オルタナティブ・ブログ > Mostly Harmless >

IT技術についてのトレンドや、ベンダーの戦略についての考察などを書いていきます。

日本はオンプレのライフサイクルでも欧米に負けていた

»

クラウドサービスが出てきた頃、そのメリットを説明するために、電気や水道が引き合いに出されました。かつて送電網が発達していない頃、各企業や工場は自家発電設備を持っていました。それが、発電所にリソースを集約することで設備コストや管理コストの削減ができる、という説明です。ユーザーは使った分だけ支払えば良い、というわけですね。いうまでもなく、自家発電がオンプレ、発電所がクラウドです。

このアナロジーに従うと、やがてオンプレはなくなり、すべてがクラウドに移行する、というイメージになります。しかし実際にはそれは起こらず、2020年の現代ではハイブリッドという形態が一般化しています。オンプレ・クラウドのどちらにもメリット・デメリットがあり、組み合わせることで互いに補完できるということですね。さらに今後はマルチクラウドへの方向性も見えてきており、さらなる組合わせの多様化に進みそうです。

hysteric_karyoku.pngしかし、クラウドには毎日のように新技術が導入され、コストもどんどん低下していきます。対してオンプレミスは、毎日入れ替えるわけにはいかず、一旦導入すれば一定期間使い続けなければなりません。日本では、オンプレミスシステムの更新サイクルはほとんどの場合5年と言われています。

しかし、5年間同じシステムを使うということは、5年間技術的な進歩が無くなるということであり、現代においては致命的な結果に繋がりかねません。それにいくらハイブリッドといえ、クラウドとオンプレの更新速度がここまで違うと、システム間の整合性を保つのも大変でしょう。だからこそ、ハイブリッドクラウドはオンプレ側にもクラウドと同じソフトウェア環境を構築し、双方のレベルを合わせる必要があるのです。しかし、それでもハードウェアの更新が5年毎では、いろいろと問題も出てくるのではないでしょうか。

と思ったら、やはり、こんな記事が見つかりました。

「欧米の顧客は2年で乗り換え」 IBMがzの新機種を出し続ける訳

会員限定の記事で申し訳ありませんが、タイトルだけでも十分わかります。欧米のメインフレームの顧客は2年毎にシステムを刷新しているということなのです。「関連ソフトや保守を含めた価格性能比が良くなるからだ」ということです。

クラウドはシステムの更新はベンダー側が行うため、ユーザーは常に最新のハードウェア・ソフトウェアを利用できます。欧米でもすべてをクラウドに移行させているわけでは無くて、オンプレミスと連携させるハイブリッドクラウドが一般的ということですが、(だからこそIBMはハイブリッドに賭けているわけです)オンプレ側の新陳代謝も日本とは比べものにならかなったのですね。

日本のシステム更新が何故5年毎なのかと言えば、税制が関係しているのでしょう。

IT機器の耐用年数は何年? PC、サーバ、ネットワーク機器の使用年数の考え方、計画、設計虎の巻

これによると、PCの償却期間は4年、サーバーは5年となっています。これに揃えているのはほぼ間違い無いのではないでしょうか。

しかし、ほとんどの法律がそうですが、この年数は別に競合関係や技術革新の速度を反映しているわけではありません。処理能力という点から見れば、最近は速度の向上も落ち着いてきたので、PCは4-5年使えるものもあるでしょうし、サーバーも、ハードウェアの能力としてはそれほど陳腐化はしないでしょう。しかし、たとえばセキュリティについて新しいハードウェアが必要になったり、逆に要らなくなったりした場合、

GoogleはVPNを使わない ~変るセキュリティの常識に日本企業はついて行っているか?

「VPN買ったばっかりだから、もう少し使おうか」という発想になると、ゼロトラストへの移行に遅れてしまうなど、デメリットが出てきます。

そして、今まさに求められているのが、迅速かつ抜本的な改革=「DX」なのです。「ウチのシステムは去年更新したばかりだから、次は4年後だね」というわけにはいかない、というのが経産省の「2025年の崖」の趣旨だったのではないでしょうか。

しかし、既に書いたように、オンプレで毎日のように構成をアップグレードするわけにもいきません。その中でのギリギリ現実的な解として、欧米では2年という期間が選ばれたのではないでしょうか。ちなみにアメリカでも、コンピュータの減価償却は5年のようですので、日本と会計上の取扱いは変わりません。それでも2年で入れ替えるということは、それだけのメリット(≑必要性)がある、ということなのでしょう。

日本から見れば、2年でも十分短いですが、コンピュータシステムが戦略的投資と見なされる欧米では、受け入れられる(受け入れざるを得ない)のでしょう。日本のDXは、こんな処からも見直していかなければならないのかも知れません。

 

「?」をそのままにしておかないために

figure_question.png時代の変化は速く、特にITの分野での技術革新、環境変化は激しく、時代のトレンドに取り残されることは企業にとって大きなリスクとなります。しかし、一歩引いて様々な技術革新を見ていくと、「まったく未知の技術」など、そうそうありません。ほとんどの技術は過去の技術の延長線上にあり、異分野の技術と組み合わせることで新しい技術となっていることが多いのです。

アプライド・マーケティングでは、ITの技術トレンドを技術間の関係性と歴史の視点から俯瞰し、技術の本質を理解し、これからのトレンドを予測するためのセミナーや勉強会を開催しています。是非、お気軽にお問い合わせ下さい。

「講演依頼.com」の「2018年上半期 講演依頼ランキング」で、3位にランクされました!

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する