毎日新聞は誤報どころか誤謝罪:匿名とは実名を隠している状態だけではない
元厚生次官の妻が殺害された事件の報道に関して、wikipediaに犯行予告?としてwikipediaの書き込みと書き込んだ人のIDを報道した毎日新聞が、謝罪の記事を出していた。
おわび:「ネットに犯行示唆?」の記事について
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081119k0000e040034000c.html
だが、ここで謝罪されているのは、あくまでも書き込みの時刻について。事件前に書き込んだと勘違いして(世界標準時か日本標準時かの取り違えではないかと)いたと推測するが、しかしこの謝罪すらも大きな誤りである。
新聞記事―ネット記事だけでなく一般に宅配された新聞―では、wikipediaに書き込んだIDが大きく掲載されている。ネットのことをよくわからない人が読んだら、このIDをニックネームと考えて、「これが犯人かぁ」と思う可能性は十分にある。確かに、wikipediaのIDには、一見して実名とは見えないものも少なくない。だが、実名を秘匿している=匿名と考えるのはあまりに拙速だ。
以前「匿名性と一覧性」や「匿名の強さとリンク範囲」というエントリで、インターネット上の匿名構造について書いたのだが、WikipediaのIDは、書き込みをLinkable(同一人物のものとして関連付けられる)な状態にするものだし、書きこんだ記事から本人を特定できる可能性もある。また、WikipediaにIDユーザとして書き込むためには、パスワードによるログインが必要で、これもIDと個人を一対一対応させるものだ。
2ちゃんねるでさえ、ID付与によって、同一人物であるかどうかはある程度わかる。だが、それが時限であることと、「名無しさん」という名前からは個人を特定する手がかりは得られないために、wikipediaと比べればずっと匿名性は高い。
そんなわけで、これは誤報だけでなく、誤謝罪。個人の識別子を誤って公開したことを謝るべきだ。
参考:
・痛いニュース(ノ∀`):【元次官襲撃事件】 毎日新聞、「Wikipediaで犯行予告」と誤報→各テレビ局も釣られて報道