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予想GUYのソフトバンクケータイと聴衆の予想を手玉にとるプロコフィエフ

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さまざまな予想外を繰り出し、ついに予想GUYの実名や八王子のハンカチ王子まで登場したソフトバンクの携帯電話CM。その中でいつも流れる、あの耳につく音楽があります。そう、20世紀を代表するソ連の作曲家セルゲイ・プロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」の中の<モンタギュー家とキャピュレット家>「騎士たちの主題」と呼ばれる箇所です。

場面やスタイルが変わっても、「予想外」とこの「プロコ」だけは必用に繰り返し、とにかくこの旋律が流れただけでソフトバンクケータイと連想させる手法は、成功しているように思います。

一方、プロコフィエフ ファンにとっては、これぞプロコ! という旋律パターンであり、プロコフィエフらしさのエッセンスが凝縮されています。端的にいえば、単旋律だけでプロコと認識させる特徴を備えているのです。

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CMに流れる例の旋律は、パターン化されたリズムと大きな跳躍を伴う旋律線が特徴です。旋律の開始からわずか4小節で2オクターブ以上高い音に移動。そして、後半、半音階が顔を覗かせます。これは、古典的な旋律線ではありえない動きですが、決して複雑で認識不能というわけではありません。こうした表現は、例えば、子供向けの代表作「ピーターと狼」のピーターの主題にも見受けられ、親しみやすいちょっと変わった旋律、つまりは、古典的な感覚からすると違和感を感じる心地よさが得られます。

プロコフィエフのこういった仕掛けは、難解な半音階旋律を聴衆にぶつけて理解不能に陥れるのではなく、一見、分かりやすさや親しみやすさを感じる導入から、気づかないうちに伝統をひっくり返してみせる、いわば「だまし」のテクニックです。この「だまし」の要素が、プロコフィエフらしさを作っており、「なるほど、プロコだ」と思わせるとともに、ちょっとした違和感から、思わず耳について離れなくなる効果を生んでいるようです。

ソフトバンクのCMを手がけた人が、プロコフィエフの旋律線のこうした特性を利用したかどうかは定かではありませんが、もし確信犯だとしたらよい選曲をしたものです。

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