形式知(論文など)と暗黙知(身体に付随した知識)論が見逃していたEmbedded Knowledge(埋め込み知)に注目が集まり始めています。例えば製薬会社においては「薬は知識の塊」であり、家電メーカーにとっては「4Kテレビは知識の塊」です。同様にビジネスプロセスやサービスにも知識は埋め込まれています。従来は設計図面としての形式知を重んじすぎたため、製品やサービスに埋め込まれている知識は「下位にある劣るモノ」として見落とされていました。イノベーショインの方向とスピード、抑制や促進を決める企業風土も埋め込み知の一部です。学習する組織論の知識の本格議論は未だこれからですが、形式知、暗黙知に加えて埋め込み知と言う知識三元論が次第に注目され始めています。その場合、AIやITシステムがビジネスプロセスの中で保持する知識は埋め込み知です。

■ RPAと知識の吸収、蓄積、再利用、知識のサービス化

野村総研の「デジタル資本主義」(東洋経済)の215ページようにRPAを暗黙知の形式知化ととらえる伝統的な思考法もありますが、学習する組織論の視点からは明らかに「手作業中心のビジネスプロセスに埋め込まれた知識をルールベースが録画して、知識として吸収し、蓄積し、その後AIベースの埋め込み知としてサービスとしてなんども再利用すると言う説明」の方が筆者にはしっくりくるし、時代に即していると思われます。まるで音楽のスポッティファイやドラマのネットフリックスのように知識がサービスとしてビジネスプロセスの中で再利用されると言う見方です。

知識論も新たな産業革命を迎えると進化しますね。

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