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「サブスク」に見るDXの必然性

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「サブスク」という言葉が流行っています。一般には動画配信サービスや音楽配信などを指し、「月額課金」「定額制」といった意味に使われているようです。しかし、IT業界においては少しニュアンスが違うようで、さらにそこにはデジタルトランスフォーメーション(DX)が深く関わってきます。

IT業界におけるサブスクについて、こんな記事を見つけました。

「クレイジー」だったビジネスモデルが、たった数年で世界を変えた

この中に、

従来のように「製品を売れば終わり」というビジネスではなく、常にオプションの追加やサービスの変更に対応しなければいけなくなるためだ。

「いったん契約したら、後は何もしなくても解約されるまで毎月定額が企業に"チャリンチャリン"と落とされる」というイメージでいると成功しない。それをサブスクビジネスと呼ぶのは全くの間違いだ。

という下りがあります。顧客はサブスク化によって、常に新しい機能を(毎月の支払い以外の)追加コスト無しで受けることができ、それがサブスクの大きなメリットになるということです。逆に言えば、企業側は常に機能を追加・改善し続けなければならず、これまでよりも仕事は厳しくなるということかも知れません。

そして、そのような「継続して新しいサービスを提供・改善し続ける」ために「ビジネススピードを極限にまで上げる」こと、それを実現できる組織を作ること(作り替えること)がDXということになるのではないでしょうか。

douga_haishin_youtuber.pngサブスクの成功例としてのAdobe

現代的な意味でのソフトウェアのサブスクリプションの成功例として挙げられるのが、2011年にパッケージからサブスクへ舵を切ったAdobeでしょう。2013年にはパッケージ販売を完全にやめてしまい、クラウドに一本化しました。

米アドビ、ソフト販売「中止」の先にある野望

この中で、サブスクへの移行に際して

サブスクリプション型への移行が収益に与える影響を尋ねると、「短期的にはマイナス」と明かした。中期的にも利用者1人当たりの収益は減るとの見方が有力

と予想しています。しかし、大きな狙いとして

導入にかかる初期費用を下げることで、「学生や1人の社員が複数の業務をこなす中小企業へも販売対象を広げられる」

とも言っています。もちろん、

「従来は新機能を開発しても、次の改良版発売に合わせて提供するしかなかった。クラウドならすぐに提供できる」

と、継続的な改善による顧客価値の増大というメリットも忘れていません。その結果どうなったかというと、

売り上げ1兆円突破、アドビがサブスク化に成功した理由。幹部が語った「データ重視経営」の核心

売り上げは2015年度の48億ドル弱から、2018年には90億ドル以上になったということです。さらにユーザー数も数百万人から数千万人へ、「桁が一つ上がった」ということですから、サブスク化は大成功だったということでしょう。

サブスク化はDXとワンセット

この記事の中でAdobeは

仮に新機能を開発して、ユーザーにいち早く提供したいと思っていても、そのサイクルに合わせてリリースする必要があった。当時はこのタイミングで良かったのですが、今はイノベーションのスピードが加速しており、それでは十分ではありません

と言っており、ビジネススピードの加速に追いつくための施策がサブスク化だったと明かしています。しかしそれでも

サブスクリプション型へ移行すると決めた当時には、ユーザー(顧客)に加え、従業員からも多くの反対にあった

ということです。しかし、ユーザー数が大幅に増えたことでその反対も無くなったのだとか。まあ、売り上げが増えたのですから、文句は無いはずです。

そして、サブスク化によってそれまでのKPIであった「売り上げ」と「アップグレード率」が使えなくなり、ユーザー満足度のような多様なKPIに移行したとのこと。ビジネスプロセス、組織、KPIがサブスク化に最適化されたのです。これこそまさにDXということでしょう。サブスク化とDXという両輪がうまく組み合わさったことがAdobeの成功に繋がったと考えて良さそうです。

客単価を下げて、裾野を広げる

Adobeはパッケージ価格がものすごく高いことで有名で、全部入りのパッケージは30万円、アップグレードでも15万円くらいしていたと思います。それが、月額5,000円(年間6万円)で使い放題ですから、断然お得(いや、高いですよ。それでも)に感じたわけです。今は少し上がって月額5,680円になっています。

当時の記事がありました。

アドビ、「Creative Suite 6」日本語版を発表

全部入りの価格は334,950円、アップグレードが135,450円です。このころはアップグレードは2年に一回でしたから、1年分で7万円弱。そうすると、今の年間使用料とあまり変わりません。しかし初期費用まで考えると、だいぶ安いですね。ユーザーとして考えると、一度に30万円のソフトを買うのはなかなか勇気が要ります。(というか、あきらめるでしょうね)それに、2年に一度14万円というのも心理的に抵抗が強い。それよりは毎月5千円のほうが負担感は少ないでしょう。ローン効果とでもいうのでしょうか。

ユーザー数が1桁増えて、売り上げが2倍ということは、客単価はずいぶん下がったということではないかと思いますが、ビジネス的にはそれはそれで良いのでしょうね。ソフトはいくらでもコピーできますし、クラウドならそのためのコストも知れています。

 

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