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Amazonで買った256GBのマイクロSDが実容量8GBだった話 ― f3で暴いた容量偽装の手口と返金までの全記録

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一昨日、「ダイソーからマイクロSDカードが消えた」という記事を書いたばかりです。あの記事で私は、Aliexpressの怪しい激安SDカードについて「容量偽装や速度詐欺があるから気をつけろ」と偉そうに書きました。裏取りもちゃんとして、H2testwで検証しろとまで書きました。

そのAliexpressでは、実は私もいくつか買ったことがあります。多少「これは怪しいな」と思う挙動のものはありましたが、致命的に酷い詐欺品を掴んだことはありませんでした。ところが今回、生まれて初めて完全な詐欺商品を掴まされたのは、まさかのAmazon.co.jpでした。しかも記事を書いた直後です。皮肉が効きすぎていて、自分でも笑ってしまいました。今日はその顛末を、検証の一部始終とともに記録しておきます。

256GBのはずが、実容量8GB

7月19日、Amazon.co.jpで「TIOAKOLK」というAmazon.co.jp限定を謳うブランドの256GB microSDXCカードを購入しました。パッケージ上のスペックはUHS-I U3 V30 A1、Full HD&4K UHD動画対応、超高速データ転送対応という、一見すると何の変哲もない立派な仕様書きです。

結論から言うと、実際の物理容量は約8GB。256GBの32分の1です。書き込み速度は約5MB/s、V30が保証する最低30MB/sの6分の1程度で、体感としては15年以上前のClass4カード並み。スペック表記は上から下まで、ほぼすべて虚偽でした。検証を終えた時点で商品ページはすでに「在庫切れ」となって新規購入不可、レビュー評価も星2.9まで下落していました。これは、偽装品を大量に売り抜けたら評判が悪化する前にページごと畳んで逃げる、「売り逃げ」の典型的なパターンです。

容量偽装の「仕掛け」を暴く4段階の検証

ここからが本題です。容量偽装カードは、ただ容量を大きく表示しているだけではありません。中のコントローラー自体に、OSを騙すための細工がされています。今回、macOSのターミナルを使って、その仕掛けを実際に崩壊させるところまで検証できたので、順を追って紹介します。

フェーズ①:最初のテストで感じた違和感
購入直後、容量チェックのために全領域への書き込みテストを実行しました。すると、約12時間という異常な長さをかけて「233GBまで書き込めた」ように見えたのです。一見「ちゃんと入ってるじゃないか」と思いたくなりますが、これこそが偽装カードの罠です。物理的な限界(この場合8GB)を超えたところで、古いデータを黙って上書きし、また先頭に戻ってループする。つまり、8GB分の記録領域を使い回して「233GB書き込めたように見せかけている」だけなんです。前回の記事でも触れた「容量を超えた分は新しいデータが古いデータを上書きしていく」という仕組みを、自分の手で目の当たりにした形です。

フェーズ②:再フォーマットで、仕掛けが壊れた
不審に思い、ディスクユーティリティで再フォーマットを実行。すると、カードのコントローラーに仕込まれていた「ループしてOSを騙す改ざん目次(ファイルシステム上の偽装データ)」がリセットされ、カード本来の物理的な限界がそのまま露呈する状態になりました。偽装の仮面が、フォーマット一発で剥がれ落ちたわけです。

フェーズ③:f3writeが8GBでクラッシュした
ここで使ったのが「f3(Fight Flash Fraud)」というオープンソースの検証ツールです。名前の通り「フラッシュメモリの不正と戦う」ためのツールで、1GB単位のテストファイルを実際に書き込み続け、本当にその容量分のデータが記録できるかを力技で確かめます。スリープでテストが中断しないよう`caffeinate`コマンドも併用し、`f3write`を実行。すると、1GBのファイルを8個書き込んだ直後、9個目を作成しようとした瞬間にDevice not configuredというエラーが出て、処理が強制終了しました。物理容量8GBの壁にぶつかった瞬間、粗悪なコントローラーが処理しきれずパニックを起こし、Macとの接続を自ら遮断したのです。これで物理容量8GBが確定。この間の平均書き込み速度も約4.9MB/sで、V30表記が虚偽であることも同時に確定しました。

フェーズ④:書き込めた8GBすら、まともに保持できていなかった
最後に`f3read`で、書き込めた8GB分のデータが正常に保持されているかを確認しました。結果は、正常なデータ(Data OK)が8.23GBに対し、消失(Data LOST)が662.45MB。内訳は破損(Corrupted)448.86MB、上書き(Overwritten)213.59MB。最初の1GBファイルの読み込み段階から、約35万セクターの破損と約10万セクターの消失が確認されました。つまりこのチップは、「容量を偽装している」だけでなく、偽装後の実容量ですらまともにデータを保持できない、記録媒体として根本的に失格な不良チップだったということです。廃材と呼んで差し支えないレベルでした。

「12時間かけて233GB書き込めた」は、むしろ危険信号だった

今回の一件で一番の学びは、実はフェーズ①でした。「時間はかかったけど、ちゃんと容量分書き込めた」という体験は、普通に考えれば安心材料に見えます。でも容量偽装カードの世界では、これこそが偽装の証拠そのものなんです。正規品なら256GBの書き込みにそこまで異常な時間はかかりませんし、途中でエラーも起きません。「遅いけど、とりあえず動いている」ように見える挙動そのものが、コントローラーが裏で不正なループ処理をしているサインだった、ということです。皆さんも、もし新しく買ったストレージが「書き込みがやたら遅いけど完走はする」という挙動を見せたら、まずそこを疑ってください。

これはAmazon全体の構造問題でもあるらしい

「たまたま運が悪かっただけ」で片付けたいところですが、調べてみるとどうも規模の大きい話のようです。日本経済新聞が2026年7月9日に報じた調査によると、Amazonの日本・米国サイトでおすすめ表示されているUSBメモリ約200商品を調べたところ、約2割(5商品に1つ)でレビュー欄に容量偽装の複数報告があったとのこと。この調査のきっかけになったのが、自衛隊が容量偽装された中国製の、しかもウイルス感染済みのUSBメモリを使用していたという内部資料の存在だったというから、笑い事では済みません。防衛省がネットショッピング経由でそんなものを掴まされる時代に、私が256GBのSDカードで引っかかったのは、規模は違えど同じ土俵の話なんだと思います。Amazonの出品者審査の甘さが、この種の詐欺品を延命させている構造は、SDカードもUSBメモリも変わらないということでしょう。

自分でも検証できます:f3の使い方

今回使った`f3`は無料のオープンソースツールで、Homebrewが入っているMacならbrew install f3で一発で入ります(Windowsなら同種のGUIツール「H2testw」が定番です)。使い方はシンプルで、対象のカードをマウントした状態で以下を打つだけです。

f3write /Volumes/カード名/
f3read /Volumes/カード名/

ただし要注意なのが、このテストはカード内の全データを上書きするので、必ず買った直後、何も保存していない状態で実行してください。長時間かかる処理なので、Macがスリープしないようcaffeinate -iを頭につけて実行するのもおすすめです(今回私もこれで救われました)。前回の記事で紹介した「H2testw」もWindows環境では同じ役割を果たしますが、`f3`はターミナルから直接叩けるぶん、今回のような「途中でエラーを起こして強制終了する」という決定的な証拠までそのままログに残せるのが強みだと感じました。

返金は、証拠さえあれば意外とスムーズ

幸い、今回の一件は結末がはっきりしています。ターミナルに残った「8GB時点でのクラッシュログ(Device not configured)」と「実データ範囲内での激しいデータ破損ログ(Data LOST)」は、加工しようのない決定的な証拠です。このターミナル画面をスクリーンショットで確保し、Amazonのカスタマーサポート(チャット)に「不良品・虚偽説明の偽装品」として提示すれば、全額返金と着払いでの返品手続きに進めます。感覚的な「遅い気がする」ではなく、コマンド一つで再現できる客観的なログを持って交渉できるのは、思った以上に心強いです。

追記:Xに投稿したら、"いつもの"定型文が飛んできた

この検証結果は、記録も兼ねてXにも投稿しておきました。ターミナルのログと、実際に届いた商品パッケージの写真つきです。

投稿から11時間後、返信がついていました。差出人はAmazon公式のカスタマーサポートアカウント(@AmazonHelp)。「Amazonです。ご投稿を拝見いたしました。すでにお手続き済みの場合には恐縮ですが、商品に問題があった場合はリンクをご参照の上、返品のお手続きをお願いいたします。(中略)出品者発送の商品である場合は、出品者にご連絡いただけますでしょうか。」という、いかにも定型文然とした内容でした。

これ、実は今回が初めてではありません。過去にAmazonの商品や配送で困りごとをポストすると、大体同じような調子の返信が同じアカウントから飛んできます。おそらく「Amazon」「詐欺」のような単語をエゴサーチで拾って、機械的にリンク付きの定型文を返す運用になっているんだと思います。もちろん、何もしないよりはマシですし、実際に返品導線への案内にはなっています。ただ、今回の本質的な問題は「私が返品できるかどうか」ではなく、「容量を32倍偽装した商品が、そもそもなぜAmazon.co.jp限定ブランドとして堂々と売られていたのか」という出品者審査の話です。エゴサ担当の定型文が秒速で飛んでくる体制があるなら、その労力の一部を出品時のスペック検証に回してほしいところですが、まあ、これも前段で触れた「約2割に容量偽装の複数報告」という日経の調査結果を見る限り、個別のクレーム対応でどうにかなる規模の話ではなさそうです。

前回の記事では「品薄・高騰局面は焦った買い手が安さに飛びつきやすいタイミングで、詐欺師にとってはボーナスステージ」と書きました。まさか自分がその数日後に、しかもAliexpressではなくAmazon本体で引っかかるとは思っていませんでした。安いストレージを買うときは、プラットフォームの看板を信用するのではなく、届いたらまず自分の手でf3を回す。今回、身をもってその大切さを学びました。

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