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【25,000円】 なぜあの電子辞書は、いつも売り切れなのか

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 我が家ではこの4月、娘2人がW進学(大学・高校)で、親にとっては何かと物要りで大変でした。さすがに5月連休にもなって、ピークも過ぎた感じではありますが、その中でまだ揃っていないのが、高校生になった次女の電子辞書。進学先が決まった3月後半から、ゆっくり物色に入ったものの、実はまだ購入に至っていないのです。
 
 価格.comなどで人気商品をあらかたチェックし、ざっくりカシオ1機種とシャープ1機種の2種類に候補を絞りました。そして実機を見てみようと3月末に大手家電量販店に出向いたとき、販売員さんとこんな会話を交わしました。

「申し訳ありません、ただいま在庫を切らしておりまして」
「全色、在庫がないのですか?」

「はい、入荷した色から売れてしまうんです」
「今が一番売れるときなのに、在庫切れって、残念ですね」
「そうなんですよ、すみません…」
「今度はいつ頃入荷しますか?」
「次の週末までには何台か入ってきますので、ご予約いただくのが確実です」

 特に急いでいたわけでもないので、他の店も回ってみようということになったわけですが。実はその後、何度となくその店に立ち寄ってみるものの、いつも「在庫切れ」なのです。この家電店は近所のショッピングモール内にあり、隣には仕事帰りによく立ち寄るカフェがありますので、わたしには大変便利な大型店です。
 
 最近は高校進学を機に電子辞書を購入する人が大変多いようですね。つまり3月・4月は、高校生向け電子辞書の特需が発生する時期。各メーカーもそれを見越して1・2月に新商品を投入。家電店の店頭では特設コーナーが設置され…といった流れがあるわけですが、なぜか、肝心の商品がない。周辺の量販店を回ってすぐに気づきましたが、エイデンもヤマダもケーズも、どの店も在庫がほとんどないのです。これはちょっとヘンだなぁと思ったわけです。
 
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 まず頭に浮かんだのは、
  (1)人気商品だから需要に生産が追いついていない
  (2)メーカー側が需要予測を見誤って少量しか生産していない
  (3)たまたま出かけたタイミングが悪かった

 といった予想。でも、出かけている店は大型店舗であり、週に何度もチェックしましたので、(3)はないと思います。ならばメーカー側の問題?
 
 価格.comを時折チェックして分かったのですが、通販店には豊富とは言わないまでも、そこそこ在庫はあるようです。少なくとも売り切れ続出みたいな状態ではありません。価格動向は、3月半ばに底を打って以後、需要を見込んで上昇に転じ、春休み以降、ある一定の価格前後を細かく上下するものの、なかなか下がりません。さすがに人気商品ゆえ、時間が経過しても値崩れはしないようです。それに比べて量販店の店頭価格はおよそ+3,000~8,000円で、たとえば一番人気のカシオXD-A4800なら、価格.com最安で24,000円~25,000円なのに対し、大手家電量販店では28,000~33,000円といった価格設定になっています。
 
 ある日。いつもの店頭で販売員さんに声をかけたとき、意
外なことを聞きました。
 
「ここ数年、毎年こんな感じなんですよ」
 
 つまり、今年に限って売れまくって在庫が切れているんじゃなくて、卸からの入荷数が少ない状態が続いているらしいのです。ということは、(1)(2)も違うようですね。しかも、毎週ある数量ずつ入荷はあるらしいのです。そして、決定的なことを聞いてしまいました。
 
「実際、売れてますよ。予約してもらえれば週末には入りますから」
 
 在庫が切れてても、予約で売れているという
のです。「在庫切れ=すぐ手に入らない=デメリット」ではなく、「在庫切れ=人気商品=メリット」になっているということですね。実際に予約しても、ほぼ1週間程度で入荷があるらしく、商品がないから数ヶ月待ち、みたいな状況ではないということ。店頭なら全色モックが揃っていて色も確認できるし、実機があるので機能もちゃんと手にとって確認できます。この辺もポイントは抑えられてますよね。
 
 この時期の電子辞書売場は、ご両親に限らず、おじいちゃん&おばあちゃんの来店がすごく目立ちます。お孫さんの進学祝いに電子辞書、ということなのでしょう。
「予約しないと買えないくらい人気商品なんだ」「他の店も同じような感じらしい」「学校が始まると、すぐに必要になるから、すぐ欲しい」「早く予約しないと手に入る時期が遅くなってしまう」・・・「じゃあ予約しようか」・・・こんな流れなのでしょうか。これで売れるなら、量販店はいいことずくめ。だって過剰在庫にならないし、高値で売れて値崩れしないのです。こう考えていくと、ある仮説が成り立ちます。
 
 売れるから在庫切れ、ではなく、在庫切れだから売れる
 
 うーん。電子辞書、恐るべし。我が家の娘は「そのうちに買ってね~」みたいなのんびり屋さんなので大丈夫なのですが。一応、【25,000円】くらいに下がったらエイデンで買ってあげる~みたいなことを言っていたのですが、この調子だと難しい感じですね。さすがにこの連休には買ってあげようと思ってます。。。

Comment(4)

コメント

単に製造の問題って可能性もあります。

最近は専用の部品を減らして、汎用品の部品をなるべく使うようにしています。その方が安く済むのでメリットが大きいのですが、他の製品の需要の影響を受けることがあるのが難点
多分携帯などと多くの部品がかぶっていて、携帯もこの時期が売れ次期ですから・・一部の部品が手に入りにくくなる・・という可能性が高い。

あと、在庫切れ=人気商品って都市伝説みたいな話ですよね。
その後生産を強化して、不良在庫の山になってしまったということも多いですから
それを戦略としてやっているところって・・・高級ブランドぐらいですかね。

あと電子辞書なら iPod touch でも十分使えますからねぇ。専用機器の将来は不安があるので無茶な投資も出来ないって事情もあると思います。

Junji

電子辞書の機能は、iTouch/iPhoneのようなスマートフォンで複数のアプリケーションを購入すれば、遙かに安く実現できます。しかも使い勝手もよい。但し、学校への持ち込みをする場合は、何でもできるiTouch/iPhoneのような機器はダメで、単機能である電子辞書が必要と聞きました。電子辞書が生き残っている主な理由なのだと思いました。

『カシオが電子辞書事業で在庫削減手法を確立、横展開へ - ニュース:ITpro』 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060529/239198/
なんていうニュースもありますね。ある程度成熟した製品では在庫削減はそのまま収益向上になりますし、中村さんのおっしゃるような販売促進効果もありますので力を入れて取り組んでいるのではないかと思います。

TETSUさん、Junjiさん、yoheiさん、コメント大変ありがとうございます。
 
TETSUさんが指摘いただいた部品の共通化の影響は、考えてもみませんでした。しかし共通化が進む現在、ありがちなことですね。ただ電子辞書は売れ時が極端に決まっている製品ですから、それゆえ生産計画も事前に構築しやすいと思われますが、どうでしょうか。
 
またTETSUさん、Junjiさんが指摘されているとおり、我が家でもiPhone/iPodTouchは考えました。辞書アプリを入れれば、電子辞書よりは少し高いくらいの投資で、もっと使い勝手のよいものが手に入ると思いました。でも、これまたJunjiさんが書かれている通り、学校という壁があるのす。この件はまた機会をあらためてエントリーしたいと思っています。
 
yoheiさんが紹介していただいた記事、参考になりますね、ありがとうございます。製販一体となって過剰在庫を抑える取り組みが試されるのは当然のことでしょうが、それが元で販売現場の在庫切れが常態化しているとしたら、売れる機会を逃していることになり、マイナス効果ですね。
 
いずれにせよ、今回わたしが書いたことは、目の前の小さな事実から推測したことに過ぎません。在庫切れが常態化していることをちゃんと掌握しているのかどうか、真相をカシオさんに聞いてみたいところです。

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