【1兆円】 東芝の選択と集中、HD DVD撤退が『選択』なら、『集中』は…
東芝のHD DVD事業撤退については、いわゆる経営における『選択』として賛否両論の評価が示されていますが、では『集中』は何なのでしょうか。東芝は総合家電メーカーであり、またIT先端企業でもあり、たくさんの顔を持っていますが、私は中でも半導体事業、特にフラッシュメモリ事業に着目しています。
フラッシュメモリは今や様々な分野で使われ、技術開発と用途開発が同時に進行するITデバイスです。主流のNAND型フラッシュメモリは、容量の集積が加速度的に進行したことで、低価格化と用途の多様化が一気に進んでいますね。月刊アスキー4月号に、分かり易くまとめた記事が掲載されていますが、それによると、用途別ではSDカードに代表されるメモリカードが36.7%とトップシェア。またiPodなどの携帯音楽プレーヤ向けがほぼ同率の36.4%となっています(2007年第4四半期、アイサプライ・ジャパン調査)。今後はノートPC向けのSSDはもちろん、AV機器やカーナビなどへの用途開発も進行するはずですから、まだまだ多様化と大容量化は進むでしょう。
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NAND型フラッシュメモリのトップシェアは、現在SAMSUNGで、そのシェアは40.2%(2007年第3四半期、同社調べ)を占めています。シェア2位が、東芝で27.2%と、まだ差は10ポイント以上あるわけですが、実はこの差が急激に縮まっている模様。1年前は、SAMSUNG50.8%・東芝19.2%とダブルスコア以上の差がついていたのが、この1年で急激に接近しているというわけです。SAMSUNGやHynix(シェア3位)は、フラッシュメモリだけでなくDRAM事業も手がけており、市況に応じて設備投資を迫られるので、投資が分散せざるをえない実情があります。一方で東芝は、メモリにおいてはNAND型フラッシュメモリ専業となり、メモリ分野における経営資源の投資を『集中』できる環境にあります。
実際に東芝は、2006年~2008年にかけて、総投資額【1兆円】以上と言われる、大規模な設備投資を行っています。その代表が、サンディスクと組んで2007年9月に竣工した、東芝四日市工場(三重県四日市市)の300ミリウェハーに対応したNAND型フラッシュメモリ新製造棟(第四製造棟)。東芝セミコンダクター社の発表によると、「2008年後半には月産8万枚まで生産能力を整備する計画」「その後も市場動向に応じた追加投資を実施し、フル生産時にはLSI製造棟単独の生産能力としては世界最大級の月産21万枚程度に達する見込み」とし、東芝の強い意気込みが伝わってきます。これが、東芝における経営『集中』のひとつであることは間違いないでしょう。
いずれにせよ、技術開発と市場変化の速度が劇的に速いメモリの世界ですから、東芝の『集中』が正しかったのかどうか、結論が出るまでに時間はかからないのかもしれません。。。