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「クラウドの成長は鈍化している」は本当か?

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日経ビジネスに、クラウドブームもそろそろ終焉なのか、と思わせる記事が出ていました。

米テック大手に黄信号、 「ドル箱」クラウドの底は尽きたのか

AWS、Google、Microsoftなどのクラウド各社の7-9月決算が軒並み減益となった、ということで、「米テックジャイアントの成長性に疑問符が付く決算となった。」という書き出しになっています。タイトルとここだけ読むと、クラウドの行く末に暗雲が立ちこめているかのような印象を受けます。

後半は有料記事なのでネタばらしはルール違反なのですが、最低限だけ書くと、結局クラウド各社はクラウドの成長は今後も続くと言っているようです。

computer_cloud_system.png何故この記事が気になったかというと、少し前にもこんな記事が出ていたからです。

アングル:クラウド市場に成長鈍化の兆し、米半導体業界に広がる不安

「IT大手は最新の四半期決算で、クラウド事業の売上高の前年比伸び率が軒並み鈍化。」と書いてあります。この記事は8月の記事ですから、4-6月決算のことだと思いますが、すでに成長鈍化の兆しは見えていたわけですね。

これからは着実な成長に

まあ、そもそもがオンプレミスからの乗り換え需要に乗って成長を続けてきたわけですから、これだけクラウドの利用が普及すれば、置き換え需要が一段落するのは仕方ありません。特にこの2-3年はコロナのせいでクラウドへの移行が加速しましたから、その反動が来ているという面も大きいでしょう。対前年比で見ていては、そのへんの長期的な動向は見えません。とはいえ今後もコンピューティングリソースへの要求は増えては行くでしょうから、成長は続くとみて良いと思います。

さらに、今はドル高やインフレ、高金利の影響も大きいと思われます。これらのファクターを考えると、対前年比の成長率が鈍化したり、利益率が下がったりするのは仕方のない部分もあるのでは無いでしょうか。これまでのような高成長は望めないまでも、着実な成長路線に落ち着いて行く、という流れなのでしょう。

IaaS/PaaSの利益率は落ちていく?

ただ、IaaSやPaaSの収益性は落ちていくのではないでしょうか。IaaSは競合との技術的な差別化が難しく、コストは基本的に規模のメリットで決まります。もともとIaaSは値下げ競争の激しい業界でしたが、全体の成長が鈍化し、競合が増えれば利幅はさらに少なくなって行くでしょう。大手各社はDBやAIを高速に処理することができる自社製のプロセッサを開発するなどして差別化(コスパの向上)を図ってはいますが、やはり価格競争は激しくなっていかざるを得ないと考えられます。

PaaSについても、基礎になるソフトウェアの多くがオープンソースである以上、ここでも差別化の余地は限られます。独自技術を盛り込んだサービスを提供する、いくつかのソフトウェアを組み合わせて新しい価値を提案する、開発環境・管理ツールを整備するなどの取り組みが行われていますが、それができないサービスも多いのです。ここも、各社とも似たような品揃えと似たような価格帯に落ち着いて行かざるを得ないのではないでしょうか。

完全に他社と差別化できて収益を維持できるのは、SaaSになるでしょう。Officeを中心としたフルサービスを展開しているMicrosoftはこの点では強いです。圧倒的なシェアがあれば、AdobeやSAP、Salesforceといったポイントソリューションも収益性は高いと考えられます。

クラウドと言うとどうしてもIaaS/PaaSのイメージが強いのか、クラウドのシェアなどでは未だにAWSが1位でMicrosoftが2位、ということになっていますが、これはIaaSだけを見ていたりIaaS/PaaSのみを比較していたりで、SaaSまで含めると圧倒的にMicrosoftの勝ちです。AWSにはSaaSは無いのでその比較は不公平、という考えなのかも知れませんが、XTECHの記事にもあるように、今後はIaaS/PaaS/SaaSなど、セグメント毎の売上で比較するようにしたほうが良いのでしょうね。

 

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