情報通信白書令和2年版に見え隠れする5Gへの真の期待
8月初旬に「情報通信白書令和2年版」が公開されました。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/index.html
日付が「平成2年8月」としか書かれていないのですが、ケータイウォッチでは8月5日に報じていますので、公開されたのは8月4日あたりなのでしょう。
全文読むのはちょっと大変そうですので、「ポイント」と「概要」だけ目を通してみたのですが、ちょっと面白いことに気がつきました。
5Gへの本当の期待は産業分野での活用にある模様
今年の白書は5G一色といって良いくらいに5Gのことばかり書かれています。情報通信白書ですから、通信についての話が中心となるのは当然とも思えますが、例年は情報システムの話のほうが中心なのです。令和元年の白書はICTとDXの話でした。今年の白書の第1部のタイトルが「5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築」ということで、これは今年の白書全体の副題にもなっているようですが、第2部はもう「基本データと政策動向」になってしまいます。
「5Gといえばスマホか。今年サービスが始まったし、iPhoneも対応するみたいだしな。」と思う方も多いでしょうが、よく読んでみると、
我が国で本年から商用開始された 5G は、IoT 時代の基盤として、様々な分野・産業で実装されることによって、従来以上の大きな社会的インパクトをもたらすものと期待。
というように、どうもスマホ用途では無く、IoT分野での利用が期待されているようです。
一般的に報道されている5Gのイメージは、「高速・大容量」ということでしょう。これまで3G、4Gと世代を追う毎に高速化され、扱えるメディアがテキストから音声・画像、そして今では動画の視聴が何の苦も無くできるようになっています。そのような歴史があるため、5Gについても「2時間の映画を3秒でダウンロードできる」などという説明がされています。もちろんそれは(理論値とはいえ)正しいのですが、実は5Gの特徴は速度だけではありません。
5Gの3つの特徴
スマホでオンラインで映画を見る分には、今の4Gでも十分な速度と言うことができます。ダウンロードしたければWiFiのあるところで行えば良いことですし、それが数秒でできることに価値を見出す人は(コスト次第でしょうが)あまりいないのでは無いでしょうか。5Gには、「超高速」以外に2つの特徴があります。
それが、「超低遅延」と「多数同時接続」です。そして、その活用先としては、PDFにあるように、ロボットなどの遠隔操作やIoT機器の接続なのです。
情報通信白書令和2年版では、これら後者の活用方法ばかりに焦点があてられており、ざっと見る限り、スマホでの活用の話は出てきていないようです。つまり、総務相自身、5Gはスマホでは無く産業用途での活用を期待している、ということのなのでは無いでしょうか。以下の様な記述もあります。
IoT デバイス数は、IoT・AI の普及や 5G の商用開始等に伴い、特に産業用途やコンシューマ向けで大きく増加するものと予測(①)。他方、移動体通信サービスの契約数については、飽和状態に近づきつつあり、緩やかに成長していくものと予測される。
未完の5G、そしてローカル5Gへの期待
そして、第2章で言及しているのが「ローカル5G」です。
携帯電話事業者による全国向けサービスとは別に、地域や産業の個別のニーズに応じて、様々な主体が柔軟に利用可能な移動通信システムとして、ローカル 5G を創設。本年からローカル 5G 等を活用した課題解決モデルを構築するための開発実証を推進。
これは、docomoやau、SoftBankなどのキャリアが提供するネットワークではなく、工場内や敷地内を対象にしたネットワークを特別な免許の元でキャリア以外の企業が構築できるというものです。WiFiの強化版というイメージでしょうか。
しかし、WiFiよりもカバー範囲が広かったり、同時に多数を接続できるなどのメリットがあります。これを活用することで、向上のIoT化を一気に加速させることが期待されているのです。
そしてもうひとつ重要なことは、以下の記事にもあるように、キャリア各社はまだ5Gの「フル」サービスを提供してはいないということです。
現状ではカバーできるエリアが絶望的に狭い、ということももちろんあるのですが、それ以前に今は4Gのネットワークに5Gを「接ぎ木」しているような状態であり、これが「完全な5G」に移行できるまでにはまだ数年かかる、ということなのです。総務省が今の時点では産業用を推しているのは、そこにも理由があるのかも知れません。
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