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成熟しつつあるクラウド市場 AWSとAzureの闘いは営業力勝負へ

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少し前の記事ですが、米ZDNet編集長のコラムが目を惹きました。

AWSとマイクロソフト、最新決算に見るクラウド競争の今

この中でLarry氏は、「AWSは、営業担当者の増強に力を入れている」と書き、以下の様に締めくくっています。

つまり、AzureとAWSの戦いによって、クラウド市場は営業力が鍵になるほど成熟してきたということだ。

これは、クラウド市場における重大な局面と言えるのかも知れません。

computer_cloud_system.pngさらに氏は

Google(「Google Cloud Platform」)は積極的な雇用を展開している。Azureは既にMicrosoftの営業チームやエンタープライズ分野での影響力によって有利な立場にある。また、その他のクラウドプロバイダーも営業チームの再編を行うだろう。

とも続けています。クラウドはこれまで、最新のOSSなどを積極的に取り入れ、サービスを拡充してきました。AWSはその急先鋒で、少しでも話題になったOSSがあれば数ヶ月でサービス化することで、他を引き離してきたのです。しかし、AzureやGCPの追い上げで、今や品揃えに大きな差は無く、新サービス投入の時間も大差はありません。

また、MicrosoftにはWindowsやOfficeがあり、Googleも自社開発のOSSが多数ありますが、Amazonが純粋に自身で開発しているテクノロジーはあまり多くないことも、AWSとして差別化が難しくなってきた原因かも知れません。

営業力勝負ならMicrosoftが有利か

AWSが始まった頃は、最先端のテクノロジーが迅速に提供されるという特徴のもと、先進的なエンジニアが自分のクレジットカードを登録していろいろ試してみる、という使い方には最適でした。しかし、どちらかというと「いろいろ用意したから勝手に遊んでみてね」という感じが強く、直接顧客にサービスを売り込む「営業活動」というものを積極的に行ってこなかった印象があります。手取り足取り、という従来型のコンピュータ営業にはほど遠い感じです。まあ、それこそがクラウドの要件のひとつである「セルフサービス」を体現していたとも言えるのですが。もちろんAWSも、近年ではパートナーを増やしたり、ユーザー会を組織したりといった施策は行ってきていますが、そういったことはオンプレミス企業の方が経験も実績もあるわけですから、そこが苦しいところです。

いわばアーリーアダプターを相手にユーザーを増やしてきたのがAWSだったということではないでしょうか。しかし、クラウドサービスの裾野の拡大によってユーザーがアーリーアダプターからアーリーマジョリティ、レイトマジョリティへと拡大してくると、「営業力」や「サポート体制」といった従来型のビジネスが有利になってきます。日本などは市場のほとんどがレイトマジョリティからラガードと考えられますから、この傾向はさらに顕著でしょう。

こうなると強いのが、旧来の営業手法において数十年の実績を持つIBM、Microsoft、Oracleなどということになります。しかし残念ながら、Microsoft以外はクラウド事業自身がちょっと伸び悩んでいる感じです。

AWSは独走、追い上げるマイクロソフト--それぞれの強み

でも、AWSの成長率の鈍化とAzureの追い上げについて書かれています。クラウドサービスは標準化が進み、マルチクラウドの時代になっています。本来であれば、ベンダーのしがらみに囚われずに自由にシステムを構築できるはずですが、サービスがあまりに複雑化してしまい、ユーザー自身でコントロールできていない、ということです。そうなると、誰かの助けが必要です。クラウドベンダーとユーザーの間に立って最適なシステムを構築する、チャネルパートナーであったり、クラウドインテグレーターであったり、日本ならSIerでしょうか。そして、Microsoftはこういったベンダーとの連携において長い歴史があります。

効率化や最適化が重要になってきた

先週はAWSのre:Inventがあって、今年も多数の新サービスが発表されました。

[速報] AWS re:Invent 2019 Keynote で発表された新サービスまとめ

ただやはり、差別化が難しくなっているなあ、という感じはします。AIはGoogleもMicrosoftもやっています。開発環境系はMicrosoftのほうが強いでしょうし、コンテナは基礎技術をGoogleが持っています。データベース系はどこも似たような感じです。Outpostは面白いですが、オンプレ/ハイブリッドという構図ではMicrosoftにはかないません。

やはりAWSが他より強いとすれば、インフラ系になるのかもしれません。この中で、AWSが自社開発したArmベースのプロセッサ「Graviton2」を使った新しいインスタンスが発表されました。旧インスタンスに比べ、24-53%の性能向上を実現したと言うことです。

新技術を華々しく導入するのに比べ、数十%の向上はなかなか地味ですが、プロセッサの自社開発によって効率を上げて差別化を図るという方向性は良いと思います。クラウドのシェア争いは、地味な、ある意味(外野にとっては)面白く無い段階に差し掛かっているのでしょう。

 

「?」をそのままにしておかないために

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