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本当の人工知能は存在しない。これからは拡張知能と呼ぼう

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数年前のガートナーの発表にもありましたが、所謂「人間の能力を超える」本当の人工知能が今現在存在しないという話は、人工知能に冷静に取り組んでいる人の間ではよく語られています。しかし世間一般の報じられ方を見ていると、まだまだ「AI万能」とか「AIが人の仕事を奪う」という話が多い様に思います。

MITメディアラボでは、「人工知能(Artificial Intelligence)」ではなく、「拡張知能(Extended Intelligence)」を使おうと呼びかけています。

さらばAI、これからは「拡張知能」と呼ぶ時代がやってくる

呼び名を変えれば良いのか、という話ではありますが、呼び名は重要です。今の深層学習アプリケーションがAIではなく最初から違った名前であれば、世間の耳目をこれだけ集めることも無かったでしょうし、その反作用としてのAI脅威論も起こらなかったのではないでしょうか。

ai_nakayoshi.png使っておいて何ですが、人工知能というと、「脳」のイラストが使われがちなのも良くありませんね。

人工知能という言葉を無くす必要はありません。人間の知能を機械上で再現しようという研究は続けて行けば良いでしょうし、その研究は人工知能研究で良いと思います。ただ、現在ビジネスで使われ始めている深層学習による学習・推論モデルの延長線上にある技術はEI(またはXI)と呼ぶということにして、それが浸透していけば、少なくとも誤解に基づく本来不要な心配は少なくなっていくのではないかと思います。

「コグニティブ」を使っていたIBMとMicrosoft

IBMはずっと「コグニティブ」という言葉を使っていましたし、Microsoftもコグニティブを使っています。「認知」と訳されますが、日本では耳なじみが無く、言いにくいためになかなか浸透しなかったのではないかと思います。最近ではIBMもAIを使うようになってきたようです。

一方、GoogleはAIを前面に出す戦略をとっており、セルゲイ・ブリンの発言もあり、今の「AI万能」「AI怖い」の流れを創り出してしまった感があります。あわてて不安を払拭しようとしているようですが、なかなか難しいかもしれません。

拡張知能というのは数年前から使われているようで、こんな記事もあります。

「拡張知能」と「人工知能」 2つのAIはどこが違うのか

この記事ではAugmented Intelligenceを拡張知能といっています。これだと、縮めるとどちらもAIになってしまいます。同じAIのほうが受け入れられやすいと思ったのかも知れませんが、さらに混乱する可能性もあるのでは、と余計な心配をしてしまいます。

IBMも、コグニティブは拡張知性(Augmented Intelligence)のことだと言っています。

AI の役割を理解する──ビジネスの現場で AI はどのように活躍しているのか

この記事の冒頭ですが、

人工知能。私はこれ以上にいんちき臭いものは思いつかない

いいですねえ。この訳。英語でなんて言っているのか興味がありますが、原文を見つけられませんでした。(こういう記事は原文へのリンクも張っておいて欲しいですね)

私たちが欲しいのは「便利な技術」

結局のところ、私たちが求めているのは「人間を置き換える機械」などではなく、「これまでできなかった面倒くさいことを肩代わりしてくれる便利な技術」なのであり、拡張知能はそれを実現してくれますが、人間を脅かすことはありません。技術を正しく理解し、正しく恐れることが大事です。そうでないと、飛行機を見たことがない人が飛行機を見て悪魔の仕業と恐れるのとあまり変わりがありません。呼び方を変えることは、そのための第一歩になるのではないかと思います。

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