ブラウザーの拡張機能の標準化というが。。これは、いつか来た道では?
W3Cが、ブラウザーの拡張機能の標準化および仕様改善のためのグループを発足させたということです。
Webブラウザの拡張機能を標準化へ、Apple、Google、Mozilla、マイクロソフトらがW3C WebExtensions Community発足
普通に考えると、「標準化はベンダーロックインを無くすし、良いことだ」ということになるのですが、今回の動きには若干懸念を感じます。W3Cがあえて標準化のためのグループを立ち上げる、ということは、現実には標準化がうまくいっていない(あるいはいきそうにない)ということの裏返しと考えることもできます。
以前にも書きましたが、Webサイトを記述するための標準言語であるHTMLは、1993年の1.0の後1999年までに4.01までバージョンを上げ、一応の完成を見ました。(別に完成ではないのですが、その次のHTML5が2014年まで出てこなかったため、4.01が長い間使われていたのです)MozzilaやInternet Explorerなどのブラウザーが4.01に対応しましたが、その後のHTMLのアップデートは止ってしまいます。しかしマルチメディアなど技術革新は続き、その間にブラウザー各社(特にIEを作っていたMicrosoft)が独自の機能拡張を行い、Flashなどのプラグインも独自の進化を遂げるなどして、ブラウザー間の互換性が損なわれ、同じWebサイトでもブラウザーによって表示が違う、という混乱した事態に陥っていました。ただ、この点については、「Microsoftが勝手なことをしたから」と攻める向きもありますが、市場からの要求に応える必要があったと言うこともでき、評価は難しいところです。
HTML5がブラウザ間の互換性を確立する筈だったが・・
このような状況を解決しようとしてAppleやMozillaなどのエンジニアが発足させたのがWhatWGであり、HTMLの拡張に着手しました。その成果を受け継いでW3CがHTML5をリリースしたのが、2014年でした。これで、ブラウザ間の非互換性は解消され、どのブラウザーからでも最新のWeb機能を利用できるようになる。。。はずだったのです。しかし、綻びはHTML5が正式に勧告される前に出ていました。HTML5自体の勧告が遅れに遅れ、その間にもGoogleはどんどん新機能を追加していったのです。Googleにとっては、Webの使い勝手を向上させるのはユーザーのためであり、何より自社のビジネスのためにも必須だったのです。これは、なんとなく昔のMicrosoftを思い出させます。ただ、当時と違うのは、Googleは一応開発した技術をオープンにしてHTMLに統合しようとはしている点です。標準化の作業がGoogleの要求に追いついていないのです。
そもそもChromeのエンジンは、AppleのWebkitを使っていました。WebkitはSafariなどでも使われているエンジンで、一時はモバイルブラウザのほとんどがWebkitを採用していましたが、2013年にGoogleはWebkitをフォーク(ソース分岐)させ、独自のエンジンであるBlinkの開発を始めたのです。開発思想の違いが原因とされていますが、以下の記事の最後にあるように、AppleとGoogleの「喧嘩」と見る向きもあります。
GoogleとAppleの仲をW3Cが取り持つ?
現在、WebブラウザのシェアではGoogleのChromeが突出しています。そしてMicrosoftはEdgeのエンジンにChromeを採用しました。つまり、Blink+Webkitが市場の大半を占めているわけです。そしてこの両者は元が同じですから、互換性を持たせることは難しく無いはずです。それに、冒頭の記事にもあるように、ChromeとMicrosoft、Firefoxはすでに拡張機能の仕様を統一しているわけで、要するに今回のグループ発足の目的はAppleということになります。W3CがGoogleとAppleの仲を取り持った、ということなのではないでしょうか。Appleからすると「あっちが勝手に出て行ったんじゃないか」という気持ちではあるかも知れませんが。
しかし、狙い通りうまくいくのでしょうか。根本的な原因は、W3Cのような標準化団体の動きが遅すぎ、ビジネスが求めるスピードに追いついていないことにあるのだと思います。インターネットを作り、支えてきた合議制の文化は、中立的な技術の進化には貢献しましたが、これからますます加速するであろう技術の進歩について行くためには、何か他の方法を考えなければならないのかも知れません。そうでなければ、また昔のように皆が「デファクト」を追い求めるようになってしまうのではないでしょうか。
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