実名で攻撃されるか、匿名で誹謗されるか
お笑い芸人のブログに誹謗中傷を書いたとして、6人の投稿者が書類送検をされたというニュース。件のお笑い芸人スマイリーキクチさんのブログにはいろいろなコメントが寄せられているということです。
ネット中傷「私も被害」…悩み訴え3000件書き込み(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090327-OYT1T00622.htm
記事にはさまざまな被害経験が紹介されていますが、中でも恐ろしいと思ったのは「写真や本名を勝手に使われ、本人になりすましたブログを立ち上げられ、自宅の住所まで公開されたと訴える」というくだり。第三者から見た「実名」の存在に「なりすます」という行為には、悪意以外に感じられません。
ですが、嫌がらせや中傷。これらが「悪意」なのか、それとも「正義感」ゆえの行為なのか、どうやって区別すればいいいのでしょうか。今回送検された人も、ブログ主が殺人犯に違いない!という思い込みと「正義感」から、中傷コメントを書き込んだという記事もあります。いわゆる「電凸」と呼ばれる、企業や団体、個人に対して電話で苦情を申し入れるという行為も、やっている本人は正義感ゆえかもしれませんが、企業からみれば「サイバーテロ」(本学の社会人学生によるコメント)の一種となり得るでしょう。
そして、そもそも誹謗中傷は「匿名」ゆえなのかどうか。確かに、匿名性によって、人は自分が守られていると感じ、攻撃性を高めてしまうという面はあるでしょう。しかし、そこには二つ問題があります。
第一に、そもそもネットの匿名性は低いということ。怪文書をポストに放りこむことと、怪文書をネットの掲示板に書き込むことを考えると、後者は(会員登録制なら)登録情報、アクセス元の情報、プロバイダ情報、契約者情報…というようにトレースすることが考えられます。携帯からの書き込みならなおさらでしょう。
第二に、匿名の誹謗と実名の攻撃は、どちらの方がのぞましくないか、ということ。匿名の誹謗は所詮自分に関わりのない連中だ、と割り切ることもできるかもしれません(※1)。おそらく知人に違いない、という人物が名前を隠しているのはさらにたちが悪いでしょう。そして、実名で堂々と攻撃してきた場合にはどうでしょうか。このショックは案外大きいように思います。もちろん、攻撃に対して反論したり、誤解を解いたりするチャンスは与えられますが。
匿名性に乗じた暴力、と言われますが、上記の二つの観点が落ちているようで気になりました。
※1 「重要な他者」とそれ以外を整理することは、精神衛生上も大変重要。
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気持ちがだいぶ楽になりました
「わかってくれない!」と思い込む前に