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PWAがクライアントプラットフォームのデファクトへ。Appleの戦略転換の狙いは何か?

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以前、PWAについて書きましたが、今月に入っていくつか大きな動きがありました。PWA(Progressive Web Apps)は、HTML5の限界を突破するためにGoogleが推進しているクライアント(ブラウザ)側の高機能化技術で、Webアプリにネイティブアプリ並の操作性や表現力を持たせようとするものです。

先の記事の中で、

AppleにはAppleの事情があり、「はいそうですか」とは行かない部分もある

と書きましたが、どうやらAppleはMacOSとiOSのSafariでPWAをサポートする方向になり、

AppleもiOS/macOSをProgressive Web Apps(PWA)対応へ。次のSafari 11.1でService Workerなど実装

Microsoftはその前の週にPWAをWindows10で「ネイティブ」に採用することを発表しています。

マイクロソフト、Progressive Web Apps(PWA)をWindows 10のデスクトップで実行可能に。Windows 10はWindows、Linux、PWA対応のプラットフォームへ

Google、Microsoft、Appleの足並みが揃ったことで、今後PWAがクライアント側の標準技術になっていくことは、ほぼ間違い無いでしょう。

実際にPWAを使って高速化を達成した事例も、出てきています。

リニューアルで表示を高速化させた「日経電子版のページ高速化とPWA対応」プロジェクトの舞台裏

smartphone_app.png

MicrosoftはOS非独占時代への布石として

私的には、MicrosoftがPWAのサポートを表明したことには違和感はありません。MicrosoftはナデラCEOのもと数年前にオープン戦略に転換しており、今回のPWAサポートもその流れでしょう。Publickeyの記事にもあるように、Microsoftは「Windows 10をPWAにとってもっとも魅力的なプラットフォームへと進化させ」ようとしているのでは無いでしょうか。OSで稼げなくなる時代を冷静に見据えた戦略と言えるでしょう。

「ネイティブに」というのは、ブラウザだけでなく、デスクトップなどにもWebコンテンツを表示できるということです。デスクトップにHTML表示するのって、昔もありましたよね。Active Desktopって覚えてますか? 今調べたら、Windows95の時代からあるようで、XPまでサポートされていました。壁紙に天気予報やニュースが表示され、リアルタイムに更新されるのです。うざいので速攻で表示を切った覚えがあります(笑)。

AppleのPWA採用は、これまでの戦略を転換するものなのか?

以前のエントリを書いたときには、AppleがPWAを採用するかどうか不透明、という状況でした。App Storeは大きな収益をあげていますし、Appleはプラットフォームを完全なコントロール下に置きたいと考えています。PWAによってWebアプリが高機能化すると、ネイティブアプリがWebアプリに置き換えられてしまいます。Webアプリだと、App Storeのようなコントロールは効かず、課金の仕組みも使えません。

それでもPWAの採用に至ったのには、3つの理由があると思います。一つには、プラットフォームのオープン化の波は押しとどめられないと考えたのでは無いかと言うこと、もう一つは、Macとのアプリ共通化、そして最後に、Apple Payによる課金に見通しが立ったためではないかということです。

Appleは最初からHTML5推しだった

最初のオープン化の流れについては、AppleもMicrosoftと同様、このトレンドには逆らえないと考えたのだろうと思います。そもそもAppleは最初からHTML5推進の立場でした。以前もご紹介したと思いますが、iPhoneがFlashを採用しなかったのは、JobsとAdobeの間に確執があったからと言われています。

[CG]アドビーは怠け者、グーグルはクソ食らえと本音を語ったジョブズ

実際に確執があったかどうかはさておき、この記事の最後に、「そのうち誰もFlashなんて使わなくなるだろう。これからはHTML5が標準だとも述べた」とあります。HTML5が予定通り立ち上がらなかったこと、App Storeがうまくいったことなどからネイティブアプリ寄りの戦略をとっていましたが、元々Jobsも、ゆくゆくはHTML5という標準技術に収束していくというのはわかっていたのでしょう。なにより、AppleはHTML5の元になったWhatsWGの立ち上げメンバーでもあります。

ネイティブアプリではMacOSとiOSのアプリ統合はできない

Microsoftは、ユニバーサルWindowsプラットフォームというのを打ち出しています。これは、ひとつのソースコードから全ての(PC、スマホ、Xboxなど)Windows10デバイス向けのアプリを作ることができるというものです。これとは対称的に、AppleはMacとiPhone/iPadのアプリを統合しようという考えは無いようでした。しかし、PWAによってWebアプリがネイティブアプリ並みになるのであれば、MacとiPhone/iPadのアプリを統合できます。

ただ、それだけだとWindowsでもAndroidでも動いてしまいます。そこでハードウェアメーカーとしてのAppleの強みが活きてきます。MacとiPhoneだけに搭載する(例えばA11で載せたAIアクセラレータのような)ハードウェア、あるいはエコシステムを活用することで、他のプラットフォームとの差別化が可能と考えているのではないでしょうか。

Apple PayでWebアプリを有償化

今回、Appleが公開しているSafari11.1のドキュメントにはPayment Request APIについての記述もあります。Apple Payを標準APIとして実装するようで、PWAアプリ(というかWebアプリ)からApple Payを利用できるようにするのでしょう。そしてその仕組みの無いWebアプリは使えないようにし、App Storeに代わる(というか包括する)収益源にしようということではないでしょうか。そして、将来的にはApple Payを汎用的な決済プラットフォームにしていこうという意図があると思います。

スマホのシェアで見ると、世界的に見るとAndroidのシェアが約7割と、圧倒的です。(日本人はiPhone好きなので、世界と逆で7割近くがiPhoneだそうですが、これは世界的に見て異例なのです。どこまでガラパゴスなんでしょうか ^^;)しかし、アプリの売上高では、これまではAppleの方が多かったのです。(昨年逆転されそう、という話はありました)Androidは無料アプリが多いこともありますが、ウイルスが含まれていることも多いなどが原因でしょう。後は、iPhoneはもともと値段が高いので、高所得者層が購入するため、決済額も大きくなると考えられます。Appleにとって将来の決済プラットフォームを押さえるということは、巨大なビジネスチャンスを手に入れることになるのです。

(2018.2.21追記)

初出で書き忘れたので補足しておきますと、PWAが即座にApp Storeのネイティブアプリを置き換えるということは無いでしょう。Appleとしてはユーザーの選択肢を増やし、将来に備えるという意味があると思います。

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