【250円】 吉野家VSすき家に見る、単品の強みと単品の弱み
最近、吉野家の元気がないですね。学生時代(もう20年以上も前のことですが)、深夜の駆け込み寺として、わたしには欠くことができない存在だった吉野家。その後コンビニが急激に普及し、24時間営業のアドバンテージがなくなってからも、「早い」「安い」「うまい」という魅力は健在であり、わたしの大きな味方でした。
注文して1分未満で目の前にあったかくておいしい牛丼が提供できるのは、単品営業の強みがあったからだとわたしは考えています。味噌汁や漬け物などのオプションは別として、牛丼一品に特化したスタイルだからこそなしえたワザ。さらに全国で1,000を超える店舗数は他を寄せ付けず、同じ価値を提供できる競合が存在しなかったことが、吉野家の強さを支えていたはずです。
ところが昨今、吉野家の元気がありません。ゼンショーグループが展開する「すき家」が吉野家の店舗数を上回ったのは2008年のこと。すき家は全店直営方式で全国展開。テーブル席を設置したり、メニューのサイズを細かく設定するなど、女性やファミリー層開拓に注力したことが功を奏したと言われています。マーケティングの専門家ならずとも、すき家の戦略が明らかに吉野家との差別化を意識したものとなっていることがわかるはずです。
4月に入り、吉野家が牛丼270円セールを打ち出した直後、すき家は【250円】セールという対抗策を発表(さらに「松屋」も「牛めし」を250円に値下げ)。牛丼値下げ競争が一気に激化しています。さらに、すき家がキン肉マンを広告起用したことがネット上でも話題を読んでいます(この話題はこちらのニュースが参考になります。オルタナでもこの方がエントリーされてますね)。
すき家は、牛丼だけでなく様々な丼物のメニューを提供しています。「牛丼しかない吉野家さんに対して、ウチはいろんなおいしさを提供しますよ」と、単品でないことを強みに押し出す戦略で真っ向勝負しているわけです。吉野家にしてみれば、もちろんコアの牛丼で、「やっぱり吉野家の牛丼はすき家や松屋よりもうまい」という勝ち方を目指す正攻法戦略もあるのでしょうが、世間の評価は今のところそうはなっていないように感じます。かつて吉野家の魅力を支えた「単品の強み」は、強力なライバルの台頭の前に、今や「単品の弱み」になってしまっている、とは言い過ぎでしょうか。
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吉野家とすき家、わたしはどちらもときどき利用しますが、最近は豚丼を注文することが多いので、吉野家じゃないとダメ、すき家じゃないとダメ、というこだわりはあまりありません。便利な方を選ぶ、といった感覚です。これはわたし個人の選択でしかありませんが、少なくとも吉野家じゃないとダメという理由がなくなってしまったのは確かです。。。