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ガートナーが2021年のハイプサイクルを発表

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毎年夏のお楽しみです。米調査会社のGartnerが、2021年版の「先進テクノロジのハイプ・サイクル」を発表しました。

Gartner、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年」を発表

このブログでも毎年(ここ数年は取り上げていなかったかも)取り上げていますが、今年のハイプサイクルはいつもとちょっと違います。「幻滅期」から右がまったくの空白なのです。

出典:Gartner(2021年8月)

20210824-01b.png去年はまだ、右の方にもちらほらとあったのですのが、今年はまったくありません。なんか、潔いですね。まあ、先進テクノロジですから、「今後を見通す」という意味では、これで良いのかも知れません。リリースにあるように、

「先進テクノロジのハイプ・サイクル」は数あるハイプ・サイクルの中でも独特のものです。1,500を超えるテクノロジを分析した上で知見を引き出し、今後5~10年にわたって高度な競争優位性をもたらす可能性が高い、押さえておくべき先進的なテクノロジおよびトレンドを簡潔にまとめたもの

だからなのでしょうね。

ハイプ・サイクルは、Gartnerが毎年発表しているもので、さまざまな新技術が「注目を集め」「社会の関心が高まり」「期待したほどのものでも無いことが判明するが」「それでも有用なものだけが残り」「社会に貢献する」ようになるという流れを1枚のグラフにプロットしたものです。

ハイプサイクルというと、今回の「先進テクノロジ」ばかりが注目されますが、他にも「xxのハイプ・サイクル」といった形で、さまざまなテクノロジー分野毎のハイプサイクルが作られており、それらには啓発期/生産性の安定期も示されています。こういった分野では「今、やっと使えるようになった/活躍中のテクノロジ」が何なのかを示すことも必要なのでしょう。

ブロックチェーン関連技術がピークに

さて、今年のハイプサイクルで「過度な期待のピーク期」にあるのが、非代替性トークンです。「NFT」といったほうがわかりやすいかも知れません。折しも、今日楽天がこんな発表をしていました。

楽天がNFT事業に参入、2022年春「Rakuten NFT」展開し楽天運営の他サービスとも連動予定

NFTはブロックチェーンを基盤とした技術で、今最も注目されています。仮想通貨と同じ技術だからというわけでもないでしょうが、早くも過熱が心配される事態になっています。

アングル:NFTブームが白熱、投機群がりバブル危ぶむ声も

もうひとつの「分散型アイデンティティ」(DDID)もブロックチェーン関連の技術です。これらが過度な期待のピークに上がってきたことで、ブロックチェーン技術の有用性が徐々に証明されようとしています。

デジタル ID を自分で所有

黎明期に目を向けると、ここにも「分散型金融」というのがあります。これについては詳しくありませんが、基盤はブロックチェーンだったと思います。

AIもまだまだ元気

あとは、やはりAI関連が目に付きます。当面業界はディープニューラルネットワークで進むでしょうが、他の技術の研究もどんどん進んでいると言うことでしょう。左下に「量子ML」とありますが、これは恐らくMachine Learningのことでしょうから、量子コンピュータでの機械学習の話でしょう。こういった技術もそろそろ視野に入ってきた、ということでしょう。

ちょっと面白いのが、「準同形型暗号」です。この技術はだいぶ前からあり、広く使われているRSAなども準同形性をもつとされています。調べてみると、「完全順同型」というのもあるんですね。いずれにせよ、暗号化されたデータをいちいち復号化せずに処理することで、データの安全性を高めることができる技術です。

完全準同型暗号を使いやすく--IBMがツールキット公開

しかし、これとても10年以上前の新技術です。昔からある技術が何故今になって黎明期に入ってきたのか、Gartnerの発表だけではわかりませんが、ひょっとするとブロックチェーンと絡んでいるのかもしれません。次の暗号技術は量子暗号なのかと思っていましたが、こういった技術も見直されているのですね。

 

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