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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

農業はファッションから始まる・・・

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週の半分、農業をすることになった私。まったく関心のなかった農業だが、"未知の世界"に踏み込んでいく新鮮さにココロが踊る。さあ、やるぞ! と意気込む私だったが、脱サラして無農薬農業のプロとなった相棒は、私を見つめ、やや厳しい表情をしている。

荒木さあ・・・その格好、どうにかならない?

へ? 何かオカシイ? 私は自分のファッションを上から下まで眺めてみた。赤いジャケットに、銀色のシルクのパンツ。指輪、ブレス、ネックレス。完璧じゃん! ちなみに場所は・・・もちろん畑ではない。こんな格好で農業するか! 私はバカではない。その日は、農業ビジネスの打ち合わせのため、都内の居酒屋にいた。これから私が農業を始めるにあたって、相棒が心構え的な話をするという。

「お前、バカ? こんな格好で農業するわけないでしょ?」と、私。

「いや、お前こそバカか? ファッションじゃなくて、そのマイケル・ジャクソンみたいな髪型だよ」と、相棒。

農業はファッションから始まる

農業と髪型はまったく関係ない。マイケル・ジャクソンみたいな髪型だからといって、野菜の味がマズくなるわけではない。しかし相棒は私にマイケルをやめるようにと忠告するのだった。なぜ?

農業の職場は当然ながら「農村」である。北海道のように広大な土地と異なり、東京にほど近い流山のような「都市近郊型農村」では小さな畑がいくつも点在しており、自分の畑とよその畑がくっつくように隣同士となっている。そこで何よりも大切なのは、日々顔を合わせることになる<近隣農家とのお付き合い>なのだ。

農村というコミュニティーは一般的に閉鎖性が強いと言われており、よそ者を簡単には受け入れない風土が存在する。農家はその土地土地で、おじいちゃんから孫まで代々引き継いできた"伝統的な職業"である。考えてみれば、農地があるから引っ越しができない。都会のように隣人がコロコロ入れ替わることもない。都会人が考える以上に、昔からのコミュニティーは強固なものなのだ。農家にとっての畑とは、いわば自分の庭のような場所なのだ。

自分の庭に突如、マイケルがやってきたら、そりゃあ驚かれるに決まっている。5年前に農業を始めた相棒は、元々都内に住んでいた。よそ者である。そのうえ脱サラ農家なので、さらによそ者である。相棒はこの5年間、地元に溶け込むための努力を懸命にしてきた。積極的に近隣農家と交流し、時には畑仕事を手伝ってあげた。地元の消防団にも入り、地域活動も行っている。そうした地道な姿勢が認められ、今、農家として生きているのだ。

私はマイケルをやめることにした。彼の築いた信頼を守らねばならない。

目がなかなか合わないなあ・・・

ついにきた農業デビューの日。今から1年半も前のコトだが、実に鮮明に覚えている。私はワークマンで"完全なる農作業着"を揃えた。断髪式は前日に済ませ普通の髪型になった。どこから見ても農家である。が、私を一目見た相棒はひとこと「お前、どう見ても農家に見えないなあ・・・」。そうか? 「それと、ピアス外しておけよ」。おっと、ウッカリ。スマンスマン。巨大なダイヤのピアスがつけっぱなしだ。

さて、いざMAKUWAURIの畑に足を踏み入れる。当然ながら何の野菜もないまっさらな畑である。お隣さんの畑にはいろんな野菜が育っているが、正直なところ、どれが何の野菜なのかさっぱり分からない。相棒は歩きながら、ひとつひとつ野菜の名前を教えてくれた。遠くからパッと見ただけで野菜の名前がすぐに出てくる。私は相棒を相当尊敬した。

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それから近隣農家へのあいさつ回り。まるで新入社員気分である。確かにお隣の畑はほとんどくっついているような感じである。30㎝ほど土が持っているだけの境界線で、お隣の伸びた葉っぱがこちらの畑に侵入している。

「あんまり喋るなよ! それから、ギャグは禁止だからな・・・」

私は超オシャベリ。常に会話に笑いがないと気が済まないタイプ。それを見越した相棒から、念押しをされる。MAKUWAURIの畑は南側にひとり、北側にひとり、お隣さんの農家がいる。特に<南側に気難しい農家のオッチャン>がいるから、くれぐれも気をつけるようにと言われていた。

さて挨拶。まずは北側の農家。まず相棒が私を新しい農業パートナーだと紹介し、続いて私が名前を名乗ると、相棒はすぐさまお天気の話や野菜の生育状況の話を始めてしまう。私に喋る隙を与えない作戦のようだ。仕方なく黙る。要注意の南側に挨拶に行くと、幸い? 気難しいオッチャンはいなく、オバチャンは収穫作業をしていた。

「東京から通いで、週の半分農業しにきます」と自己紹介すると「あらまあ~そう・・・遠くからご苦労さんなことねぇ・・・」と言うと、すぐに農作業に戻ってしまった。私は相当に、本当に相当に、背筋が寒くなるくらい、不審な目で見つめられた。上から下までじっくり観察された。アナタハヨソモノ・・・と、思いっきり言われたような気がした。北側も南側のお隣さんも、私の目を見ることは一度もなかった。

これが"農村の洗礼"というやつか・・・

本当に溶け込むことができるのだろうか・・・不安な農業デビューだった。 

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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