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動き出したMicrosoft (3)

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さてさて、モバイル分野での動きです。個人的には、この辺が一番動きが激しいと感じています。Microsoftはモバイルへはかなり早い時期から取り組んでいます。今調べたら、1998年のPalm-size PCというのが最初のようですね。(その前にWindows CEが1996年に発表されています)

当時はPalmなど(日本ではザウルス)のPDA全盛時代でしたが、ちょうど今のiPhoneと同じくらいの大きさでタッチペンで操作するものでした。力を入れれば指でもなんとか操作できましたから、まあ、iPhoneもアイデア的にはそれほど新しかったわけでもないということかも知れません。

しかし、取り組みが早かった割にはなかなか成功せず、今では後からやってきたiPhone/Androidに遙か先を行かれることになってしまっているのはご存じの通りです。

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さて、そのMicrosoft、これまでも何もやっていなかったわけではないのですが、ここ数ヶ月の動きを見ていると、「やっと」本格的にいろいろな戦略が動いてきた、と思えるのです。これから今年後半にかけて、結構面白い展開になるのではないでしょうか。

一番大きな動きは、ディスプレイサイズ9インチ未満のデバイス向けのWindowsの無償化でしょう。

Microsoft、低価格端末向けWindowsの無料化を発表

以前のエントリーで、GoogleがAndroidを無償で提供できる理由を書きましたが、結局、無償のOS(Android)と有償のOS(Windows)が闘うのはやはり無理だった、ということでしょう。誰だって、タダのほうが良いのです。Microsoftはついに、というか、やっと、というか、Windowsの無償化を決断しました。遅すぎたくらいですが、どうにかこれで、Androidと同じステージには立てたわけです。こうなると、Microsoftのほうがサポートも手慣れていますし、サーバーとの連携も容易であり、企業向けのモバイルプラットフォームとしてはかなり期待が持てます。

(Microsoftは同時にIoTデバイス向けのWindowsの無償化も発表しています。その話はまたいずれ。)

ほぼ同時に、Nokiaの携帯事業の買収が完了しました。これから、Microsoft製のスマホが市場に出てくるわけです。Surfaceを含め、自社HW+自社SWでUXを追求するAppleモデルと、OS無償化で裾野を拡大するGoogleモデルを組み合わせ、Microsoftの持つ企業プラットフォームにおける強みを活かしていく、という戦略が見えてきます。

さらに、Office for iPadは、Officeを多様なデバイスに対応させるという戦略の一部と考えられます。アプリケーションプラットフォームとしてのWindowsはLinuxやiOS、Androidなどとの競争において徐々に不利な立場に追い込まれつつあります。一方で相変わらず強いのがOfficeです。MicrosoftはこれまでOfficeをWindows専用にすることでWindowsを強化していたわけですが、今後はOffice単独で様々なプラットフォームに対応させていく方針と考えられます。見方によっては、OfficeがWindowsを見捨てた、ともとれます。Officeは互換製品も多く出てきており、乗り換えの動きが始まっています。手遅れにならないうちにオープン化に舵を切った、ということなのでしょう。

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