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SpaceX上場の答え合わせ ─ Fable 5の予測は当たったか、そしてAnthropic・OpenAIの上場ラッシュへ

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SpaceX(SPCX)の上場後株価推移:6/12 $135上場→6/16 $225→6/23 $147→6/30 $164
SpaceX(SPCX)上場後の株価推移(報道ベース)。クリックで拡大。

7月になりました。というわけで、答え合わせの時間です。

先月、私は「Anthropicの最新モデル Fable 5 に『SpaceX株は買い?』と聞いてみた」という記事を書きました。結論として私自身はIPOへの応募を見送ったのですが、上場から3週間あまり、株価は実際どう動いたのか。Fable 5の読みは当たったのか。そして、いよいよ現実味を帯びてきたOpenAI・Anthropicの上場もあわせて、答え合わせをしておきます。(念のため:以下は投資助言ではありません。数字はすべて報道ベース、私はただの傍観者です)

おさらい:Fable 5は何と言っていたか

前回の記事で、私はFable 5に「SpaceX株は買いか?」とぶつけました。Fableは「買いとも売りとも言わない」姿勢を貫きつつ、4つのシナリオに確率を置いてきました。

  • A:初日急騰 → 数週間は高値維持(確度40〜50%)
  • B:初日は堅調だが6月末〜夏に調整(確度30%。6/30の第1弾ロックアップ解除による売り圧力)
  • C:初日から伸び悩み(確度15%。PSR約95倍という極端な評価)
  • D:イベントドリブンの急変動(5〜10%。Starship失敗やマスク氏の言動)

私はSNSでも「初日急騰でお祭り(A)/初日高→数週間後にズルズル(B)/まさかの公開価格割れ(C)、どれ?」と読者にクイズを出していました。さて、現実は----。

実際の株価推移(6/12上場〜6/30)

報道(TradingViewNBCAl Jazeera ほか)を時系列で並べると、こうです。

  • 6/12:公開価格 $135 で上場。調達額 約750億ドル、時価総額 約1.75兆ドルで史上最大の新規上場(ティッカー SPCX/Nasdaq)。
  • 6/16:$225.64 の上場来高値。公開価格からわずか数日で +67%。完全に「お祭り」です。
  • 6/23:$147 前後まで急落。約6,000億ドル規模の市場全体の売りに巻き込まれ、上場来安値に。報道では取引時間中に一時 公開価格すれすれまで売られ、その後反発した、とされています。
  • 6/30:$164.19。高値からは大きく下げたものの、公開価格 $135 は(終値ベースでは)割り込まずに踏みとどまり。
  • そして7/7 から Nasdaq-100 入り(7/6 引け後に組み入れ)。指数連動ファンドのリバランス需要が新たに発生します。

答え合わせ:Fableの読みは当たったか

整理すると、現実に起きたのは「A(初日急騰でお祭り)→ B(その後しっかり調整)」の合わせ技でした。

  • A(急騰・お祭り):◎ 当たり。数日で+67%は完全にお祭り。
  • B(その後の調整):◎ 当たり。高値から3割超下げ、6月末の調整局面も的中。$600bn規模の売り=D(イベントドリブン)の要素も混じりました。
  • C(公開価格割れ):✕ ほぼ外れ。一時すれすれはあったものの、終値ベースでは $135 を維持。

つまりFable 5が最有力に置いたA(40〜50%)と、次点のB(30%)が、そのまま順番に起きた。確率配分はかなり的確だったと言っていいと思います。そして何より、「買いとも売りとも言わない」と判断を預けなかったFableの慎重さ----この乱高下を見ると、あれが一番誠実な回答だったわけです。AIに「で、買いなの?」と詰め寄っても、こういう相場では断言しないのが正解。これは前回の記事のテーマそのものでした。

で、肝心の私はどうだったか。IPO応募を見送ったので、$135で買って$225で売る「お祭り」には乗り損ねました。正直、ちょっと悔しい。でも、その後の$147への急落で眠れぬ夜を過ごすこともなかった。お祭りの熱と、夜ぐっすり眠れる安心。私は後者を取った、ということにしておきます(負け惜しみ半分です)。

そもそもSpaceXは「ロケット株」ではなく「AIコングロマリット」だった

ここからが、AI好き・計測好きとしての本題です。多くの人が「SpaceX=ロケットと衛星の会社」と思って買っていますが、実態はもう少し複雑です。SpaceXは2026年2月、イーロン・マスク氏のAI企業 xAI を全株式取得で買収し(SpaceXを1兆ドル、xAIを2,500億ドルと評価)、5月にはxAIを独立企業として解散、「SpaceXAI」という自社のAI部門に統合してしまいました(出典:Futurum ほか)。

つまり今のSpaceXは、AIモデル「Grok」+ロケット+Starlink(衛星通信)+データセンターを垂直統合した存在。さらにマスク氏は、最大100万機のAI衛星による軌道上AIデータセンター構想「Starmind」まで打ち上げています(デモは2027年後半、商用は2028年目標)。S-1によればAIセグメントはすでに売上の約17%。SpaceXのIPOは、実は"AI銘柄"への賭けでもあったわけです。ロケットの会社の株が乱高下した、という話に見えて、その裏にはAIの覇権争いがしっかり絡んでいる。ここが今回いちばん面白いポイントだと思います。

上場ラッシュは続く:Anthropicは10月、OpenAIは2027年?

そして、AI上場ラッシュの本番はこれからです。私がいつも使っている2社が、相次いで公開市場の扉を叩いています(出典:INDmoneyFutureSearch ほか)。

  • Anthropic(Claude / Fable 5 を作っている会社):6月1日にS-1ドラフトを提出。直近は$965B(約145兆円)の評価額で、10月のNasdaq上場を狙う。実現すれば史上初の「時価総額1兆ドルでの上場」になるかもしれません。しかも報道ではランレート売上 約440億ドル、2026年Q2に初の営業黒字(約5.6億ドル)の見込みと、数字も力強い。皮肉なことに、今回SpaceXの株価を冷静に分析してくれたFable 5を作った会社が、次の主役候補です。
  • OpenAI(ChatGPTの会社):6月9日に秘密裏にS-1を提出。評価額は約$920Bまで膨らんだものの、上場は「まだ先」=2027年寄りとの観測(Bloomberg)。アルトマン氏は「1兆ドルの上場価格」を譲らず、キャッシュフロー黒字化は2030年目標とされます。慎重というか、強気というか。

報道ベースで、SpaceX・OpenAI・Anthropicの3社だけで、狙う時価総額の合計は約3.6兆ドル。少し前まで「未上場のまま巨大化するスタートアップ」の代表格だった顔ぶれが、いよいよ公開市場で値段をつけられる時代になりました。

SpaceXは「AIの大家さん」でもある ── ここから私の仮説

もうひとつ、見逃せない動きがあります。xAI買収で手に入れたメンフィスの巨大データセンター群「Colossus」を使って、SpaceXは自社のGPU計算資源を他のAI企業に"貸し出す"商売を始めているのです(出典:CNBC ほか)。

  • Google:SpaceXに月9.2億ドル(約1,400億円)を支払い、約11万基のNvidia GPUを利用(2026年10月〜2029年6月)。
  • Anthropic:Colossus 1の計算資源をまるごと(22万基超のGPU・300MW)借り上げ、総額約450億ドル規模(〜2029年半ば)。
  • Reflection AI:7/1から月1.5億ドル、最大約63億ドル。

面白いのは、今回SpaceX株を冷静に分析してくれたFable 5を作るAnthropicが、そのSpaceXのGPUを借りて動いているという入れ子構造です。AIの覇権争いは、モデルだけでなく、その下の"計算資源(コンピュート)"の取り合いでもある。SpaceXは、ロケットの会社でもAIモデルの会社でもあり、いまや「AIの大家さん(コンピュート・ランドロード)」でもあるわけです。

ところで、足元では逆の動きもあります。大企業ほど生成AIの活用は進んでいますが、エージェントがトークンを溶かしすぎて、コストがとんでもないことになっている。「気づいたら今月のAPI料金が......」と、利用を一旦絞る動きすら出始めています。AIは賢くなるほど、よく食べる。電気代ならぬ"トークン代"が、経営の議題に上がる時代です。

さて、ここからは完全に私の個人的な仮説です。SpaceXがこれだけのAI計算資源を押さえた理由のひとつは、社内の生成AI活用を"フルMAX"で回すためではないか、と睨んでいます。ロケットの設計、シミュレーション、テスト、製造ラインの最適化、衛星運用、そして事業の計画・企画----これらを24時間休みなく、何百ものAIエージェントが並行して回す会社。人間が寝ている間も、開発も検証も事業計画も止まらない。トークン代を気にせず"フルMAX"で使い倒せる会社の成長スピードは、とんでもないことになるはずです。自前で世界最大級のGPUを持つ会社が、それを社内に全振りしたら----想像するだけで、ちょっとゾッとします。

ただ、これには真逆の読み方もできます。「他社に貸し出せる=自社の利用がひと段落して、計算資源に余裕ができた」というサインかもしれない。フルMAXで使い倒している最中なら、Googleにまるごと貸す余裕などないはずですから。社内利用が一巡したのか、それとも貸し出しでIPO後の収益を厚くしにいっているのか。決算と設備投資の数字を追えば見えてくるはずで、私が注目しているポイントです。

先週のClaude障害で痛感した、「一神教」のリスク

話は変わって、もう少し足元の、私たちユーザー側の話を。先週、AnthropicのClaudeで障害がありました(6月は「12日で10回目の障害」と報じられるほど不安定な月でした)。需要が爆発的に伸びてインフラが追いついていない、というのが背景のようです。

「AIが落ちたくらいで」と思うかもしれませんが、Claudeに業務を依存している人にとっては一大事です。コードも書けない、資料も作れない、エージェントも動かない。仕事がまるごと止まる。 私自身どっぷり使っているので、障害のたびに「ああ、これはもうインフラだな」と痛感します。電気や回線が止まるのと同じ感覚です。

ここで効いてくるのが、前々から私が言っている話です。ひとつのフロンティアモデルに頼りすぎるのは、リスクが大きい。 どれだけ賢くても、それが単一障害点(シングルポイント・オブ・フェイラー)になれば、落ちた瞬間に全部止まる。各社が急成長でインフラを軋ませている今はなおさらです。では、どう備えるか。私が現実解だと思うのは、こんな組み合わせです。

  • オープンなLLMを自社向けにカスタマイズして持っておく:外部APIが落ちても、最低限は自前で回せる足場を作る。
  • Amazon Bedrock のような基盤で複数のLLMを束ねる:Claudeが落ちたら別モデルへ自動フェイルオーバー。1社に人質を取られない構成にする。
  • つまり、「賢さ」だけでなく「冗長性」で選ぶ前回のChatGPT広告の記事で書いた"記憶の持ち運び"とも通じますが、これからのAI活用は特定ベンダーにロックインされない設計がますます効いてきます。

皮肉なもので、その「複数モデルを束ねる」基盤の土台にあるGPUを、巡り巡ってSpaceXのようなコンピュートの大家さんが握っている。落ちないAIを作るための計算資源すら、寡占されつつある----という、なかなか味わい深い構図です。

次の答え合わせは、秋に

今回のSpaceXの乱高下は、これから来るAI上場ラッシュの予行演習のように見えます。期待先行で急騰し、現実(評価額・ロックアップ・黒字化時期)を突きつけられて調整する----この波は、Anthropicにも、いずれのOpenAIにも、たぶん形を変えてやってくる。

個人的に気になるのは、Anthropicが本当に10月に「1兆ドルでの上場」という前人未到をやってのけるのか。そのときまた、私はFable 5に「これは買い?」と聞いて、答え合わせ記事を書くと思います。自分が日々使い倒しているAIを作る会社の株を、そのAI自身に評価させる----なんとも奇妙で、面白い時代です。

というわけで、次の答え合わせは秋に。今回も私は応募しないと思いますがw。あれこれ予想するより、答え合わせをした方が早い。投資はくれぐれも自己責任で。

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