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ビジネス速度を2倍に上げる ~トヨタが挑むDXの壁

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トヨタですら、というべきか、トヨタだからこそ、というべきか。(もちろん、後者ですけど)

スピード2倍、40歳代で経営陣に 好調時にリストラするトヨタの狙い

トヨタが、人事制度の大幅な刷新を含む改革案を発表しました。それによると、

1982年にトヨタ自動車工業とトヨタ自動車販売が合併して以来、38年間続いていた「副社長」のポストを廃止し、従来の執行役員と同格にした新たな「執行役員」に一本化する

組織のフラット化を進め、経営速度を上げようという施策だろうということです。

新しい組織体制であれば、課長が持つ情報はわずか3階層で社長に伝達できる。これに対して従来は、課長から6階層を経なければ情報が社長まで伝わらなかった。

記事中で愛知工業大学の藤村教授(トヨタ自動車出身)は、これによって経営スピードを「最低でも2倍」にしないと駄目だ、といっています。現在開発部門では開発速度を1/2に短縮する目標を掲げる製品があり、その速さに対応するためには、社内のスピードを2倍にしなければならない、ということです。

car_sky_flying.pngこれこそがデジタルトランスフォーメーションだ

記事にもあるように、トヨタは日本の自動車業界で「一人勝ち」の状態であり、業績が悪いわけではありません。それどころか、2019年はレクサスが過去最高の新車販売台数を記録するなど、絶好調です。にもかかわらず、組織改革を断行し、その発表の直後の3月11日には今年の春闘では経営側としてベアゼロを回答し、それで決着しました。

この記事の中で、
一律ベアに象徴される日本型雇用では、社員の能力とやる気を引き出せなくなっているという危機感がトヨタの決断の背景にある
と解説されています。ベアゼロ回答もまた、組織改革の一環なのです。

新型コロナウイルスの影響が不透明なせいもありますが、自動車業界は始まって以来の変革期を迎えようとしています。自動運転車の実用化、電気自動車へのシフト、物販からサービスへの移行(Mobility as a Service)などです。業界最大手のトヨタならばこそ、危機感が半端ではないということでしょう。

そして、経営スピードの高速化、サービスビジネスへの移行、人事制度の改革などは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の構成要素です。記事ではDXという言葉は使われていませんが、トヨタが目指しているものは、DXに他ならないと言って良いのではないでしょうか。

章男社長の年頭挨拶

豊田 章男社長は、社員へ向けた今年の年頭挨拶で人事制度改革について触れていました。今回はその第一弾ということでしょう。
この動画の30:30あたりで、人事評価制度の見直しについて触れています。
しかしこの動画で圧巻なのは、37分以降です。章男社長は今が「トヨタが、社員が変わるラストチャンス」と、率直な危機感を表明しています。しかし一方で、社員に「私の言葉が伝わっているとは思えない」と、心情を吐露しています。
これだけうまくいっていると思われている企業の社長が、自らの言葉が「伝わらない」と言っているのです。企業を変えることの難しさ、DXを遂行することの難しさはどれほどのものなのでしょう。
章男社長が人事制度改革に踏み切るのは、「言っても伝わらないのなら、制度を変える」ということなのではないでしょうか。行動を変えなければ給与や評価に影響するとなれば、人間は動くものです。最終的に人を変えるのは(トヨタですらも)制度なのだ、ということなのかも知れません。激しい環境変化に晒される自動車業界とはいえ、大きな改革に舵を切ったトヨタは、さすがと言うべきでしょう。

 

「?」をそのままにしておかないために

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