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いまだに新しい遺跡が見つかるのは、学者の怠慢じゃなくて

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ある大学院生が、アフガニスタンで数百の新しい遺跡を発見したそうです。その際に活用したのが、お馴染み Google Earth だったとのこと:

Google Earth reveals Afghanistan's hidden treasures (New Scientist Tech)

メルボルンにある La Trobe University の大学院生、David Thomasさんらによる研究成果について。Google Earth の衛星写真から、アフガニスタンの砂漠に埋もれている463の遺跡を確認、さらに既知の45以上の遺跡について見取り図を作成したとのこと。ただし新しい遺跡についてはまだ「可能性」の段階なので、本当に古代の建造物かどうかは実地調査してみないと分かりませんが。より詳しい解説がPDFファイルで公開されていますので、ご興味のある方は確認してみて下さい。

「Google Earth/Maps で新しい遺跡を発見した」という話は以前にもありましたが、衛星写真が簡単に手に入るというのがそれほど大きな要素なのでしょうか?いまは2008年、既に21世紀に入って何年も経っています。これまでに何十年も何百年もかけて世界各地が調査されてきたわけですし、学者ならば航空写真・衛星写真は以前から手にすることができたでしょう。Google という一企業「ごとき」が提供する無料のサービスで新しい遺跡が発見されるなんて、学者の怠慢ではないでしょうか?

いや、もちろん学者達が怠けていたわけではなくて。この世には膨大な情報があり、それをノイズとシグナルに分けるのは学者という限られたグループの処理能力を超えていた、と見るべきでしょう。その一部が Google Earth/Maps というツールによって無数の人々に公開されたことで、見落とされていたシグナルがキャッチされる例が出てきた――ということですよね。以前も取り上げた「ゴールドコープ・チャレンジ」のように、門外漢の方が新しい視点でデータを見やすく、結果として従来の手法では見えなかったシグナルが拾えるという例もあるでしょう。

普通なら経営陣にしか閲覧できないような経営に関する諸データを、一般社員にもアクセス可能にする会社があります。もちろん競合会社にバレるとマズいようなデータ、顧客の個人情報に関わるデータは秘密にしても、ある程度のところまではウェブ等を通じて閲覧可能にしてしまうわけですね。それによって社員の間に様々な気付きを生み、実際の成果にまでつなげている例もあるそうですが、これは「経営陣の怠慢」なのでしょうか?いや、上記の Google Earth/Maps の例にならえば、より多くの人々に参加してもらうことで処理能力を上げたという見方もできますよね。あるいは経営陣にとっては価値のないデータでも、現場レベルでは非常に価値があるというものがあり、それが捨てられずに有効活用されるようになった――という捉え方も可能かもしれません。

発見されなければ、貴重な遺跡といえども存在しないのと一緒であると同じように。重要な経営データも、誰かに発見/活用されなければただの数字でしかありません。新しい遺跡の発見に Google Earth/Maps が役立つのであれば、社内には「データ版 Google Earth/Maps」的なツールが必要なのではないでしょうか。

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