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創造性とは何か? ~AI が突きつける究極の問い

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AIの進化が止りません。数年前、AIがこのまま進化すると、人間の仕事が奪われるのではないかということが話題になった時期がありました。その後、企業ではDXの名の下に、さまざまな分野で静かに(世論の批判を受けないように、という配慮なのでしょう)人間からAIへの移行が進んでいます。そしてその頃からあったもうひとつの疑問「コンピュータに作曲や絵画制作などの創造的な仕事はできるのか?」ということに、ひとつの結論が出たようです。

画像生成AI「Midjourney」の描いた絵が美術品評会で1位を取ってしまい人間のアーティストが激怒

コロラド州品評会のデジタルアート部門において、ジェイソン・アレンという人が出品した絵が1位を獲得したのですが、その絵はアレン氏本人ではなく、画像生成AIのMidjourneyによって生成されたものだったということです。アレン氏は、これが物議を醸すことはわかっていて出品したということです。

ai_paint.pngこの絵はAIが生成した数百枚もの絵の中から数枚を選び、氏自身が修正を施したものであるということです。氏としてはそこに「人間の創造性」が入っているということ、制作の過程でAIが関与したからと言って、それを問題視するのはおかしい、といったことを主張したいようです。確かに、今ではタブレットを使って絵を描くことも多くなり、制作過程にデジタルを持ち込むことはあたりまえです。どこまでをデジタルアシストと見るべきか、という問題は確かにありそうです。

芸術家の仕事を奪う?

そして、今朝のWiredにも似たような記事が載っていました。

それはエラーか芸術か──画像生成AIが再定義する人間の創造力と想像力

「危険すぎるAI」と言われたGPT-3を世に送り出したOpenAIが今年4月にリリースした画像生成AI「DALL-E 2」のリリースノートには、以下の注意書きが含まれているそうです。

本モデルは写真編集や写真素材制作などの作業効率を高めることができるが、その結果としてデザイナー、写真家、モデル、編集者、芸術家の仕事を奪う可能性がある

なかなか穏やかではありませんが、すでにさまざまな実績を残しているOpenAIの言うことですから、かなりの信憑性があるのでしょう。

変るのはビジネスモデル

ただし、ひとつ気をつけておかなければならないのは、これらのAIは、「まったく何も無い状況から絵画を生み出しているわけではない」ということです。現時点でのAI全般に言えることですが、AIの学習にはデータが必要です。そしてそのデータは、人間が作ったものなのです。つまり今のAIは「既にあるものを組み合わせて、誰も作ったことが無いような(に見える)ものを作り出す」というもので、ゼロから何かを生み出すというものではありません。もちろん、ランダムに何かを生成させることもできるでしょうが、現実的な時間でそれを行えるようになるかどうかはまだ誰にもわからないのです。

その意味で、今のAIが行っていることは「創造」ではなく「翻案」に近いものなのかも知れません。しかし、こういったことが高効率に、簡単に行えるようになれば、これまでの産業構造そのものが変革を余儀なくされることは間違いありません。「創造」の部分は人間に残るでしょうが、制作のプロセス、制作物のありかた、物流などは時代に合わせて変化せざるを得ません。その意味で、一般のビジネスで起こっていることと同じ事が今後芸術の世界でも起こると言うことでしょう。

 

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