オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

YouTube 上の出産ビデオ――是か非か?

»

YouTube に出産のシーンを投稿する。「そんなのあり得ない!」と思われるかもしれませんが、実際に数多くの出産ビデオがアップされ、そこから貴重な知識を手にする人々が存在しているそうです:

Lights, Camera, Contraction! (New York Times)

「YouTube 上の出産ビデオ」という現象と、その是非について。決して興味本位に語られているものではなく、賛否両論の意見、そして病院関係者からのコメントが紹介されており、非常に考えさせられる内容になっています。以下に内容を簡単にまとめておきましょう:

  • YouTube 上で出産シーンを公開するという例が増えている。YouTube では通常、裸体は御法度だが、このケースでは教育的であるとして削除は行われていない。(※ここではあえてエンベッドなどをしませんが、YouTube 上で"child birth"というキーワードで検索すると多くの動画がヒットします。)
  • それに伴い、出産ビデオを参考にするカップルも増えている。極端な例だが、YouTube を参考にしながら実際に(病院には行かずに)出産するという夫婦も登場した。
  • 「より多くの情報を手にすれば、より良い質問ができるようになる」と歓迎する医療関係者のコメント。これまでも例えば「母親教室」などのような機会に見ることができた映像だが、ネットでいつでも見れるようになった意義は大きい。
  • 一方で「そもそもネットで公開してもよいものなのか」といった批判も少なくない。教育を目的にしていたつもりが、逆に見た人を怖がらせてしまうという恐れも(特に通常では少ない難産のようなケースがアップされてしまう、といった事態)。
  • またビデオに興味半分のコメントが付き、投稿者や閲覧者が傷ついてしまうというリスクもある。

以下の【関連動画】でもまとめましたが、以前から YouTube が百科事典的な存在になりつつあったり、ネットを活用して性教育を行ったりといった状況が生まれていました。今回の「YouTube 上の出産ビデオ」という話も、この流れの延長線上にあるものでしょう。ただし今回はお医者さんではなく一般人が投稿するものであること、また内容が(タブーではないにせよ)一般には目に触れられるべきでないと見なされる領域にあることから、様々な議論を呼ぶ結果となっています。

僕も4年前、娘が生まれるという経験をしました(あたふたするばかりで、決して頼れるダンナさんというわけではなかったのですが……)。当時 YouTube で動画が見れていたら、恐らく参考にしていたと思います。例えば娘が生まれた瞬間、頭が七福神の福禄寿様のように細長くてビックリしてしまったのですが、お医者さんに「細い産道を通ってくるのでこうなることもあるんですよ。しばらくすると普通になります」と言われてホッとしたという経験をしました。事前にそのようなシーンを目にしていれば、慌てふためくこともなかったでしょう(ちなみに現在の娘はすっかり丸顔になりました)。

そんな経験もあるため、個人的には「YouTube に出産ビデオ」という状況にはプラスの側面があると考えます。しかしリスクがあるのは事実ですし、あらゆる人が自由にアクセスできる環境(※一応 YouTube では、こうしたビデオを視聴する際に年齢確認が入るのですが、ユーザー登録の際に偽ってしまえばスルーできてしまいます)にそれを置くべきか、という点については議論が必要でしょう。例えばSNSのような出産コミュニティを設け、その会員に対してだけ公開するといった手段が取れると思います。そうした方法であれば、興味半分や煽りのコメントで関係者が傷つくといった事態も避けられるでしょう。

いずれにせよ、これまで手に入れるのが難しかった情報が、それを必要とする人々の手に渡りやすくなっているというのは歓迎すべき状況ではないでしょうか。それがより問題の少ない方法で行われるよう、仕組みや文化の発展が進んで欲しいと思います。

【関連記事】

YouTube が(検索サービスとして)Google を超える日
教育メディアとしてのケータイ小説
性教育ポッドキャスト

【○年前の今日の記事】

CIA版ウィキペディア"Intellipedia"、順調に稼働中 (2008年6月12日)
年金アウトソース (2007年6月12日)
ワールドカップ関連グッズ? (2006年6月12日)

Comment(0)