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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

エンバカデロの今に至る開発ツール部門分離の真実 その2

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Borland Developer Conference 2006は、東京コンファレンスセンター・品川で2006年3月3日に開催された。運営は、植村さん率いる当時のマーケティング本部が全部仕切ってくれた。このイベントに米国本社から来日したのは、デビッド・インターシモーネとジョン・カスター。いずれもデベロッパーリレーションズに所属していた。

イベント前にデビッドと会った。「大変ではあるけれど、スコッツバレーのみんなもやる気でいっぱいだ。日本からも、藤井さんと高橋さんは絶対加わってほしい」

スコッツバレーには、ボーランドを創立したフィリップ・カーンが作ったビルがあり、ボーランドの本社機能がクパチーノに移転してからも、開発ツール部門は残っていた。開発ツール部門は、社内分社して「DevCo」という仮称で呼ばれ始めていた。

クパチーノには、東海岸的なスマートな人が多いけど、スコッツバレーは、いかにも西海岸的な人が多いので、デブコっていうんじゃなか、と不謹慎な冗談を言いながらも、DevCoに取り込まれていった。

イベントでは、CEOのトッド・ニールセンのメッセージビデオを流すことにした。この種の説明は、やはりトップでなければダメだ。今なら、オンラインでつないで、ということが簡単にできるが、当時はビデオ会議システムを持ち込んで、大掛かりになる。経験がなかったわけではないが、ちょうど、世界各国のユーザーに説明するためとして、ビデオが配布されたのでこれを使うことにした。

Tod_video

サポートユーザー向けの隔月紙「Global Support Tech Report」では、以下のように伝えている。

カンファレンスでは、ボーランド株式会社 代表取締役社長 河原正也による開会の挨拶に続き、ボーランドソフトウェアコーポレーション 社長兼CEOのトッド・ニールセンが、今回の発表についてビデオ出演で説明した。

「開発者は、ソフトウェア開発における全プロセスの鍵だ」と開発者の役割を強調するニールセン氏は、IDEビジネスを別の会社へと分離することにした今回の発表を、「ALMとIDEという2つの異なる分野に対して、それぞれより特化した専門性の高いサービスを提供するため」としている。

ボーランドは、ALM事業への集中によって、ソフトウェアデリバリー全体のプロセスの最適化に注力することとなる。ALMプロセスの中でも非常に重要な要素であるといわれるクオリティを強化するために、この分野で実績のあるSegue Softwareを買収したのもその重要な一歩である。

一方、IDE事業は、新たな投資家を募り、別会社へと分離して、開発者によりフォーカスしたビジネスを展開する計画だ。また、売却先が確定しないうちにこうした発表をしたことについては、「適切な売却先の選定にIDE部門にかかわってもらい、今日のプロセスから移行期、そして新会社が設立されるまでの期間、お客様を間違いなくサポートさせていただきたいと考えたから」であると説明した。

続いて登壇したデビッドが次のように語っている。

「開発ツールの広告を見ない。開発者向けのカンファレンスでボーランドの開発ツールを見かけないという声もいただいた。これからは、開発市場からの利益を再度開発市場に投資できるようになる」

難しい立場での優等生的なコメントかな、と思ったのだが、よくよく考えてみると、過度なALMフォーカスから解き放たれれば、むしろ開発者のための仕事ができる。売却のために独立採算の社内分社をすることが、かえって再投資を可能にする構造を生むだろうとの読みがあったと気づかされる。

そもそも開発ツールベンダーがALMに傾倒することの、どこに問題があったのだろう。

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