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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

AOL、フレンドスターのように没落し、売り飛ばされるのかマイスペース、成長するフェースブックとの差の意味

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<序文>

 嘗てグローバルなSNSの代表企業と言われたマイスペースが社員の47%のリストラを発表し、ニュースコーポレーションの外部に売り飛ばされると言う見方が強まっています。ニューヨークタイムス誌が記事を纏めています。それによればマイスペースの没落は「大企業との文化の摩擦」「売り上げや内部統制のよる締め付けが創造性を破壊した点」「音楽やセレブ中心のマイスペース、地道なパーソナルネットワークを促進するフェースブック」「ユーザーインターフェースの問題」などが取り上げられています。筆者は「仮想社会のマイスペースと物理的世界(実社会)に定着したフェースブックの差」が一番の要点だと思います。

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<マイスペースの歴史>

 2003年7UCLA出身のトム・アンダーソン南カリフォルニア大学経営大学院出身のクリス・デウォルフらと創設した音楽インディーズの為のSNSがマイスペースでした。2005年にメデイア王ルパートマードック氏に5.8億ドルで買収されています。この時はバイアコムと激しい買収合戦が展開されました。2009年にフェースブックに抜かれるまで英語圏では最大規模のSNSでした。日本ではソフトバンクが提携しています。(2006年末「マイスペース株式会社」の設立)

しかし2009年には参加者数でフェースブックに抜かれました。

そして20111月、社員47%(社員数は1100人)のリストラが発表され、リストラ終了後にはニュースコーポレーションの外部に売却されるという見方が出ています。

 

<官僚的大企業文化、売り上げ至上命題、内部統制にITベンチャーが潰された!!>

 

 ニューヨークタイム誌やビジネスウイーク誌などは、マイスペースとフェースブックを比較して、マイスペースには買収先の大手メディアのコングロマリットであるニュースコーポレーションの持つ官僚的大企業文化、売り上げ至上命題、内部統制と言う課題が肩にのしかかり、その為、ITベンチャー企業の持つ自由な発想や創造性が殺されてフェースブックに負けたと見ています。嘗てのAOLもタイムワーナーと合併して同じ問題にぶつかりました。マイスペースはマードック氏がマイスペースに強い興味を持っていた2007年頃までは、マイスペースの経営者二人とマードック氏はパブでよく酒を飲み、まるでソフトバンクの孫さんみたいに「よしまかせろ!!」と言った感じでマイスペース案件はニュースコーポレーションの官僚制度をすっ飛ばして組織を通っていました。しかし2007年にマードック氏がウオールストリートジャーナルの買収に意欲を示し始めると、マイスペース経営幹部とお酒を飲む足は遠のきます。そうなると官僚的大企業文化、売り上げ至上命題、内部統制がマイスペースを押しつぶし始めます。参加者満足や仕組み革新よりも広告売り上げを稼ぐこと、内部統制などが重くのしかかるとITベンチャーの創造性や革新意欲は失せてしまいます。

 

この点はニューヨークタイムス誌以外にもビジネスウイーク誌などの経営誌も既に何度か指摘しています。

 

<シンプルな仕組みのフェースブック、複雑すぎるマイスペース>

 

 加えて誰にでも使いやすいシンプルな仕組みのフェースブックと自由にプロフィールが変えられる反面、複雑だというマイスペースの仕組みへの批判も恒常的にあります。

 

<セルブと音楽家優先のマイスペース、偏りの無いフェースブック>

 確かにマイスペースは「まるでパーティみたい」と言う感想は良く聞きます。

セレブとインディーズの音楽家に偏ったマイスペースに対してフェースブックは地道なパーソナルな会話、パーソナルなネットワーク重視です。一言で言えばマイスペースは、個人のネットワークと言うより、セレブ優先のネットコミュニティだった訳ですね。

 

この点はツイッターに似ています。

 

 

<もろくはかないソーシャルメディア、仮想社会のAOL、フレンドスター、マイスペース>

 では一番大きな相違点は一体何でしょうか? AOL、フレンドスター、マイスペースは須らく「ネットコミュニティ」であり、この点は1995年のサンドラブロック主演の映画「ザインターネット」以来、全て同じ仮想社会です。フェースブックと比較すればこの点はミクシィもツイッターも同様にネットだけのコミュニティと言う仮想の性格がまだまだ強いです。本名であれ、ニックネームであれ、アバター姿であれ、「ネットの友達」であり、基本的に顔を見たことが無い知り合い関係が中心です。ここが最近流行の「実名とニックネーム論争」の本質だと思われます。

 

こう言った仮想社会の関係、ネットだけの関係、日本で言われている所謂、ソーシャルメディアは、「散り急ぐ桜の花びらのように非常にもろくはかない傾向」があります。ネットコミュニティ=仮想社会を背景としたソーシャルメディアの持つ「もののあわれ」の美学ですね。

一方フェースブックは「ネットコミュニティ」ではなく「ネットを介した現実のコミュニティが核」になっています。

 

 

<仮想社会のマイスペース、現実社会に根付いたフェースブックの違い>

 もののあわれの美学や極楽浄土の色彩の強いネットコミュニティのマイスペースでは嘗て「オンラインプレディターの問題」など色々な問題が起こりました。

色々な問題が発生した仮想社会サービスやゲームの世界と本質は同じな訳ですね。


一方フェースブックは2008年の大統領選挙で「ネットを介したコミュニティ」として現実世界中心に活用され、米国社会に定着しました。

 

AOL、フレンドスター、マイスペースとフェースブックはそもそも発生の仕方が異なります。前者は知らない人同士がネットを介して初めて知り合います。そしてバーチャルコミュニティを作り上げます。一方フェースブックのルーツはハーバード大学など大學、高校の実際のコミュニティにあります。現実世界の学園生活を背景とした名簿や連絡網がフェースブックです。これは企業内SNSに近いですね。現実世界のネットを介した連絡コミュニティが大學から企業へ、更にオープンに拡大したのがフェースブックです。ですからフェースブックはマイスペースのような大きな問題も無く、2008年の大統領選挙でインターネットが社会に定着する中、拡大しました。これには流石のツイッターも歯が立ちませんでした。フェースブックはネットの現実社会への定着と言う時流に上手く乗った訳です。

 

国内でミクシィが一定程度、ツイッターに食われた理由もこの点にあります。社会に定着した連絡網としての性格がミクシィにはまだ十分では無かった訳ですね。

 

<日本の現実社会に定着できるかが勝負のフェースブック対ミクシィ>

 

 ツイッターはミクシィを参加者数で上回っています。しかし滞留時間ではまだ到底かないません。それだけミクシィの方がオフ会などを通して現実社会の人間関係に食い込んでいると言うことでしょう。しかしフェースブックに比べて未だ十分ではありません。

 

これから始まる日本社会でのフェースブックとミクシィの戦いは面白そうです。

それにしても最近の大手新聞はツイッターのことなどすっかり忘れたような書き方ですが。

 

 

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