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Apple Vision Pro がついに発売 ~「体験」を売ることの難しさ

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昨年6月に発表され、一部の好事家(笑)の注目を集めているAppleの新製品、Apple Vision Proの発売日が決まったようです。

Apple空間コンピュータ「Vision Pro」、2月2日に米国発売

発表直後の記事でも書きましたが、一般の方々の関心はいまひとつ盛り上がっていないようです。まあ、価格を考えると万人向けではありませんし、まったく新しいカテゴリーの製品ですので、仕方がない部分はあります。多くの人の受け取り方は「Appleがもの凄く高いVRゴーグルを出した」という程度のものでしょう。

ar_kakuchou_genjitsu.pngこちらの記事では、Apple自身も、最初はアーリーアダプターの需要で盛り上がるが、その後は先細りになると予想しているということです。

AppleはVision Proの販促セールストークに注力しており最長25分間のデモも準備している

まったく新しい体験を売ることになりますので、いきなり一般消費者というわけではなく、丁寧な説明の下でアーリーアダプターを掘り起こして行き、新しいマーケットを開拓していく必要があります。「店舗に展示されるVision Proを用いた試遊体験は特に重要なものになると予想されて」いるため、「最長25分のデモを含むこれまでで最も洗練されたセールストークを用意している」ということです。とにかく好スタートを切り、初速を維持してその後へ繋げていくという戦略でしょう。

これが、機能や性能ではなく「体験」を売ることの難しさかと思います。最先端のIT技術を売るために最も重要なのが「店舗」というのは、なかなかに皮肉ですが、それができるのがAppleです。Appleのマーケティングには定評がありますが、この辺はやはり凄みを感じます。そういえば、iPhoneも最初は苦戦しましたよね。

iPhoneもMacも、最初は苦労した

iPhoneが発表された当初、世界的にも疑問の声が巻き起こり、日本では「日本にはガラケーがあるからこんなものは売れない」「絵文字が無いとダメ」などと言われ、発売当初は売上が伸び悩んだと言います。しかし、その後どうなったかは、皆さんもご存じのとおりです。

iPhoneのときに、Appleがとった戦略が、「じらし戦略」でした。情報や販路を制限して現場を混乱させ、話題作りを狙ったということです。

iPhoneと戦い、そして転向した記者の懺悔 日本上陸15年、アップル商法の欺瞞と凄味

iPhoneの販売が軌道に乗った後も、新機種発表の度に徹底的な箝口令が敷かれ、イベントへの期待を盛り上げていました。今回Apple Visionが8万台しか生産されないというのも、この辺の戦略を踏襲しているのかも知れません。

さらに思い返せば、Macintoshも発売当初は価格の高さとそれに比しての性能の低さで売上は伸び悩みましたね。Appleはこうして倒産の危機にまで瀕しながらも、新しい体験を創造してきたのです。

MacやiPhoneで新しいコンピューティングの世界を見せてくれたAppleが、次に何を見せてくれるのか、楽しみです。

 

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