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ベンチャー企業では、家庭を犠牲にしなければいけないのか?

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~ ここまでのあらすじ ~   

  • Jason Calacanis が自身のブログで「ワーカホリックでない奴をクビにしろ」という記事を公開(ただしその後、「自分の仕事を愛せない奴をクビにしろ」という表現に転換)。
  • それに対し著名なブログから非難の声が相次ぎ、TechCrunch の Duncan Riley がとりわけ辛辣な記事を書く。
  • さらに 37signals の David Heinemeier Hansson が「ワーカホリックこそクビにしろ」という記事を発表するに至り、批判は最高潮に。
  • しかし Robert Scoble は Jason を支持、Duncan に対し「オメーのボスの Mike Arrington に聞いてみろ!遊んでて今の地位まで上り詰めたのかって」と言い放つ
  • 一方、A VC の Fred Wilson は Jason の記事で本来のテーマだった「ベンチャー企業でどうコストを節約するか」という内容に議論を戻し、Jason の主張を支持
  • そして Scoble に名指しされた Mike Arrington は……

(一部の記事は Polar Bear Blog に翻訳あり。)

……ということで、米国のITベンチャー系の有名どころが次々に登場しているこの論争、フォローしていると米国ITベンチャー関係者の労働感のようなものが垣間見えて面白いです。で、長い前フリでしたが Mike Arrington のコメントがこちら:

Startups Must Hire The Right People And Watch Every Penny. Or Fail. (TechCrunch)

コメントというには長い記事ですが、Mike は部下の Duncan には反対し(TechCrunch ではライター一人一人が独立しているから、別に問題視はしないとのこと)、Jason の記事にはおおむね賛成という立場を取っています。「公開するまえに Jason が文章を推敲していたら、恐らく違った反応が返っていただろう」とのこと。日本版 TechCrunch で間もなく翻訳されると思うので、詳しくはそちらを見ていただきたいのですが、個人的に彼の意見が最も妥当なものだと思います。(※追記:3月10日付けで「カラカニスは正論だ。スタートアップは正しい人材を雇え―最後の1セントまできっちり眼を光らせろ」というタイトルで翻訳されています。)

Mike の意見のポイントは「ベンチャーは適切な人材を雇わなければならない(Startups Must Hire The Right People)」というところ。家庭を犠牲にして仕事に打ち込んでくれるかどうか、それとも楽しい私生活も送っているかどうか、等の判断基準ではありません。自社にとってパーフェクトな人材を雇い(もしくは問題のある人材を避け)、パーフェクトなチームが形成できるかどうか。それが正否を左右する、と述べています。

ここでいう「適切」「パーフェクト」という言葉が何を示すのかについては、「それを論じるのは難しい」と述べるにとどまっているので、議論に正面から応えていないという批判があるかもしれません。しかし「具体的に~という人が必要」などという話は、個々のベンチャーによって違ってくるのではないでしょうか。37signals などはいかにも「クリエイティブな仕事をする会社」という雰囲気ですから、私生活も充実していないと良い仕事はできない、という議論が成り立つのでしょう。しかし(善し悪しは別にして)週7日休まず働き通し、ではないと生き残れない状況の会社もあります。ワーカホリックを雇うかどうか、そして雇われたワーカホリックが真価を発揮するかどうかは、個々の会社で違ってくるはずです。

従って重要なのは、「私生活を犠牲にせよ」「いやするな」という一般論を唱えることではなく、それが会社と、個人の人生の両面でプラスになっているかどうかを考えることだと思います。ただ一般的に言って、ベンチャー企業では不安定な状況に置かれる可能性が高いのは事実ですから、「ベンチャー企業では」という前提の下では「仕事を優先してくれる人物を雇うべき」という主張の方が説得力を持つように感じますが。ただ常に社員に犠牲を強いるような会社は、早晩立ち行かなくなってしまうでしょうけどね。

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