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ChromiumベースのEdge ~自前主義からの脱却を進めるMicrosoft

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ナデラCEOになってから、Microsoftは「囲い込み主義」「自前主義」を捨て、オープン戦略へと大きく舵を切りました。このニュースも、その象徴のひとつでしょう。

Microsoft、ChromiumベースのMicrosoft Edgeプレビュービルドを正式公開

Chromiumは、Google Chromeの元になっているオープンソースのブラウザ開発プロジェクトです。かつてWebブラウザのシェアの大半を占め、これまで自社開発でWebブラウザを開発してきたMicrosoftが、外部の、それもGoogle Chromeのエンジンを採用するというのです。

website_normal.png進化を止めたHTML4、MS独自のHTML拡張、HTML5への乗り遅れ

かつてNetScapeとのブラウザ戦争に勝ったMicrosoftのInternet Explorerは、Webブラウザのデファクトとなりました。企業向けPCの90%以上がWindowsという状況の中、そのWindowsにバンドルされているIEがシェアNo1を誇ったのはある意味当然かも知れません。

しかし、Microsoftはその後のHTML5への波に乗り遅れます。オンプレミスがビジネスの中心だったMicrosoftが、クラウドへの移行を促進しかねないHTML5への対応に慎重だったという面もあったのかもしれません。しかし、IEが進化を止めた中、SafariやChrome、FirefoxなどはHTML5への移行とJavaScriptの高速化を進めた結果、クラウド時代の基礎を築いたのです。IEがHTML5への「消極的な」対応を始めたのは、2011年のIE9くらいからのようですが、ちゃんと対応しようと思ったのはIE11(2013年)くらいからで、それでも過去のしがらみを捨てきれず、一気に過去を清算してHTML5に完全移行しようとしてブランドを変えたのが、2015年、Windows10と共に登場したEdgeです。(IE互換モードは残っています)このへんの話はこちらにも書きました。

未だに残るレガシー IEの功罪

Googleは、IEがなかなかHTML5対応しないことに業を煮やし、2008年にWebkitベースのChromeをリリースしましたが、2009年にIEをHTML5対応にするためのプラグインまで出しています。どうしてもWindowsをHTML5に移行させたかったのでしょうね。逆に言うと、そうまでされるほどにMicrosoftの動きが遅かった(抵抗していた?)と言うことでしょう。

IEをHTML5対応にするプラグイン、Google Chrome Frameを試してみた

エンジン変更は何のため?

それにしても、Edgeが正式にリリースされてからまだ4年も経っていません。なぜこのタイミングでMicrosoftはChromiumへの移行を決めたのでしょうか。

Microsoft、Webブラウザ「Edge」をChromiumベースに ブランドは保持

という記事の中に

この移行は「ユーザーにとってより良いWeb互換性を作り、すべてのWeb開発者にとってWebのフラグメンテーションを少なくする」ためであり、「新しいARMベースのWindows端末でのWebブラウジング」に向けてChromiumプロジェクトに貢献していく

という下りがあります。(IEでHTMLのフラグメンテーション作ってたのはMicrosoftだろ、という突っ込みは置いておきましょう)ARM版Windowsが絡んでいたわけです。というかマルチプラットフォームでしょうね。Chromeは既にあらゆるプラットフォームに対応していますから、マルチプラットフォームへの対応も容易になるということですね。Mac/Linuxだけでなく、Windows 7、Windows 8でも使えるそうです。また、

iOS版EdgeのエンジンはWebKitで、Android版EdgeはChromiumと同じBlinkを採用している

ということですから、そもそもMicrosoftのエンジンはモバイル対応していなかったということですね。時代がデスクトップからモバイルへ移行する中、デスクトップにしか対応していない自前のエンジンを使い続ける理由はどんどん少なくなっていったのでしょう。

また、

マイクロソフト、「Edge」ブラウザを「Chromium」ベースに

には

Chromiumへの移行により、Microsoftはブラウザのリリースサイクルを速められるだろう。

とあり、開発負担もそれなりにあったことが伺えます。Microsoftは、他社のエンジンを採用することで、自社の開発リソースをかけることなく、タイムリーなマルチプラットフォーム対応ができるということです。これはWebブラウザのコモディティ化が極限に達し、ここが差別化の要因にはならなくなったことを示しているのでしょう。

三強? いや、実質的には二強

これでWebブラウザはSafariが使うWebkit、ChromeのChromium(Blink)、Firefoxという3つの大きな流れに集約されることになります。

ChromiumのレンダリングエンジンであるBlinkはWebkitからフォークしたものであり、SafariなどのWebkitブラウザとは兄弟のような関係です。こちらの記事には、フォークについて①技術的問題と②GoogleとAppleの喧嘩が原因と分析しています。

*webkit-devで見るBlinkのフォーク

Appleはちょっと付き合いづらい相手なのかも知れませんね。「みんな仲良く」というのがOSSの理想ですが、現実にはビジネスの論理で動いているわけで、こういった騒動はなかなか無くなりません。MicrosoftがWebkitではなくChromiumに移行したのは、こういった経緯も関係しているのかも知れません。

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