Open RANが5Gを民主化する
Open RANという言葉をご存じでしょうか?LANではなく、RANです。Radio Access Networkの略で、スマホなどのモバイル機器用の無線ネットワークのことだそうです。5Gへの移行が始まったことで注目度が上がりました。
この記事もそうですが、RANをRadio Access Networkと説明している記事は少ないのですね。それほど一般的な用語とも思えないのですが。。ちなみに私は何の略か知らなかったので、いくつか記事を検索して、やっとRANがRadio Access Networkの略であることを知りました。
Open RANはその名の通り、無線ネットワーク用の通信機器の技術仕様をオープンにしようとする動きです。元々携帯電話の基地局などで使われる通信機器を作れるメーカーは世界でも限られていましたが、5Gになってそれが2社に絞られてきたことが背景医にあるようです。記事によると、その2社とはファーウェイとエリクソンだそうで、この2社の寡占化を避けるため、その他のメーカーがアライアンスを組んで技術を相互に公開し、相互運用性を高めようという狙いがあるようです。公開技術がOpen RAN、それを推進するためのアライアンスがO-RAN Allianceです。
閉鎖的だった通信業界を揺るがすオープン化の波
これまで、電気通信に使われる機器というのは、かなり特殊な競争環境にありました。元々電話会社というのは国毎にひとつくらいしかなく、その電話会社にその国のベンダーがくっついて非常に閉鎖的な関係の中で開発が行われてきました。日本でも、日本電信電話公社に近い限られた国内メーカー(「電電ファミリー」というやつですね)が市場を寡占してきた歴史があります。電気通信を普及させていく過程では、通信の品質と安定性が何よりも重要だったでしょうから、仕方のない部分もあったとは思いますが、その後携帯ネットワークの時代になっても、コストよりも安定性とパフォーマンスを重視する傾向があったと聞きます。
それが、国内市場での競争の激化、携帯料金引き下げへの圧力、5G開発競争で海外メーカーに遅れをとったことなどから、オープン化によって一気に巻き返しを図ろうという意図が国産メーカーに生まれたようです。
また、冒頭の記事にあるように、5Gインフラを抑えているのが中国のファーウェイであることから、米国政府が危機感を持っているという、地政学的な要因も大きいとされています。
ローカル5Gでは低価格なインフラが必要とされる
そしてもうひとつの要因として、5Gになると基地局を運用する事業者の幅が一気に広がることが上げられます。5Gで新たにサポートされる「ローカル5G」です。
4Gまでの携帯ネットワークを運用するためには国からの免許が必要で、大手キャリア4社に限られます。5Gでも、広域をカバーする免許は同じです。しかし5Gでは、通信エリアを狭い範囲に限定した免許を取得することで、企業が自社工場内や敷地内に5Gネットワークを構築することができるのです。高速で通信範囲の広いLANというイメージでも良いかも知れません。いずれにせよ、4社だけでなく、多くの企業が5G用のインフラを必要とするようになるわけです。その場合、キャリア各社が要求するような品質やパフォーマンスは必要ありません。汎用のハードウェアを使って柔軟に、安価にネットワークを構築できるオプションがあった方が良いわけです。Open RANはその目的にもうってつけでしょう。
以前も書きましたが、大手キャリアの計画では日本全国でスマホ向けの5Gネットワークが完成するのは何年も先になる予定です。総務省などが当面考えているのはローカル5Gで、低コストなインフラによってローカル5Gの普及が促進されることは政府の意図にも沿っているのです。
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