ベンチャー企業がグローバル展開する難しさ:1年間やってみた雑感
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最近は朝から晩まで「Android」と「Google Play」漬けという毎日ですが、このブログのもうひとつのテーマとして「グローバル」があります。
ここ数カ月は「Google Play」と「Android」の話題ばっかりなので、グローバルビジネスと海外展開をテーマにガチの記事を一本書いてみようと思います。
2011年の春にシンガポールに子会社を作って、2012年の始めにはシリコンバレーと香港に拠点を作って、日本以外での営業展開も積極的に行なってきました。
Androidアプリを収益化するプラットフォームを1年とちょっと運営してきて、今日時点でサービスを使ってもらっているアプリが累計で2200万ダウンロードを突破したリリースを出しましたが、ダウンロードの7割は海外です。
実は今の主事業ではあるAndroidアプリ収益化プラットフォーム「metaps(メタップス)」事業はもともとはシンガポールの子会社が運営母体として始まり、結果的に親会社の主事業となり、サービス名が親会社の社名になったという少し変わった経緯があります。
それまでは完全にドメスティックな市場でビジネスをやってきて、途中から180度ピボットした中で、色々変わった事も経験できたので、試行錯誤の中で感じたことをここで紹介していこうと思います。
私は非常に天邪鬼な性格で、「Androidアプリは儲からない」と言われれば「本当かな?」と思ってしまい自分で試さずにはいられないですし、「日本のビジネスは世界では通用しない」と言われればその逆を証明しにいきたくなってしまいます。
ただひとつ確かな事は、自分で足を踏み出してやってみない限りは永遠に「真実」はわからないという事でした。世の中にあふれている情報は、実際に実践していない「声の大きな人達」が立てた推測や、そんな人達に都合の良い情報だったりすることがほとんどです。
自分で確かめずにそれらの都合のいい情報を鵜呑みにしていたら、本当の事が一生わからないまま棺桶に入ることになります。自分にはやはりそういったことは納得ができない性分で見たまま感じたままをネットに共有しておこうと思います。(インターネットが無い時代はぞっとしますね・・)
またもうひとつブログでまとめる理由は、自分が事業を実際に日本以外に展開する中で初めての事だらけで困った経験があったためです。どこにも参考する情報がのっていなくゼロから情報をかき集めなればならないと、多くのリソースと時間を使ってしまい、それだけでもベンチャー企業にとっては命取りになります。
もし先陣を切っていった人達の試行錯誤の記録が見聞きできれば今の立っている地点まではもっと早く来れたのに・・・・と思ったので逆にこれから挑戦する人達が同じ失敗をして時間とお金を無駄にしないようにまとめておこうと思います。
●そもそもなんでグローバル展開する必要があるの?
昨年は海外展開は「市場調査」目的で動かれている企業さんが多かったですが、最近は切実な問題として海外市場でのビジネスに全力で投資をされている場合がほとんどです。上場企業のIR資料をあさっていても、経営課題や投資分野が「海外展開」「グロ-バル展開」の文字だらけになっています。
「なぜ必要なのか?」という点は「世の中」がそういう流れだからではなく、具体的な理由を整理しとかないと戦略そのものがぶれてしまいます。
短期的な利益を求めるのであれば、ビジネスを海外展開などしないほうが「賢明」です。フィンランドやシンガポールとは異なり日本国内には一定規模の市場があるので、勝手知ったる土地と人脈の中でビジネスをするほうがはるかに合理的です。むしろあるかないかもわからない海外の市場に投資をするのは、無謀な中二病患者のやることと言われても、なるほど頷けます。
ただ自分が日常的に使っているサービスをあらためて見直してみると国産のサービスが無くなっていることに気付きます。
- ①メール:Gmail
- ②検索:Google
- ③クラウド:DropBox、Evernote
- ④パソコン:Apple、Acer
- ⑤書籍:Amazon
- ⑥スマホ:Android、iPhone
- ⑦SNS:facebook、twitter
- ⑧サーバ:Amazon、Google
- ⑨顧客管理:Salesforce
これらのサービスが日本に上陸した時にはほぼすべて「流行らない」と言われていましたが、実際には国内サービスのシェアをどんどん奪い今や独占的なポジションを得ています。
「facebookは日本では流行らない」「iPhoneは日本では流行らない」という記事は以前は至るところで見ましたが、結果は真逆になってしまいました。私も残念ながらいつのまにか国産SNSにはログインしなくなり、気がつけばfacebookとtwitterをメインで使っています。
●世界展開は売上拡大のためよりも「生き残り」のため
なぜこれらのサービスを使ってるか自分でも考えてみましたが、便利であることはもちろんのこと「世界共通でどこでも使えるのがこれしかなかったから」という理由が一番しっくりきました。
今までは言語の壁が守ってきましたが、原価や人件費の安い国へのオフショアなどが当たり前になる中で経済的な国境が急ピッチに消滅してきており、当然復数の国にまたがってサービスを利用したいというニーズが発生してきてます。これに対応していないサービスは自動的に選択肢から消えてしまう事になります。
私自身も事業を日本以外の国に展開していく中で、初めてこの意味が身を持って理解できました。日本以外の人と繋がっておきたい場合は、当然日本のSNSのアカウントを海外の人が持っているわけはないので、facebookを選ばざるを得なくなります。
サーバを選ぶにしても、国内だけで展開する場合にはたくさん業者が合ってどれにしようか迷いますが、全世界で統一したサービスを展開し、各国の負荷に耐える構成を考えると選択できるのは数社しかありません。
顧客管理(CRM)サービスをASPで使うにしても、シンガポール・香港・シリコンバレーに拠点があり、各国で共通の顧客データベースを作り管理しようと思うと日本しか対応していないサービスは自動的に選択肢からはずれます。
自分が選ぶ側になって見て初めて理解できたのですが、まったく逆の事が自分のサービスにも言えると感じました。グローバル対応していないサービスは選択肢にすらあげてもらえず、コンペにすらならない。自国にしか対応していないサービスは莫大なチャンスを逃すことになると改めて実感できました。
このまま全世界の企業や人が今以上に効率と快適を求めて国境を超えて活動し始めると、どんどん世界は密接になっていきそれに対応できないサービスは駆逐されていくようになります。
日本ではこれ以上の成長は見込めないから、さらなる成長を求めて海外の市場を獲りに行く、という「成長戦略」のひとつとしてグローバル展開が議論されることが多いと思います。ただ日本のような内需がこれ以上期待できない国にとっては、成長戦略としてではなく「生き残り」のための「必須条件」として語られるべきテーマです。日本においても国内の顧客基盤を守るためにグローバル展開をする必要が確実に出てきています。
特にこの影響が真っ先に出るのがインターネットを使った事業領域で、「スマートフォン」「ソーシャル」「クラウド」などにおいてはその傾向が顕著です。
実際に国内だけで事業をやっていた時は、「グローバリゼーション」などの言葉を本で見て、「なんか良い感じの響きだな」とのんきな事を思ってましたが、実際に渦の中に入ってみると、「弱肉強食の超競争市場の波」の事だと改めて感じさせられました。
●あり方が変わる「ベンチャー」と「スタートアップ」
これはあくまで自分が関わっているITの中のさらにスマートフォン・モバイルという領域だけの話かもしれませんが、もしこのままグローバル化がさらに進めば「ベンチャー」や「スタートアップ」「中小企業」のあり方も今までとは大きく変わると思ってます。
facebookのIPOの影響で国内のスタートアップは盛り上がっていて、少額投資系のスタイルも増えていることからベンチャーの数自体は増えている印象があります。
以前はまったくゼロから事業を初めても、「そこそこ」儲かる事業が国内にもたくさんあって、参入コストも安くすぐ始めることができるため会社を「安定成長」させていくことは難しくはなかったように感じます。
既に国内で儲けやすい基盤が出来ていたガラケー公式サイトビジネスや、広告代理店ビジネス、SEO、アプリ開発、最近までで言えばソーシャルゲームも比較的に投資額が少なくて済む収益の出しやすい事業だったと思います。
ただここに来て「スマートフォン」と「ソーシャルメディア」の2つが既存の様々な市場を壊して、世界中のプレイヤーとの競争を余儀なくさせているので比較的楽に「そこそこ」儲かるという事業はどんどん消えて来ています。
ガラケー公式サイトであれば表現力に制限があったため、開発コストを抑えながらキャリアのエコシステムの中で国内企業とだけ競争していれば問題ありませんでした。
スマホへの移行でリッチな表現が可能になる変わりに開発コストが激増し、コンテンツプロバイダーもゲーム会社もAppleとGoogleが作った世界共通のプラットフォームの上で世界中のプレイヤーと競争しなければいけなくなってしまいました。
「ソーシャルメディア」に関しても今までの検索や大手のニュースメディア中心のアクセス構造をぶっ壊して、既存の広告業界やメディアのビジネスもこれによって大きく変えられてしまいました。
どちらにも共通するのが企業が「利益」を得にくくなった点。損をする人が増えれば得をする人もいて、その「利益」はどこに消えたかと言えばすべてルールを作った胴元であるプラットフォームの管理者の元に吸い上げられる形になり、結果「Apple」「Google」「facebook」「amazon」などの企業の時価総額をさらに押し上げる「肥やし」になります。
●「ノマド」か「メガベンチャー」かの2極化
「そこそこ儲かる」が無くなったマーケットでは、ベンチャー企業・スタートアップが取る道は2つで、「ニッチを狙い身の丈のノマドスタイルに徹する」か「全力投球でメイン市場を獲りにいくメガベンチャーを目指すか」のどちらかに2極化していくことになると予想しています。
初期投資のコストはインフラの発達で格段に下がっているので、オフィスを構えず、社員を雇わず、拡大を求めず、身の丈以上の投資をしなければ起業がこれほどまでに向いている時代はないと思います。
逆に市場シェアを拡大させ企業をスケールさせていこうと考えた場合、超競争に巻き込まれることになり、以前のような毎年120~150%成長という「安定成長」そのものができなくなる企業が増えるだろうと思います。
スマートフォンやソーシャルの市場で利益を出すためには、一気に投資をして世界シェアを取りに行き、年次で10倍、100倍という単位で拡大していくような北米系のメガベンチャーが日本でも今後は出てくると予想しています。
いずれにしろ「そこそこ」が許されない、ありとあらゆるものが2極化していくのもグローバル化のひとつの側面なんだな、と一人で納得していました。
●実際に1年間動いてみて感じたこと
「まぐれ」ではないと納得できるほど優秀な起業家
アメリカのサービスが世界一になったり、中国の企業が桁違いの速度で成長するのを見て、その国の特殊環境が影響しているとずっと感じていました。特にアメリカに関しては「英語」という世界的に普及している言語と国際的な影響力があるから彼らのサービスは世界で大きなシェアを取れると個人的に思っていましたが、実際は半分は正解で半分は不正解のような気がします。
もちろんよく言われるようにシリコンバレーの投資家と起業家のエコシステムがうまく回っているからという話は聞きますし、実際に事実だと思います。
ただ自分が抜けていたのが、「起業家同士の競争も超激しい」という点です。チャンスが多い土地には優秀な起業家が世界から集まり、その起業家同士が資金の獲得や人材の獲得、市場シェアの獲得を争い競争している。その熾烈な競争の中で生き残った上位1%以下の起業家は信じられないぐらい優秀な人達がいました。
発想力・コミュニケーション能力・マネジメント能力・実務処理能力・プレゼンテーション・デザイン力・開発力・資金調達能力を含めて、日本ではめったにお目にかかれないレベルの起業家が存在していて、彼らであれば確かに創業数年で数百億円、数千億円の企業を創るのは納得ができました。
決して「まぐれ」で一発あたったというのではなく、桁違いに優秀な人達が集まってさらに苦労して出した結果だと想像できます。
さらに「中華系」「韓国系」の起業家・ビジネスマンのハングリーさとモチベーションの高さには驚きを感じることが多いです。頭の回転が早く行動力もあり、意思決定もスピーディーで信じられないぐらいハードワークです。彼らの働き方を見ているといつも焦りを感じさせられます。
日本が言語の壁に「守られた」マーケットであったことがよく実感できました。
「プロダクト」と「組織」の優先順位が逆
これは大手企業はどうかよくわからないですが、インターネット系のベンチャー・中小企業に関しては日本と海外で経営に対して明確な価値観の差があると感じました。
日本は箱(企業・組織)を作り、企業にカルチャーを根付かせてその中で復数の事業を育てていくタイプの成長の仕方をする企業が多いです。そのため事業が復数のポートフォリオで組まれていて、自社は何の会社かと問われた時に曖昧な答えになりがちです。そこでは組織が主であり、サービスやプロダクトが従の関係にあります。新卒採用やビジョン・ミッションの策定にこだわるのも、組織を主と考えるのであれば納得できます。
北米・アジアのベンチャー企業はプロダクトやサービスを主として、組織・企業を従とする真逆の優先順位付けが多いと感じました。まず先にサービスが存在し、サービスをよりよくするために組織が存在する。自社が何の会社かと問われてもプロダクトそのものなので、誰も回答に困らない。採用に関しても企業カルチャーというよりもそのサービスに惹かれて入ってくる人がほとんどで、経営の中心には常にプロダクトとサービスがあります。総花的な事業展開はせず、ひとつのサービスにリソースを絞って一極集中・一点突破する攻め方をします。
プロダクトよりも組織を優先するやり方のメリットは「安定性」です。組織としてのカルチャーを重要視しメンバーをゼロから育てていくので、復数の事業を同時に展開し、ひとつのサービスがコケてもダメージは少ない。メンバーの「組織」に対するロイヤリティが育っているため離職率も低く、市場環境に左右されない経営ができます。日本のように市場が限られているとこっちのほうが合理的に見えます。逆にデメリットとしてはスケールが難しい点です。限られたリソースを分散して投資をし、プロダクトよりも組織を優先するので、超急速に事業をスケールさせたい時に組織がついていけなくなるためです。
プロダクトを最優先に考える場合は、経営リソースもすべてサービスに投下されるので拡大のスピードが速いです。組織もサービスを軸に変化していくので、急激な成長にもある程度柔軟に対応することができます。逆にプロダクトがすべてなので、そのサービスがコケればその時点で企業も終了、ハイリスク・ハイリターンな経営になります。
「優良」な「安定成長」の企業を目指すのであれば今まで通りのやり方がベストだと思いますが、安定成長が難しい超競争のグローバルビジネスにおいては後者の経営のほうが逆に生き残る可能性が高いと直感的には感じました。
もちろん見る人(銀行・VC・起業家・社員)によって評価はまったく違うので、どれが「正しい」というのは無いと思います。
●よく見た失敗例と実際に失敗した事
「日本人村」
ビジネスをグローバル展開する際に一番多いのが、各国に滞在する支社の日本人同士でコミュニティ(日本人村)が出来て上がってしまい、現地でのビジネスがひとつも発展しない場合です。特に日本人担当者を抜擢して海外拠点に送り込んだ時に起こることが多いようです。
ネットワーキング・情報交換と言えば聞こえはいいですが、実際に日本での関係性は深まっても一行にグローバルでの市場シェアの拡大にはつながりません。市場調査のためのマーケティング拠点であればまったく問題ないですが、実際に取引を発生させて売上を出していきたい場合は、日本人同士が集まった「日本人村」に長く居すぎるのは危険です。それであれば普通に帰って来て日本でビジネスをして、現地の拠点は現地の人間を採用して事業をさせたほうがはるかに効率的です。
海外から日本語がカタコトの人が東京に来て、右も左もわからない状態で事業が拡大できないことと同じです。やはり現地の人間にしかできない事や、現地の人間でしか入り込めないコミュニティもあるので任せるところは任せてしまう割り切りが重要です。
その国の特殊性は言い訳にはならない
他の国に事業を展開してうまくいかない際に、その国の特殊事情や特殊な商慣習・国民性などが理由に上げられることがあります。言語が独立している「日本」や「韓国」などでもよく言われますが、よく考えてみると特殊ではない国など存在しないです。どの国でもうまくいかない理由は100以上見つけられるので国の特殊性がうまくいかない本当の原因ではないことが多いです。この結論に至るまで色々な失敗をしました。
他の国で同じ20代の人達を都市部で眺めていると、日本と同様にスマートフォンを使って電話をし、アプリで遊び、よく似たファッションや趣味をしていることに気づきます。「Angry Birds」はフィンランドのRovio社が作ったアプリですが、国境も言語も飛び越え全世界中で遊ばれています。
どんな国の特殊事情や商慣習があっても、「本質」を突いた本当に素晴らしいサービスはエンドユーザや顧客に受け入れられる事は、「日本では流行らない」と言っていた評論家の人達の予想がことごとく外れている現状を見ても確かです。
スマートフォン業界で言えば「日本のソーシャルゲームは海外では流行らない」という通説は「神撃のバハムート」が北米で見事に覆しました。またadmobやINMOBIなどのスマートフォンアドネットワークの登場は「純広告枠→レップ→広告代理店→広告主」の日本特有の商慣習を変え、広告主と媒体がアドネットワークを介してダイレクトに取引をする流れを作りました。
「楽しい」「面白い」「便利」などの感覚は私達が思っている以上に世界中で共通している感覚であり、革新的なサービスやアイディアは既存の長く続いた慣習・習慣などを塗り替える力があります。
逆に過度のカルチャライズやローカライズをして、「郷に入れば郷に従え」で現地の商慣習に合わせてしまえば、そのルールの中でずっと事業をしてきた現地企業に一生勝つことはできません。新規参入者でありながらその国のシェアを獲得するためには今までの企業とは少し違う攻め方を考える必要があります。
●グローバル化によるメリット:『レバレッジ』
ここまでの内容を見ていくと、グローバル化はベンチャーにとっては地獄のような競争環境で戦わなければいけないように感じますが、まったく逆にすさまじいメリットも存在します。それは事業で発生する『レバレッジ』のかかり方が国内市場とは比べ物にならないほど大きい点です。
私達が今のサービスを昨年から開始して、当時日本のメンバーを中心に営業活動をして1年間で積み上げたネットワークの規模が1000万ダウンロード程度です。実際にかなり試行錯誤をしましたが、グローバルチームのメンバーが営業活動に慣れてきてエンジンがかかった状態になり、そこから1ヶ月弱でその倍近い規模のネットワークへと拡大させました。
日本の1年間の実績を1ヶ月で積み上げてしまう「レバレッジ」こそグローバル展開の醍醐味であり、規模は桁がまったく違いますが、同じビジネスをやっていてもFacebookやGoogleがああいうスピードで拡大していた理由が少しだけ理解できたような気がしました。
さらにスマートフォンやソーシャルの良い影響で、かかるレバレッジの角度は高まっていっています。以前ループスの斉藤さんがブログで、WEBサービスが100万ユーザを達成するまでの期間を比較していましたが、GREEが28ヶ月、mixiが17ヶ月に対して、facebookが10ヶ月、LINEは3ヶ月、Instagramは2.5ヶ月と急激にスピードが増してきています。
ベンチャー企業にとっては非常に嬉しい事で、今まではサービスを軌道に乗せても大手が参入してくればその時点で終了でしたが、スマートフォン×グローバル×ソーシャルが掛け合わさると他社が追いつくことができないくらい急激に成長することが可能になります。
不確かな未来に対して足が突っ込めるベンチャー・スタートアップにとってはこれほどのチャンスはめったにないといえるかもしれません。
●これから求められるのは外貨を稼ぐ日本人と日本企業
スマートフォンやインターネットの市場を始めとして、グローバル化の流れは他の産業にも凄まじい勢いで波及していき、いま以上に企業はより原価と労働力が安い市場に雇用を移していきます。国内の雇用に関しても給与水準が安くて優秀な人材を海外からどんどん採用していく流れが強まると思います。日本人の人材として価値は相対的に下落し、一部の特殊な技術や能力を持つ限られた人達を除き、日本人自体が世界から必要とされなくなる日が来ると事業をしていく中で本気で焦りを感じました。
内需の拡大はこれ以上見込めないどころか、むしろ海外のサービスに市場シェアを奪われて国内市場における日本のサービスはどんどん減少していきます。日本の象徴的企業であるソニーやシャープを見ていても既にいち大企業の問題ではなく、日本経済全体の問題な気がしてなりません。
あとここ5年で求められるのは外貨を稼ぐ日本人と日本企業の存在です。内需に頼らなくてもさらに経済が発展していけるように方向転換が必要な時期に差し掛かっていて、めまぐるしい一連の動きはひとつの「アラート」「シグナル」みたいなものかもしれません。
●本当に価値があるのは「ベンチャー企業」の成功事例
立ち上がって歴史の浅いベンチャーには失うものが大手よりも少ないと言えます。まだ誰も経験したことのない国外のマーケットにあえて足を出すのは無謀に思えますが、誰かがリスクを取ってでもグローバル市場を開拓しノウハウを持ち帰ってこない限りは永遠に今の現状は変わらないでしょう。
資金力と人材を大量に抱える大手企業が世界で成功する事と、無いもの尽くしのベンチャー・スタートアップが世界で成功する事とは意味合いが大きく異なります。
大企業のグローバルでの成功の要因は、たとえそれが彼らの努力によるものでも、資金力と人材力・コネクションがなせる結果だと多くの人の目には移ってしまいますし、人々が挑戦しない理由にもなります。
しかし「金・コネ・人」いずれも無い企業が、知恵と工夫のみで人と金と人脈をかき集めて成功をこじ開けることができれば、「自分にも可能」だと考える人が増え、リスクを取ってでも世界へ挑戦する流れの「呼び水」となるはずです。
●停滞感を吹き飛ばすのは「危機」と「希望」の両方
私が小学生ぐらいの時から日本に漂っている停滞感は10年以上立った今でも消えないどころか、むしろその影は年々濃くなってきています。
日本に蔓延する停滞感・閉塞感の正体は社会の成熟による「危機感の欠如」と経済成長の天井が見えてる事への「失望」です。人間は「危機」と「希望」の中間に置かれた時に最も力を発揮すると個人的には思っていますが、今のこの国はその真逆です。
最近はお隣の韓国が凄まじい勢いで世界での影響力を強めています(ここではその方法の是非には触れません)。韓国は通貨危機以降、「国」が無くなってしまうかもしれないという強烈な「危機感」が今のサムスンやLGなどを世界的なグローバル企業へと押し上げました。
グローバル化が進めば短期的には日本は凹むのは間違いないですが、国内の雇用消滅に対する「危機感」は良い契機なると感じています。逆に「希望」に関しては誰かが先行事例を作ることで呼び起こすことができると思っています。
ベンチャーやスタートアップが今ほど明確な役割と活躍の場が与えられた事はかつてなかったように感じます。
このブログでこんな事を公開しているのも、ポジティブなアクションに対してのきっかけを作りたいと思っているためです。よく知った人が「ひとりではできないこともみんなでやれば可能になる」という趣旨の話をしていましたが、社会の流れそのものを変えるのは一人では難しいが、きっかけぐらいは自分でもどうにかなると思いながら私も事業をやってます。
●シンガポールには次の日本のヒントがある(かも)
実際に内需に頼らず(頼れず)に成長している国は世界を探すと色々あり、中でも子会社を置いているシンガポールは日本の良いベンチマークになると感じました。
シンガポールは国民が500万人程度しかいなく、土地も東京都ぐらいのサイズしかない都市国家ですが、アジアの中でも高い経済成長率を誇っています。政治における強力なリーダーシップ(批判もあるけど)と、国民に対する徹底した言語教育(英語・中国語)、外資を誘致し経済のハブとしての機能を担い、内需に頼らなくても経済が発展する仕組みを構築しています。
今後先進国も経済成長が頭打ちになり伸び悩みが深刻化した時には、シンガポールや香港のような、内需に頼らない国の成長モデルが新しい先進国の形として受け入れられる日が来るかもしれません。シンガポールは国民が500万人の小国だから実現できることだと一般的には言われていますが、1億2千万人の日本でも同じことは可能だと私は思っています。
長くなりそうなので続きはまたいつか書きます。
※追記
続編は下記の記事に書きました。
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