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変わるオープンソース

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前回の記事の続きです。IBMがLinuxのコミュニティに社員を投入してLinuxの開発体制が安定したという話を書きました。この後、IBM以外にも、RedHatやNovelなど、Linuxディストリビュータも開発に参加し、どんどんコミュニティの厚みは増していきました。富士通や日立、NECなど、IBMを追う企業も参加しました。2000年に設立されたOSDLにはこれらの企業の他、HPやIntelも参加しています。

この辺までは、企業の利害がわかりやすいので、納得できます。開発に参加していれば、自社製品としてリリースした後のサポートにも役立ちますし、自社技術を積極的にLinuxに取り入れていくこともできるからです。

LinuxがOSとして成熟するにつれ、採用する企業が増えていき、それらの企業の中からも、社員をコミュニティに参加させる企業が増えてきます。現在では、Linuxのビジネス利用を推進するLinux Foundationには180社を超える企業が参加していると言うことです。これらの企業の目的は、Linuxの開発や仕様決定に参加することによって、Linuxを自社で利用しやすいようにすることです。

企業にとっては開発リソースの節約になる

例えば、セキュリティアプライアンスを開発する企業を考えてみましょう。セキュリティアプライアンスは、ハードウェアにOSを載せ、そこにファイアウォールやアンチウイルスなどのセキュリティソフトを載せてパッケージした製品です。面倒なインストールなどを必要とせず、箱から出して電源とネットワークに繋ぐだけで利用できる手軽さが売り物です。(アプライアンスとは、家電を指す言葉で、電源を入れればすぐに使えることを意味します)

セキュリティアプライアンスを作るためのハードウェアとしては、台湾などで作っているIntelベースのパソコンボードが使われる場合が多いようです。大量生産によって非常に安価に製造できます。セキュリティアプライアンスで重要なのはセキュリティソフトであって、ハードウェアはきちんと動きさえすれば何でも良いのです。では、OSはどうでしょうか?

セキュリティアプライアンスを作る企業の本業はセキュリティソフトであり、OSはできれば作りたくありません。しかし、商用のOSを使うとお金がかかります。Linuxのように、無償でしかもセキュリティもしっかりしているOSは願ったりなのです。しかし、セキュリティアプライアンスとしては、さらにセキュリティを強化したいかも知れません。そのような場合に、自社のプログラマをコミュニティに参加させれば、自社でOSを開発するよりも手早く安価に望みのOSを手に入れることができるのです。開発段階で参加していれば、リリース後のサポートやバグ対応などでも有利でしょう。

OSSへの積極的な参加がメリットを生む

つまり、Linuxを無償で利用するだけで無く、積極的に開発に参加することによって、企業としてもメリットを得ることができるのです。沢山の企業が参加すれば、それだけOSの機能が上がり、安定度が増し、開発体制そのものの永続性にも良い影響を与え、それがさらに新しい企業を呼び込む、という良い循環が生まれているのです。それが今のLinuxを取り巻く環境と言えます。

今ではLinuxだけでなく、様々なOSSでこのやり方が採用されています。このモデルが確立されたことで、沢山の企業がOSSに参加し、沢山のOSSの信頼性・開発の安定性が高まり、広く利用されるようになっているのです。クラウドのインフラなどはOSSが無ければ成り立たないほどになっています。

「学生やボランティアのプログラマーが空き時間に作っている」というオープンソースのイメージはもはや過去のものです。営利企業にもユーザーにもメリットのあるビジネスモデルが確立され、ライセンス料に基づかない、まったく異なるエコシステムとなっています。今後この動きは無視できなくなっていくでしょう。

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