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クラウドファーストからクラウドセントリックへ

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先週、こんな記事がTechTargetに載っていました。

クラウドファーストの終焉――クラウドへの集約とエッジへの分散

サブタイトルには

エッジコンピューティングはIT業界で最も重要なトレンドの一つであり、クラウドに取って代わるかもしれないという見方もある。

とあります。「終焉」というのが刺激的なので思わず読んでしまいましたが、内容は至極真っ当で、クラウドが無くなるわけでは無く、クラウドとエッジは共存する、ということでした。

クラウドとエッジコンピューティングはそれぞれ違うニーズに対応しており、両者は共存する。調査会社IDCによると、この2つのアプローチは相互を補完するものであり、「スマートかつインテリジェントな方法で」相互に作用する。

ただ、「クラウドファーストの終焉」という部分には賛成です。クラウドファーストは「オンプレではなく、最初にクラウドの活用を考える」という意味で、言ってみればクラウドを特別視した考え方でしたが、今やクラウドを使うことはあたりまえです。今はクラウドセントリックに全体最適を考えて、オンプレもエッジもそれに含まれるという発想に転換すべきなのではないでしょうか。

tori_saeduri_sing_line.pngクラウドが不要になるわけではない

リソースの集約によってコストメリットやアジリティを高めたクラウドですが、すべての用途に使えるわけではないことが明らかになり、一部分散化への動きが出ています。ローカルで処理した方が良いもの、処理できるものをローカルで、という動き。それがエッジコンピューティングです。5Gサービスが始まり、IoTが急速に進化することが見込まれることから、エッジコンピューティングへの移行も早まっています。

しかし、それでタイトルにあるような「終焉」が来るわけではありません。クラウドが終るのでも、クラウドの重要性が失われるのでもなく、クラウドがあることを前提にすべてが再構築される時代に入ったのだということでしょう。

「集約ー分散ー集約」からまた分散へ

そもそもコンピュータシステムの歴史自体、集約と分散を繰り返してきました。初期のコンピュータは巨大なシステムで、今で言う汎用大型機です。これを複数の処理を順番に行うバッチ処理で使っていましたが、その後タイムシェアリングシステムとなり、多くの人が同時に1台のコンピュータに接続して使う形態になりました。処理機能や記憶装置は中央に集約されていたのです。

その後、ダウンサイジングの波が起こり、小さいコンピュータを業務毎、部門毎に使う分散システムの時代になります。その究極が個々のユーザーがコンピュータを持つPCです。分散型コンピューティングです。

しかし、社内に小さなシステムが乱立すると、面倒を見るのが大変になります。OSやアンチウイルスのアップデート、セキュリティパッチの適用などの対象が爆発的に増えたのです。いろいろ管理ツールも出てきましたが、大変なことに変わりはありません。

そこで出てきたクラウドは、再度リソースを(企業を超えて)集約するという動きだったということができます。サーバーを一ヵ所に集約して集中管理することで管理効率を上げ、エンドユーザーの負担を軽減できます。最近のコンテナ化、サーバーレスなどへの取組みは、ユーザー企業の管理負荷をさらに下げようという取組みです。クライアント側も、当初クラウドが目指していたのはWebブラウザですべてを完結できるようにすることで、そうすればクライアント側の管理も簡素化されます。残念ながらこれはまだ達成されていませんが、HTML5はそのためのアプローチです。

しかしクラウドも万能ではありません。その弱点を再度分散化で補うべく考え出されたのがエッジコンピューティングです。しかし、これは集約から分散への逆戻りではありません。

クラウドを前提とした新しい形態へのトランスフォーム

ここで重要なのは、この集約ー分散ー集約ー分散を繰り返してきた中で、大型汎用機が無くなったわけでも、クライアントサーバーが無くなったわけでも無い事です。

オンプレのシステムが無くなったわけでは無く、ハイブリッドクラウドと言う形で残っているわけです。しかも、クラウドと同じ技術を使って再構築することでクラウドとの互換性が高まり、相互運用性が高められています。これまでは「オンプレのシステムのうちどれをクラウドに移行させるか」ということがユーザー企業の視点でしたが、これからはクラウド前提で全体のシステムを考え、「どのシステムをオンプレで動かすのが最適か」を考える時代になったということでしょう。エッジやIoTも、その大きな絵の中の一部になるのです。

 

「?」をそのままにしておかないために

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