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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

それでも「長い会議」が必要なワケ

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働き方改革の流れを受けて「残業を減らそう」「会議の時間を短くしよう」といったムーブメントが盛り上がっている。それに向けて取り組む企業も増えてきた。働く時間を減らしてなお同程度の経済活動を維持できるなら、もちろん生産性は向上するし働く人々の満足感も高まるだろう。

効率性を高めることに異論はない。ただ、その一方で効率一辺倒の改革でいいのだろうかという疑問が残る。

子どもの頃、どの学校でも行われた50メートル競走。競走である以上、子どもの目的は誰よりも早くゴールすることで、そのためにタイムを縮める努力をした。一方、ビジネスの目的は「社会に貢献すること」「売上げを増やすこと」などで、本来タイム(=残業時間、会議時間など)を縮めることと良いビジネスを遂行することに相関関係はない。

効率性を高めれば働き方は改善する――。一見すると響きの良さそうな取り組みのなかにも盲点は潜んでいる。例えば、絶対に必要な残業は存在する。そんな現実を無視して一律に強制的に帰社させることは社員の働く意欲を奪うことに等しい。ビジネスの質も下がるだろう。

始める前に「本当にビジネスに役立つのか」「社員は喜ぶのか」を考える必要がある。そして今、もっとも気になるのが「会議の時間を短くしよう」というムーブメントだ。

長い会議の2つのメリット

飲み会でプロジェクトに関する議論が白熱したり、タバコを吸いながら有意義な情報交換をしたり、バッタリ会った同期との立ち話で抜群のアイデアが浮かんだり――。よく知られた話だが、いい情報いいアイデアは世間話から生まれることが少なくない。

ところが、今の働く環境はこうしたムダ時間を許さない。プライベートなコミュニケーションは減り、オフィスは全面禁煙、廊下で立ち話する余裕すらない。だからこそ、本来費やすべきだった「世間話をすべて集めてみたらどうだろう」と思うのだ。

それも会議の1つの役割に他ならない。

会議中にいいアイデアが出たら、たとえ本題から脱線しようと時間が長くなろうと、とことん議論すべきなのだ。せっかく盛り上がっている最中に「はい、会議の時間は終了です」と打ち切ってしまったなら、二度とそのアイデアは出てこないかもしれない。

また、会議の終盤になってからぼそっといい意見を言う人がけっこういる。もっと先に発言しろと怒る人もいるが人にはそれぞれのペースがあり、性格も異なる。短い時間では意見がまとまらない人、先に発言するのが苦手な人、自分の意見はないけど他人の意見をまとめるのが得意な人もいる。

こういった効率の悪い人たちの意見を待ってあげる優しさも必要だ。彼らは単に短い会議に不慣れなだけであり、決してビジネスの効率が悪いわけでもなく、ましてやる気がないわけでもないのだ。

会議とは、その名の通り「人と会い」「議論する」こと。ビジネスの最も基本とするところである。ITが発達してもビジネスのスピードが速くなってもこの原則は変わらない。言うまでもなく、会議の時間を短くすること=いいビジネスの条件とはならない。いいビジネスを達成するため「人に会い」「議論を尽くす」ことが、いいビジネスの条件である。

埋もれたアイデアを拾い、効率の悪い人を救う――。長い会議ならではのメリットだろう。

それでも会議時間を短くしたい

コンサルタントという仕事柄、多くの企業の会議を見てきた。経営会議、店長会議、マーケティング会議、プロジェクト発足のための会議――。1つ言えることは「ヘタな会議は自分たちでは治せない」ということだ。

会議というのは長年の習慣の蓄積とも言える。同じ会社で働き、同じ企業文化を共有する者が、同じ目的に向かって議論する。リポートの作り方も同じなら、PDCAの回し方も同じだ。つまり、会議のどこかに問題があっても、誰もそれに気づかないまま進んでしまう。

メールで済むはずの業務報告に長々と会議時間を割いたり、議論すべきテーマをあっさり流していたり、あるいは、そもそも会議のテーマに必要なメンバーが揃っていない定例会議すらある。会議時間を短くする前にやるべきことはたくさんあるのだ。

ブランディングに関して2カ月も会議を開き続け、それでもなお答えに至らない企業があった。オブザーバーとして会議に参加したところ問題はすぐに見つかった。議論するポイントがズレていたのだ。そこでちょっとアドバイスをするとわずか3時間で問題は解決してしまった。

ヘタな会議を修復する秘訣は「無関係な人に会議を見てもらうこと」だ。例えば、同じ会社でもほとんど関わりない部署の人を会議に呼んでみる。すると「何で今だにこんなリポートを作ってるの?」「あの人のプレゼン部分、そもそも要らないんじゃない?」など、新鮮かつ合理的な意見を聞くことができるはず。それほど「長年誰にもジャッジされていない会議」にはムダが多いものだ。

あるいは反対に、自分から無関係な部署の会議に参加させてもらうのも1つの手段だろう。「うちの部署とそっくりな部分で会議が躓いている」とか「ファシリテーターの質が悪いから意見がまとまらない」とか「黙っている社員を放置しているのが問題だな」とか、不思議と他人の会議の欠点には気づくものだ。それを我が身、我が会議と比べてみれば、案外参考になることも多い。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

会議を見れば企業が見える――。マーケティングを立て直す専門のコンサルティングです。詳しくは下記Webサイトをご覧ください。

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