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【書評】『グループアイドル進化論』

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毎日コミュニケーションズさんから『グループアイドル進化論』をいただきました。ありがとうございます。ということで、いつものように簡単にご紹介と書評を。

いま「グループアイドル」という言葉から連想するのは、何と言ってもAKB48でしょう(※本書で扱われているのは、基本的に女性グループアイドルとなります)。テレビ番組はもとより、雑誌やタイアップ商品など、何らかの媒体上で彼女たちを目にしない方が難しいといった状態です。とはいえAKB48がなぜここまでブレイクしたのか、これまでのグループアイドルたち(キャンディーズやピンクレディーから始まり、おにゃん子、モーニング娘。に至るまで)とは何が違うのか、端から見ていると分かるようで分からない部分が多々あるのではないでしょうか。本書はそんなAKB48の「ビジネスモデル」を解説することを軸に、現在のグループアイドルが彼女たちにどう対抗しているのか、あるいは対抗していないのかを解き明かして行きます。

「ビジネスモデル」という表現をしてしまいましたが、彼女たちのアプローチが、これまでのアイドルのあり方と大きく異なることは異論のないところでしょう。しばしば「AKB商法」などと揶揄されていますが、逆にそのような言葉があること自体、AKB48がユニークなビジネスを展開していることの証明だと思います。「会いに行けるアイドル」というコンセプトに象徴されるライブ重視路線。ネットによる双方向コミュニケーションの活用。そこから生まれる「ファン」というよりも「サポーター」と呼ぶべき消費者の存在と、その反面で巧みに従来型メディアとの関係構築を行っていることなど――本書で因数分解される「AKB商法」という方程式は、他業界の人々にとっても参考になる面が大きいのではないでしょうか。

また若い人々の間で、アイドルをいわゆる「オタク文化」として片付けてしまうという空気が消えつつあり、そこに様々なグループアイドルが浸透しているという指摘になるほどと思わせられました。他にも、彼らの間ではケータイが重要なコミュニケーションツールであり、だからこそマスメディアには捕捉されないアイドルが「突然のブーム」として現れること(K-POPのケースなど)があるのだという議論など、大げさに言えば「社会論」的な考察も行われています。残念ながら僕はアイドルオタクではないので(アニメオタクですが)、こうした考察がどこまで正しいかについては判断できませんが、少なくとも「グループアイドル」という一大社会現象を通じて、いまの日本を考えるきっかけを与えてくれる一冊だと感じました。

テイストは大きく異なりますが、デジタル時代の音楽産業/文化を考えるという点で、本書は以前ご紹介した『未来型サバイバル音楽論』とも通じる点があると思います(事実、『グループアイドル進化論』の中で何度か『未来型サバイバル音楽論』が参照されています)。あくまでも個人的な感想ですが、『未来型サバイバル音楽論』で提示された音楽の未来像が、「グループアイドル」という姿で具現化されつつあることを、本書が解説してくれていると感じました。どちらも新書で手軽に読めますので、チャンスがあれば合わせて読まれてみてはいかがでしょうか。

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岡島 紳士 岡田 康宏

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