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ビジネス Linux の20年

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Red Hatネタが続きますが、先々週、Facebookのタイムラインにこんな記事が流れてきました。日本のレッドハットが誕生して、この9月で20年なのだそうです。

五橋研究所、米Red Hatと決裂――Red Hatは独自に日本法人を設立へ

私がレッドハットに在籍していたのは2006-7年で、この頃のことは知らないのですが、この「1999年」というのは特別な年だったために、何か因縁を感じました。

group_business_syukatsu.pngIBM、OracleがLinuxにコミットしたのが1999年

何故特別かというと、1999年1月にOracleが、3月にIBMがLinuxをサポートすることを発表したからです。これによって、Linux(そしてOSS)をビジネスでも使おうという動きが一気に加速しました。

日本オラクル、Linux版『Oracle8』の国内展開を発表

IBM Launches Biggest Linux Lineup Ever

IBMはリリースの冒頭で「Linuxのメジャーバージョンをグローバルにサポートし、すべてのテクニカルサポートニーズについて顧客に単一の窓口を提供する。」と書いており、

The announcement, of planned key alliances, flagship products, and the industry's most comprehensive service offering, makes IBM the only company to provide complete solutions of hardware, software and technical support for Linux.

主要ディストリビュータとの提携、主力製品、業界で最も包括的なサービスの発表により、IBMはLinuxのハードウェア、ソフトウェア、技術サポートの完全なソリューションを提供する唯一の会社になります。

と続きます。

1991年に生まれたLinuxは当時既に一定の評価を得ていました(少なくともOracleを動かせる程度には堅固で安定している)が、一般にはまだ「学生が趣味で作っているOS」とか、「オタクの玩具」のような目で見られていた部分もありました。しかし、それに既存の大企業、特にIBMがコミットしたことで、Linuxを取り巻く環境は一変したといえるでしょう。Linuxに興味はあるが、サポート等への不安からビジネスでの利用を躊躇していた企業が「IBMがサポートするのなら、大丈夫だろう」と思ったことで、流れが変わったのです。

このとき、IBMはメジャーなLinuxディストリビュータ4社と提携を結んでいます。それがCaldera、Pacific HiTech(後のTurbo Linux)、Red Hat、SuSEでした。この4社とともに、開発及び顧客サポートを行うと発表したのです。

「企業向けLinux」の誕生

このときに、IBMは4社に対し「ビジネス向けLinux」への取り組みを依頼したと考えられます。企業が業務システムに使うためのソフトウェアとしては、なんといっても安定した品質、ドキュメントなどの整備、そしてバグフィックスやセキュリティパッチなどの長期にわたるサポートが重要だったからです。

SuSEはビジネス向けLinuxとして、2000年にIBM S/390用のSuSE Linux Enterprise Server (SLES)をリリースしました。Wikipediaによると最初のバージョンは「first」となっていますが、翌年に出たバージョンがいきなり「7」になっており、黎明期の混乱を伺わせます。その次の「8」が2002年にリリースされますが、このときの標準サポート期間が2007年まで、LTSS(Long Term Service Pack Support)が2009年までとなっており、最長7年間のサポートが約束されていたことがわかります。これ以前のLinuxディストリビューションは「No Support」が基本でしたから、これによって企業はLinuxを採用しやすくなったのです。

一方のRed Hatも、2002年にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)2.1をリリースし(これも何故かいきなり2.1からですね)、2009年までのサポートを約束しています。(現在はSLESで13年、RHELは10年のサポートとなっているようです)

1999年はLinuxとディストリビュータにとっての節目となった

さらに想像を膨らませると、IBMのコミットメントによりLinuxのビジネス利用の可能性が広がったために、Red Hatは日本法人の設立を急いだのかも知れません。当時世界的にも重要なマーケットであった日本は、Linuxを広げていく上で重要だったと考えられ、そのため日本での拠点の強化(=日本法人の設立)が早急に必要になったと考えるのは、それほど無理なことでも無いと思います。

ASCIIの後追い記事を読むと、その辺の経緯も書いてありますが、Red Hat側の対応にも混乱が見られたようです。

私はちょうどこの頃、別の会社でアメリカ製ソフトウェアの代理店業務を行っていましたが、似たような目に遭いました。当時(Windows95が出た直後)は、アメリカのソフトウェアを日本語化して販売するビジネスが急拡大していました。しかし、ある程度普及してくると、米国本社はそれまでの日本の代理店との契約を終了させて日本法人を設立する(そのほうが儲かるし、サポートも充実できる)ということが普通でした。苦労して国内のマーケットを育ててきた代理店との契約を一方的に打ち切るのですから、あちこちで恨みを買ったでしょう。アメリカとのビジネスは厳しいなあ、と思った記憶があります。

五橋とRed Hatの間の交渉が私の経験に類するものなのかどうかはわかりませんが、急速な市場からのデマンドの盛り上がりとアメリカ側の思惑が複雑に絡む中で、五橋にとっては残念な結果になってしまったということなのかも知れません。

 

「?」をそのままにしておかないために

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