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ARM からますます目が離せない

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昨日、こんなニュースが飛び込んできました。

ソフトバンク傘下のARM、脳埋め込みチップ開発に協力

タイトルが刺激的なので思わず反応してしまいましたが、内容的には体内埋め込み型の医療用チップをワシントン大学と「これから」共同開発します、というもので、まだ何かの成果があったわけでは無さそうです。これに限らず、ARM はこのところ IoT への展開を積極的にアピールしています。

しかし、ソフトバンクに買収されてから、ARM の発表が多く & 派手に (笑) なってきたように思います。元々実力はあったけれども「知る人ぞ知る」会社で、それでいいと思っていたのが、方針を転換して ARM そのものをブランド化しようとしているかのようです。ネットコマースの斎藤さんと一緒にやっているITソリューション塾は今回 9 年目に突入していますが、始めて 2 年目くらい (2010年) から ARM の話をしています。毎回、「ARM って知ってますか?」という問いから始めるのですが、昨年までほとんどの人が知りませんでした。買収後は少し知っている人が増えましたが、それでもまだ半分以下ですね。これだけ普及しているのに、こんなに知られていない会社も珍しいのではないでしょうか。

塾でこの話をしつこくしているのは、別に知識をひけらかしているわけでは無く、塾のテーマでもある「知ることの意味」を実感できる格好の教材だからです。「ARM」や「アーム」という言葉は、今や毎日のようにニュースに流れているわけですが、皆さん見ているはずなのに、それには気づいていません。しかし、塾でその正体、実績、歴史、今後の可能性について15分ほど話を聞いただけで、翌日からニュースの見え方が変わるのを実感できます。それまで気づかずにスルーしていたニュースをキャッチできるようになるのです。アンテナが1本新しく立つような感じでしょうか。情報収集力というのは、こうして強くなっていくのではないかと思います。

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ARM についてのニュースでもっと興味深いのが、少し前に発表された「DynamIQ」アーキテクチャです。

ARM CPUコアアーキテクチャ刷新の土台となる「DynamIQ」の実態

どうも、発表時に AI を高速化する、というメッセージを強く打ち出したために、「AI 専用」的な報道もされたようです。上の記事でも「DynamIQは、AI(Artificial Intelligence)やML(Machine Learning)との関連を強調したARMのマーケティング戦略によって、AI/MLに特化したアーキテクチャのようなイメージを持たれた。」と書いています。しかし実態は、単純な (そのために回路も小さく、消費電力も少ない) 処理を行うコアと複雑な処理を行うコアを柔軟に組み合わせて様々な構成を取ることができる、汎用的なアーキテクチャだということです。

とはいえ、この構成が AI を高速化するために有利に働くことは事実でしょう。AI/ML専用と言って良いGPU (まあ、GPU は元はグラフィックス用ですから専用ではありませんが) やTPUと違い、汎用の処理と AI/ML 処理をひとつのチップに共存させることができるようになります。さらには新しい命令が追加されることで「AI/MLワークロードでは、今後3~5年間で性能が最大で50倍に上がる」ということです。これはやはり、AI の利用をかなり意識しているということでしょう。ちなみに上の記事では「これは、低データ精度に対応したSIMD(Single Instruction, Multiple Data)によって、インファレンス(推論)アクサラレートを行なうものと推測される。」と予想しています。

これ、先週書いた TPU の記事にも結構関連があります。「低データ精度」は、64 ビットや 32 ビットでは無く、もっと低い精度をサポートするということでしょう。(TPU の 8 ビットほどではないかも知れませんが) また、TPU が高速化しようとしている行列計算というのは、大量のデータ (multiple-data) に対してかけ算、足し算などの単一処理 (single-instruction) を行うことで、これが SIMD です。そして「推論」の高速化。

そういえば、昨年、買収直後の記事で、こんなのもありました。

ポスト「京」も採用、ARMアーキテクチャーの強みを富士通に聞く

スパコン「京」の次世代機に ARM の「命令セット」を採用するということです。ARM 「アーキテクチャ」でなく「命令セット」なのがわかりにくいですが、とりあえずそれは置いておいて、ARM が世界的に大量に普及していることが、採用の決め手になったと言うことでしょう。記事にも「仲間がいるプラットフォームへ移行することにした」とあります。自社でSpark用にLinuxを最適化するのは大変ですが、ARM用に最適化されたLinuxはいくらでもあります。他にも、開発ツールやライブラリ、ドライバなど、既にあるものを活用できるのは大きなアドバンテージです。1社や数社でなにもかも揃えるのは不可能な時代、既存の資産の活用やコミュニティからの協力を如何に得ていくかが重要になっているのでしょう。

IoT からスパコンまで、今の ARM には死角が無いように見えます。

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