金融庁のDXの位置づけがちょっと変わっている件
最近金融系のお客様からのご依頼でDXについて改めていろいろ調べているのですが、金融庁のサイトを見ていたら凄いものを見つけてしまいました。
金融デジタライゼーションに関する施策動向等の委託調査「革新的技術分野の推進に向けた施策および金融分野におけるRegTech/SupTechに関する調査報告書」の公表について
長い。。いえ、長いのはタイトルだけではありません。なんと617ページにおよぶ長大なレポートです。三菱総研の作ですが、いったいいくら払ったのやら。。
正直言って、中身はほとんど読んでいませんが、気になったのはタイトルにある「金融デジタライゼーション」という言葉です。今であれば「デジタルトランスフォーメーション」を使うのが良いだろうと思うのですが、なぜデジタライゼーションなのでしょう?
デジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーション
元Googleのスーパープログラマーである及川卓也さんの著書「ソフトウェア・ファースト」には、デジタルトランスフォーメーションを実現するための前段階として「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があると書かれています。デジタイゼーションは業務のデジタル化のことで、今まで紙とハンコで進めてきた業務をペーパーレス化する、というように、アナログなものをデジタル情報として扱えるようにすることを指します。そしてデジタライゼーションは、デジタイゼーションでデジタルに置き換えたデータを利用することで、さらにビジネスや業務全体を効率化することだそうです。
ということは、金融庁はデジタルトランスフォーメーションではなく、その一歩手前のデジタライゼーションで良いと思っている、ということでしょうか?ご存じの通り、経産省は「2025年の崖」で企業のDXを推進しなければならない、と言っています。金融はそんなことしなくて良いと言うことでしょうか?
デジタルトランスフォーメーションという言葉は入っている
その疑問を解決したいと思いましたが、何しろ目次だけで30ページ以上ある文書です。文書内検索してみると、「デジタルトランスフォーメーション」で14件ほど引っかかってきますので、DXをまるっきり無視しているわけでも無さそうです。RegTechとかSupTechとか、面白そうな話もありそうなんですが、もうちょっと読みやすい資料はないかな、と思って探してみました。
すると、令和元年6月の「金融モニタリングにおけるデジタライゼーションの取組状況」というpdfが見つかりました。以下に抜粋します。
なんと、金融庁の定義では、デジタライゼーションはDXの上位概念だったのですね。デジタイゼーションとデジタルトランスフォーメーションを合わせてデジタライゼーションと呼ぶ、ということのようです。なるほど、そういうことでしたか。
及川さんの定義とは違いますが、絶対的な決まりがあるわけでも無さそうですので、金融庁としてはこう定義する、ということなのでしょう。
DXの中に「ビジネスモデルの変革」が入っていますので、DX自体の理解は経産省と同じのようです。ただ、経産省はデジタイゼーションからDXへ早期に移行すべし、という立場なのに比べ、金融庁は既存の金融機関はデジタイゼーションで良いんじゃないの?という立場のようですね。結構現実的なアプローチとも言えます。
「規制は残る」という前提か
この文書のタイトルから察するに、金融庁は、DXよりもRegTechやSupTechのほうを進めていくつもりのようです。
RegTechは
規制(Regulation)× 技術(Technology)の造語であり、主にICTを活用して複雑化・高度化が進む金融規制に対応するテクノロジー
ということで、金融機関など、規制を受ける組織のための技術だそうです。もう一方のSupTechは規制する側(規制当局)のための技術ということです。
どうも、「規制を撤廃する」ということではなく、「規制はこれからも複雑化するから、規制する側もされる側も、それをうまく運用できるようにしましょう」ということのようですね。なんだか釈然としませんが、金融というのはそういうものなのでしょうか。
だとすると、DXと同列にデジタライゼーションを置いている理由もわかる気がします。金融機関のDXを追求しようとすると、規制が邪魔になる場面があるだろうことは想像に難くありません。そうではなく、規制とうまく共存していく方向でみんな頑張ってね、ということなのでしょうか。
「?」をそのままにしておかないために
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