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ブラームスのドイツ的を阻害する大和魂

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ブラームスの「悲劇的序曲」は、お気に入りの楽曲のひとつです。ブラームスには、対になる序曲として「大学祝典序曲」がありますが、こちらは学生時代に何回か演奏しました。通常の演奏会だけでなく、そのタイトルからか、入学式や卒業式といったイベントのオープニング用の曲としても採り上げたからです(この「大学祝典序曲」略して「大祝(ダイシュク)」、昔旺文社のラ講のテーマ曲として採用していたとのことですが、ナマは聴いたことがありません)。

さて、「悲劇的」は、今のオーケストラで数年前に演奏することができました。聴いて好きな曲と演奏して好きな曲は違うというのが定説ですが、「悲劇的」については演奏しても面白い、弾き応えのある楽曲でした。しかし、CDで聴くようなシャープさがいまいち出ない。

悲劇的は、鋭い和音で始まり、徐々にリズムが細かくなって鋭さを増していきます。このとき、弦楽器の8分音符に対し、木管楽器が鋭い16分で切り込みます(譜例1)。

譜例1:

楽譜を見ると、効果を打消し合うようなかたちにも見えますが、木管楽器が3連符ではなく、ちゃんと16分音符4つ分のカウントのなかで、リズムを刻めば、譜例2のように聴こえるはずです。これに、音色の違い、アクセントがぶつかり合い、鋭さを感じられるようです。

譜例2:

しかしながら、アマチュアでは、こういう16分音符のリズムは、甘くなりがちなものです。特に、日本人の性(さが)として、ドイツ的なキックではなく、阿波踊りのリズムがつい顔を出してしまいます。阿波踊りのリズムは、3連符。「え~らいやっちゃ、え~らいやっちゃ」でドイツ音楽をやると、ゆるい音楽になってしまうのです。

そもそも、ドイツ的な固さ、鋭さは、ドイツ語の音感にも起因するといわれています。常に冠詞が付くドイツ語は、リズムにすると、長い音の前に短い音符がよく入ります。言い換えれば、付点8分+16分のリズムは、16分+付点8分に感じるべき場合が多い。

「え~らいやっちゃ、え~らいやっちゃ」も、ドイツ風にいうと「エーライ・ヤッチャ・エーライ・ヤッチャ」ではなくて、と「エーラ・イヤッ・チャエーラ・イヤッ・チャ」になるのかも。でも、発音できないなこれ。

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