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データベースの75%がクラウドに移行 ~その内訳は?

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あらゆるものがクラウドに移行しつつある昨今ですが、ITソリューション塾に来られるSIerの皆さんとお話していると、業務・基幹系システム、特にミッションクリティカルなRDBMSについては、相変わらずオンプレミス指向が強いという話はよく聞きます。それはやはり、移行リスクやセキュリティ、そしてパフォーマンス(レイテンシ)への不安が大きいようです。そのような中、ガートナーがデータベースもクラウドに移行するとの予測を発表しました。

全データベースの75%が、2022年までにクラウドにデプロイあるいは移行される。米ガートナーが予測

2022年と言えばいまから3年後、思った以上に早く移行は進んでいるようです。経産省がいう2025年の崖より全然早いじゃないですか。オンプレからの移行が進んでいないのは日本だけの話なんでしょうか。

computer_big_data.pngちょっと待て。よく読んでみよう

しかし原文をよく読んでみると、若干印象が異なります。

Gartner Says the Future of the Database Market Is the Cloud

この冒頭に、

This trend will largely be due to databases used for analytics, and the SaaS model.
このトレンドは主に、データベースがアナリティクスやSaaSモデルとして使われることによる。

SaaSは良いですが、「アナリティクス」と言っていますね。また、上のPublickeyの記事にも引用されていますが、こうも言っています。

According to inquiries with Gartner clients, organizations are developing and deploying new applications in the cloud and moving existing assets at an increasing rate, and we believe this will continue to increase,
ガートナーのクライアント調査によると、多くの組織が新しいアプリケーションをクラウド向けに開発しデプロイしており、既存の資産をクラウドへ移行する傾向も高まっている。そしてこれが増加していくことは間違いないだろう(Publickeyの訳を拝借しました)

「新しいアプリケーション」が先に書いてありますね。しかも「既存の資産」が何なのかは書いていません。しかもこの後に、

We also believe this begins with systems for data management solutions for analytics (DMSA) use cases - such as data warehousing, data lakes and other use cases where data is used for analytics, artificial intelligence (AI) and machine learning (ML).
私たちはこれがアナリティクスのためのデータマネジメントソリューション(DSMA)ユースケース-データがアナリティクスのために使われるデータウェアハウス、データレイクなどのユースケース、人工知能(AI)および機械学習(ML)から始まるとも考えています。

と続きます。

長々引用しましたが、要するに、よく読んでみると、オンプレミスのミッションクリティカルなデータベースシステムがクラウドに移行していると明確に書いてあるわけでは無く、今クラウドにデプロイまたは移行しているというのは、ほとんどが解析やAIなどのいわゆる「情報系」のデータベースなのではないか、ということです。こうも言っています。

While there is some growth in on-premises systems, this growth is rarely from new on-premises deployments; it is generally due to price increases and forced upgrades undertaken to avoid risk.
オンプレミスのシステムにも成長は見られるが、これは新規のデプロイメントによるものでは無く;一般的には価格の高騰とリスク回避のための強制的なアップグレードによるものです。

「価格の高騰」は、Oracleの値上げを指しているのではないでしょうか。「リスク回避のための強制的なアップグレード」は、クラウドへの移行リスクを嫌ってオンプレミスでアップグレードすることを意味していると考えられます。値上げによって若干の成長と言うことは、ベースは増えてはいないのでしょうが、大きく減ってもいないということではないでしょうか。基幹システムのクラウド移行が進んでいないことを示唆しているようにも思えます。

ビッグデータの時代になって、データ利用への需要は爆発的に増加しており、それはほとんどが情報系・解析系の用途でしょう。今後情報系のデータベースが増えていけば、全体の75%が情報系になっても不思議ではありません。要するにガートナーの記事は、情報系のほとんどと基幹系の一部がクラウドに移行する、といっているのではないでしょうか。まあ、明確にそうとも書いていないので、もやもやしたままなのですが。

ミッションクリティカルなデータベースはこれからもオンプレに残る?

NoSQLが出てきて、それまでのRDBMS一辺倒だったデータベース界に新風が吹き込みました。今では、様々なデータベースシステムを適材適所で使うのが一般的になっています。RDBMSはデータの整合性を一番に考える場合に適切な選択肢で、NoSQLは整合性よりもパフォーマンスを重視する場合に最適とされます。AIやML、あるいはデータウェアハウスやデータレイクを使ったBIなどではカラム型やNoSQLでも対応できますが、銀行の勘定系や、いわゆるミッションクリティカルと呼ばれる、確実なデータの整合性が求められる分野ではRDBMSでなければならないとされています。そして、そういった用途での最大の課題は安定稼働であり、移行リスクなどという、すぐにとらなくても良いリスクはとりたくないというのが本音でしょう。特に日本では、大事なデータを社外に置くことを心配する経営幹部も多いとされていますし、クラウド移行のリスクに見合うメリットを見出しづらいということが大きいと思います。

オラクルとSTSの対談から見えた、失敗しないクラウドパートナーの選び方-Oracle Database、Oracle Cloudの高い技術力と実績がカギ

現在稼働中のシステムはなるべくそのままで運用したいという気持ちはわかります。しかし、データベースの維持費用は今後も上がっていくことが確実ですし、それにどこまで堪えられるのかをそろそろ考え始めないといけません。

その際大事なのは、オンプレのシステムをそのままの構成でクラウドに持って行くのではなく、アーキテクチャレベルで再設計し、クラウドネイティブなシステムに再構築することです。ハードルは高いですが、DXを実現するためには必要なことでしょう。

 

「?」をそのままにしておかないために

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