オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

本当は怖い「改革」

»

勝手ながら、今年の夏休み課題図書は『ローマ人の物語』にしました。深い理由は無いのですが、経済誌でも取り上げられることの多いこのシリーズ、以前から読んでみたいと思っていたので。全巻読破……は目指さずに、空いた時間に読み進めてみようかなぁと思ってます。

で、さっそく第1巻を読んでみました。塩野七生さんの文章は読みやすく、話の持っていき方が上手いので、時間を忘れて読みふけってしまいます。ところどころ断定的なところがある点が気になるのと、もう少し詳しい情報が欲しいと思う時があるのですが、人気を博したのも納得といった感じ。悪い意味ではなく、「史実」ではなく(タイトル通り)「物語」として楽しめる作品だと思います。

で、本筋とは関係ないのですが、時節柄こんな文章に惹かれてしまいました:

全ギリシアのポリスが、アテネで確立しつつあった民主政を意識しないではいられなかった時期でもなお、スパルタだけはこの政体を保持していくのである。いや、保持どころか、紀元前7世紀後半のリュクルゴスの改革によって一層確固としたものになり、ますますスパルタ的性格の急進化が進むことになるのだ。

ソロンの改革がアテネの性格を決定したのと同じに、まったく別の方向ながら、リュクルゴスの改革もスパルタの性格を決定したのであった。

改革とは、かくも怖ろしいものなのである。失敗すれば、その民族の命取りになるのは当然だが、成功しても、その民族の性格を決し、それによってその民族の将来まで方向づけてしまうからである。軽率に考えてよいたぐいのものではない。

ローマを知る前提として、ギリシア文明について解説された箇所から。文中でスパルタが保持し続けた「この政体」とは、二人の王による世襲制の二頭政治のことです。アテネを中心として民主政が広がりつつあるなかで、スパルタだけは君主制を維持する道を選んだ -- その「改革」が両者の命運を決したということですね。

7月29日、第21回参院選が行われます。連日のように選挙戦の光景がニュースで流れていますが、気になるのは安倍首相が「改革を続けます!」と連呼している姿。「改革」というキーワードで世論を動かした小泉元首相の路線を踏襲しているのでしょうが、あまりにも「改革」という言葉が軽すぎないでしょうか。改革をする。した結果、日本人がどこへ行くのか、行くべきなのかを訴えなければ、国民が正しい判断を行うことなど望めないでしょう。

もしかしたら、安倍さんは「本当は改革は怖ろしいものだ」とお分かりの上で「改革」という言葉の響きだけを利用されているだけかもしれませんが。何十年か経ったときに、未来の歴史家が「2007年の参院選で日本の命運は潰えた」などと評価することのないよう、私たちは十分に考えて一票を投じなければならないと思います。

Comment(0)