【ワタクシの仕事術5】 99枚の名刺でビジネスを回す方法
名刺はもらった瞬間に意味がなくなる。なぜなら本人と直接会って話をしてしまえば、それ以降はメールや電話でやりとりをするため、その後の使い道が特にない。この"不必要なビジネスツール"をいかに有効活用するのか? 業界がバラバラにまたがってしまう私の場合はよけいにやっかいで、普通とはちょっと違う感じで管理している。
『名刺サーフィン』こそ管理術の極意
名刺をきちんと管理するテクニックとは、最終目的は後々の"見やすさ・使いやすいさ"を見つける作業である。もらったらあまり使わないが、後で引っ張り出す可能性もあるのが名刺という存在。そこで「閲覧性」「携帯性」「検索性」を念頭にファイリングしたり、現在では様々なIT機器に簡単にデータを落とし込んだりなど、いろんな方法がある。
webでニュースをチェックするビジネスマンが多いが、私は必ずパラパラと紙の新聞をめくる<原始的スタイル>を保っている。ネットに頼り過ぎると興味のある記事にしか目が向かない恐れがあり、コンサルタントの私にとっては、それは致命的である。名刺も同じことで、データ化してしまうと二度と意識が向かない"埋もれた人材"が出てくる可能性があるので、やはり紙のままファイリングという原始的な手法で管理している。
ファイリングの手法としては「会社・業界」といったテーマでカテゴライズするのが無難かつ効率的かと考え、当初はこの方法でやっていた。マスコミ業界なら新聞、テレビ、雑誌などの名刺をかため、ファッション業界なら百貨店、アパレル、スタイリスト、IT業界なら代理店、WEB系コンサル、SE。これに倣って美容業界、飲食、金融、教育・・・と、業界ごとにファイリングしていた。
メリットはある人物の名前が思い出せなくても、業界やどんな仕事をしているかくらいは思い出せるので、目的の名刺はすぐに探し出せること。しかし思わぬデメリットがあった。名刺の基本的な役割は社名と肩書を表現すること、しかし、1枚の名刺の奥には無数の人脈が眠っているのだ。
例えば自分でHPを作ろうと考えた。そこでまっさきにIT業界のページをめくるのだが、ふとファッション業界のスタイリストの名刺に目が止まる。「あ、確かこいつの知り合いにHP作成会社の社長いたよな?」と思い出し、そうか、彼女に連絡しようと思いながら、ん? その隣のデザイナーの名刺でまた思い出す。「安くてセンスのあるHP作れる人なら紹介できますよ」という言葉を思い出す。と同時に「そうか・・・、今やっているカルチャースクールのプロデュースの仕事、このデザイナーに話を持っていっても面白いかも・・・。」
などと、名刺をめくっているうちに本来の目的を忘れ、ついつい仕事のアイデアを考えたりしてしまい、そのままネットサーフィンならぬ"名刺サーフィン"にハマってしまうことが多い。
私の場合、名刺の8割が経営者かフリーランスで占められており、それぞれが様々な人脈を裏に抱えている人々である。業界をまたいでコンサルタントをしている私が、そもそも業界ごとに名刺をカテゴライズしてもまったく意味がないことを悟った。
そこで考え付いたのが【ハブズ流ファイリング】という、ちょっと変わった手法である。名刺とは、究極的には、その人が裏に抱える人脈手帳でもある。ハブズの意味に関しては【ワタクシの仕事術1】 人脈を作ろう! とは、思わない方がいいをご参照を。
意味がないようで意図がある『ハブズ流ファイリング』
ハブズからは多くの人物の紹介が入る。紹介された人脈は、これまたハブズな人であることがほとんどで、その先もどんどん優秀な人間とつながっていくことが多い。ビジネスセンスに優れており、なおかつ決裁権を持っているので、スピードとパワーは加速度的に上がっていく。つまり、ひとりのハブズを中心に名刺がどんどん増えていくことを意味する。そこでハブズ中心にカテゴライズすることにした。
例えばハブズA氏をカテゴリーAのトップに据える。そして彼から紹介された順に、時系列で名刺を納めていく。書店の経営者、出版社の経営者、デザイン会社経営者、広告代理店サラリーマン・・・、A氏を軸に名刺を並べることで、たとえ業界がまたがっていても、名刺をもらったひとりひとりの仕事や顔が覚えやすく、印象に残りやすい。反対に言えば非常に忘れにくい。
もうひとつのメリットもあった。なぜA氏が私にこの人脈を紹介したのか? 時間が経過してから名刺を俯瞰することでA氏が私に求めていた"隠された意図"が見えてくる。つまりバラバラの名刺を組み合わせれば、また新しいビジネスが発想できたりするわけだ。
同じ要領でカテゴリーB、C・・・とファイリングしていく。これはもう無茶苦茶・支離滅裂となるのは必至で、とんでもないヘンな人脈ばかりを持つD氏だと、建築家、イベント会社とまっとうなところから、議員、パイロットというセレブな感じ、挙句の果てには歌手、地上げ屋・・・と、もはやまとめようにもまとまんない、俯瞰しても何~も見えてこない相関図となる。
ハブズ流ファイリングは他人が見ればまったく整理されていない非効率な名刺手帳だが、私には使いやすいことこのうえない逸品に仕上がる。またハブズ経由の人脈はデキる人が多いため、名刺を捨てる必要が極めて少なく、名刺管理にあてる時間が少なくて済むメリットがあることも、かなり後から気付いた。
名刺を捨てる・・・。名刺の管理で意外と大変なのが"捨てる技術"、こちらは私の手帳が小さ過ぎるので、これも当初は困った。
99枚しか入らない名刺手帳?
名刺をファイリングしているのは、もともとはシステム手帳として使っていたもの。これがとても小さい。新書サイズ。
1枚のクリアファイルには名刺が3枚しか入らないので、見開きにしても6枚。ファイルは33枚入れるとパンパンになるので、トータル99枚のキャパとなる。なぜこんな小さいのを使っているのかというと、お気に入りの手帳を有効活用したいと思った、ただそれだけの理由。ヘビ皮のいやらしさと色合いが好きで長らく愛用していたため、捨てられなかった。
手帳は巨大である。伊勢丹メンズ館のTRIM限定モデルで、RHODIAとQuo Vadisのネームも刻まれたコラボしまくりモノ。書きまくれる大きさ、持った感じの質感・重量感、醸し出す上品さ、何よりも驚くような皮の柔らかさと独特の皮臭さにココロ惹かれ、先の手帳に別れを告げた・・・と、ちょいとmono的な話。
さて、そんな理由から99枚しか収納できない不便な名刺手帳を使うことになり、ここから名刺を捨てる必要が生まれた。
名刺を捨てることは、重要なアタマの体操となる
捨てる名刺は簡単に見つかる。自分にとって必要のない人材を手帳から省くだけである。もちろん捨てると言ってもゴミ箱でなく、それ専用に用意した「名刺箱」にどんどん突っ込んでいく作業の意。何せ99枚しか入らないから、厳選しないといけない。現在手掛けているビジネスだけでなく、数年後のビジネスまで想像しながら、慎重に選ぶ。その後、名刺箱を開けることはまずないからだ・・・。
大切なのは捨てるときに今一度名刺をしっかり見直すこと。想像力を働かせ、あらゆるビジネスの可能性を探る。ちなみに私の<捨てるルール>は"肩書では判断しないこと"と決めている。若くても優秀なビジネスマンは99枚に残す一方、偉いけど仕事がデキない人は捨てる。要は一緒に仕事をしたいか、将来する可能性があるか、ポテンシャルはどうなのか、というシンプルかつ個人的な判断で行う。
ここで必要になってくるのがハブズ軸とは異なる管理術。名刺をシャッフルし、コーディネートし直す感じで、この人物はAカテゴリーに入れたら面白いだの、この人はライターの下に入れておこうだの、自分の思惑を頼りに入れ直す。
その結果どうなるかと言うと、同じ会社で同じ仕事をしている複数の人から名刺をもらった場合、通常は一群としてファイリングされるのだが、私の手帳ではバラバラに配置されることとなり、一方がITで一方がコンサル枠に入ってしまうこともあるのだが、こちらの方が名刺は将来的には活きるのだ。
稀に、本当にゴミ箱に捨てることもある。会社が変わったからでなく、自分の人生において一切関わりたくないと思った場合のみ。絶対に信用できない人、思想に嫌悪感を抱かざるを得ない人など。こう思わせる人は数えるほどしかいないが、こういう場合は、名刺交換をしていくらかの話をして「では、またいつか・・・」と分かれた直後には、ゴミ箱直行にしている。
私はバイオリズムを非常に大切にしており、ビジネスの良い波と悪い波がはっきりと分かる。良い波が来ているときに"良くない名刺"をもらうと、せっかく上昇トレンドにある自分のバイオリズムが崩れてしまいそうで怖く、縁起悪いモノとして、一刻も早く手元から離すようにしている。
ハブズ流管理をベースにしながら、自分のビジネス感覚でふりわけ99枚に絞った結果、上記のような名刺手帳となる。決して持ち歩くことなく、常に仕事机の傍らに鎮座しており、時間があるときにパラパラと眺めるといった使い方をしている。
お気に入りの手帳を捨てたくない・・・といった理由からコンパクトな手帳となったが、これがベストバランスであるとも考えている。名刺99枚もあれば、十分にいろんなビジネスが可能であることは分かっている。1000枚もいらない。
私の名刺管理術は、どこかマインドマップに近い心理作業である・・・。
(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)
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