2019年はブロックチェーンの年になるのか
ブロックチェーンについては、このブログでも2016年頃から取り上げてきました。当初は金融業界を破滅させるとまで言われ、私も「世の中に存在する仲介業務を無くしてしまうかもしれない」と書いたブロックチェーンですが、ブロックチェーンを産み出したビットコインなどの暗号通貨が投機の対象になって相場が乱高下し、取引所がハッキングされ、運営側の仲違いが起こり、挙げ句の果てに大暴落したために、暗号通貨もろとも「高リスク」「役立たず」「期待外れ」の烙印を押されてしまいました。
しかし、ブログにも書きましたが、ブロックチェーンと暗号通貨は切り離して考えるべきなのです。暗号通貨が崩壊しようとも(私自身は、元に戻っただけで崩壊したわけではないという認識ですが)、ブロックチェーンの可能性とは別の問題です。
毀誉褒貶が激しい技術でしたが、日経コンピュータの最新号でも2020年の本命技術(2019年ではなく)として取り上げられており、ようやく実用化の段階に入りそうです。実装面での工夫の余地はまだあるでしょうが、今年はいろいろなソリューションが出てきて、実用化が一気に進むのではないでしょうか。MITテクノロジーレビューも、年頭にこんな記事を出しています。
金融システムの大革命になると思われたブロックチェーンは2018年、暗号通貨市場の歴史的崩壊によって期待外れに終わったように見えた。だがテクノロジーとしてのブロックチェーンは健在であり、2019年にはごく当たり前のテクノロジーになるだろう。
私も全く同意見です。ただ、ブロックチェーンという言葉には悪いイメージがついてしまったので、あえてそう呼ばないとか、違う呼び方になっていくのかもしれません。
こちらのForbesの記事は若干辛口ですが、ブロックチェーンにはポテンシャルがあるという認識は同じです。ただ、「なんでもかんでもブロックチェーン」というのはおかしいとも書いています。この中で、NISTによる「役に立つブロックチェーン」の条件が面白いです。詳しくは本文を読んでいただきたいのですが、項目だけ上げると以下の様になります。
- 一貫し、共有されたデータストア(データを保存するソフトウェア)が必要か?
- 二つ以上の実体がデータを提供する必要があるか?
- 一度書き込まれたデータ記録は、決して更新も削除もされないか?
- 機密の識別子がデータストアに書き込まれることはないか?
- 書き込みアクセス権のある実体が、データストアを誰がコントロールすべきか決めるのは難しいか?
- データストアへのすべての書き込みの、改ざん防止されたログが欲しいか?
まずはお金の関係しないところ、あるいは管理型
では、とりあえずはどのような用途が考えられるのでしょうか? MITテクノロジーレビューの記事にあるように、トレーサビリティなどは現時点での活用法としては良いと思います。不正行為をしても大したメリット(=儲け)が無ければ、ハッキングされにくいでしょう。技術が不安定な時期に、暗号通貨が暴騰したことはその意味では不幸でした。あまりお金に直接関係ないところから、徐々に普及させて行けば良いのではないでしょうか。
また、当面はビットコインのようなフルオープンのモデル(パブリックチェーン)では無く、管理者を置いたプライベート型かコンソーシアム型が良いのではないかと思います。今のブロックチェーン技術では、改ざんを完全には防げないという指摘もされています。
暗号通貨にも役割と可能性はあり、無くなって欲しくない
冒頭に暗号通貨の暴落と崩壊について書きましたが、これも、暗号通貨の価値が上がったことで不幸にも投機の対象となってしまったために起こったことです。しかし、暗号通貨にはこれまでの通貨に無かった特徴とメリットがあります。無くなってしまっては困る人が多く居るのです。
通常の通貨は国家が発行し、国家が価値を保証することで信用を与えています。日本などの先進国では、国家に信頼がおけるために通常の通貨の価値は安定し、安心して保有していられますが、世界には信頼できない国家の方が多いのです。通貨をもっていても、その価値は明日にはどうなるかわかりません。だから、皆ドルに替えて持っていたいわけですね。そういった場合には、暗号通貨の方がよほど信頼できる(た)のです。
昨年のような乱高下は、暗号通貨の設計時には想定されていなかったでしょう。不安定な国家が発行する通貨よりも安定し、送金手数料も(ほぼ)かからないビットコインは、一昨年くらいまでは途上国でこそ必要な物とされていました。
国家から独立し、政治的な介入を受けない通貨としての暗号通貨には、大きな役割と可能性があります。相場がもう少し落ち着いてくれれば、その本来のメリットを活かした活用の場は非常に大きいと思います。
ITソリューション塾・第30期/2019年2月開講
次期ITソリューション塾が、2019年2月7日(木)より始まります。
リアルタイムでのオンライン受講や録画での受講も可能となります。地方からのご参加や出張先、会場に間に合わない、あるいは、どうしてもその日だけは参加できないといった方々も講義を受けて頂くことができるようになりました。
デジタル・トランスフォーメーションが叫ばれるいま、変革を進めようとするお客様は、変革への意志や問題意識はあっても、「どこに向かって変革し、どのようにイノベーションを起こせばいいのか」分かりません。そんなお客様に「課題は何ですか、何をすればいいでしょうか」と尋ねても答えようがありません。そんなお客様に私たちが果たすべき役割は、お客様の「あるべき姿」を提言し、お客様を未来に導いてゆくことです。
お客様との人間関係を作ること、手配や調達に長けていることだけでは、役割を果たせない時代になろうとしています。ITソリューション塾は、こんな時代を生き抜くために、お客様の「あるべき姿」を提言できるようになるために必要な知識とスキルを磨くプログラムです。
- 期間:2019年2月7日(木)開講・毎週1回18:30-20:30・全11回
- 会場:東京・市ヶ谷/オンラインでの受講(リアルタイムと録画)
- 費用:9万円(+消費税)
詳しくは、こちらをご覧下さい。