そんな開発やって楽しいですか? - 現代の匠を創出する - その1
今回、匠BusinessPlace 代表取締役社長の萩本順三さんにお会いしてきました。萩本さんとは、ボーランド時代からのお付き合いで、以前、デベロッパーキャンプのパネルディスカッションにもご出演いただいたことがあります。
萩本さんの名刺には、「匠」のロゴが大きく印刷されています。「斤」の部分が「IT」になっていますね。オノづくりをITに変えて現代の匠を創出する。これが、萩本さんが実践されていることです。
エンジニアは悪しきビジネス慣習に囚われるな!
「みんなそんな開発やって楽しいですか!」
萩本さんは、お客様にこう語りかけるそうです。
可能性のあるソフトウェアエンジニアが、自分を牢屋に閉じ込めている。彼らを捉えているものを、萩本さんは「悪しき慣習」と言います。
ソフトウェア開発といえば、昔は画面、帳票で済んでいました。でも、ビジネスが変わり、インフラが変わり、インターネットもあり、クラウドも存在する現在、要求も非常に広くなってきており、作るべきソフトウェアも捉えどころがなくなっています。
ITにおける選択肢が限られていた昔は、結果も容易にイメージできました。でも、今はそうではありません。それにもかかわらず、いままでの慣習のまま開発を行っている。かつては大事だったことが、今ではかえって弊害となり、それが悪しき慣習となっているのです。
例えば、ドキュメント体制や、チェック機構やリスク管理など、IT企業が、円滑にプロジェクトを進めるために作り出した慣習、これらがエンジニアを捉えていると言います。例えば、リスク管理。1ヶ月かけて行った要件定義を盛り込んだ議事録は、お客さんと『言った、言わない』の議論をし、自分たちの責任ではない事を明確にすることだったりする。「それでは嫌われるためのリスク管理じゃないですか」と萩本さん。
「今のITは、要求をお客様から聞いて作るという発想です。そして決めると突き進むことに慣れている。でも、お客様はITの専門家ではないので、ITをからめたときの本当の要求は分からないわけです。でも、それをお客様が言うのをじっと待っている。言わなかったら『言ってない』となる。そのやり方はもう崩壊していると思いますよ」
要求は待つものではなく、共に開発するもの
そのような中、萩本さんは、IT企業もIT活用におけるビジネス価値を提案する時代が来ているといいます。
「IT側から突き上げて、ビジネスや業務がどう変わるかを提案する時期に来ている。これを私は、HOWの突き上げと言っているんですよ」
エンジニアはどうしても「どのように」やるかにこだわります。でも、お客様に対して、HOWをHOWのまま持って行っても仕方がなくて、HOWをWHAT’SやWHYに変えていって、「業務ではこうなって、戦略的な優位性はここです」と言えなければならないわけです。どう実装するかではなく、ビジネスをどう変えるかを考えるのです。
これまでは、「要求はAさんからBさんに出す」という発想でした。それを、お客様とキャッチボールしながら、HOWの突き上げやHOWの手さぐりをしながら、やりたいことに対して、最適なHOWを一緒に見つけるというのが、今求められているやり方なのですね。
「要求は待つものではなく、開発するものであると。これが、私がベースにしている要求開発の考え方なのです。要求は突き詰めると価値になるのです。」
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さて、話はこれからのソフトウェアエンジニアに求められるスキルについて。続きはまた明日。