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Wintelを見限ったIBM

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先週届いた日経コンピュータ (2014.10.2) の「乱反射」というコラムに、IBMがx86サーバーと決別し、顧客をPower8機とクラウドへ誘導しているという話が載っています。今後は、これまでIBMが販売したx86サーバーを、Power8/Linuxサーバーに置き換えていく方針ということです。これを読んで今更ながら気づいたのが、クラウド時代はOSだけでなくプロセッサへの依存も無くなるのだな、ということでした。

2004年にIBMがPC事業の売却を発表したときには、WindowsPCはコモディティ化が進んでいるのでこれ以上続けても利益が出ないからなんだろうな、と思っていましたが、その後スマホやタブレットの出現でWindwosPCはますます苦しい立場に置かれており、結果としてこのタイミングでの売却はIBMにとって良かったのでしょう。

しかし、x86サーバー事業はそのまま持っていました。それをPCと同じくレノボへの売却を発表したのが今年(2014年)の初めです。10月1日から正式に事業が移管されました。

冒頭のコラムは、このサーバー事業の売却はPC事業の売却よりも大きな意味を持っていたのだな、と気づかせてくれました。どういうことかというと、今回のサーバー事業売却では、IBMはIntelとWindowsの両方を見限った、ということではないかと思うのです。PC事業売却の時点では、IntelもWindowsも捨てていません。ただ単に利益の出なくなったハードウェア事業を売却した、ということだったのではないか。

IBMはx86サーバー売却の発表の後、Power8という最新のマイクロプロセッサを発表し、それを搭載したサーバーを今後拡販していくと言っています。GoogleがPower8を使ったサーバーを採用することもあわせて発表されました。つまり、もうx86を使ったサーバーを扱うメリットは無くなったので、自社プロセッサを前面に押し出しますよ、ということですよね。

これは、Windowsが失速したことが大きいでしょう。Windowsは一部の例外を除いてx86以外では動作しませんから、Windowsが企業システムの中で重要な位置を占めている間はx86サーバーを捨てることはできませんでした。しかし、今はプロセッサやOSに依存しないクラウド化が進み、Windowsで無くても良くなった、それなら自社製のプロセッサにLinuxを載せて、それをプラットフォームにすれば良いではないか、ということなのかと思います。自社製品で固める方が開発はやりやすいですし、コストも低くなります。差別化はしやすくなるでしょう。

自社でプロセッサを持っていない企業 (IBM以外のほとんどの企業ですね) にとっては、今後もx86は第一の選択肢となっていくでしょうが、Power8やARMとの競争は激しくなるでしょう。Power8は人工知能や機械学習に向いたアーキテクチャとなっているようですし、ARMは省電力という特徴があります。Windowsを独占していたIntelが、そのアドバンテージが薄れた後にどのような方向性を打ち出してくるのか、注目です。

また、今後 IoT 時代になると、さらに小型・省電力のプロセッサが必要とされるようになります。単価は安いでしょうが、数量は何桁も違うことになりますから、かなり大きなマーケットです。このマーケットを狙った動きもいろいろ出てきていますから、今後はこちらも要注意ですね。

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