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改正電通法 ( 電気通信事業法 ) 外部送信規律 対応 騒動 とは 何だったのか?

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本日、2023年6月16日に、略して改正電通法、詳しく言うと昨年6月に国会で審議されて成立した法律改正案に基づいて、電気通信事業法を改正したものが施行されました。

▼改正電通法および外部送信規律についてはこちらをご参照ください。
総務省トップ > 政策 > 情報通信(ICT政策) > 電気通信政策の推進 > 電気通信消費者情報コーナー >
自分に関する情報が第三者に送信される場合、 自身で確認できるようになります。(外部送信規律)

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/gaibusoushin_kiritsu.html


一般の方は全くご存じないかもしれませんが、改正電通法では「外部送信規律」という新しい規律、つまり今までなかったルールがインターネットで事業を行うほとんどの事業者、会社、個人に課せられることになりました。審議時や成立時においてはGDPRやCCPAなどに似た、日本版クッキー規制法ではないかと騒がれましたが、その後、所管の総務省側が対象は電気通信事業者に限るし、必ずしもクッキーを規制する法律ではないということを説明し、騒ぎは沈静化したように思えました。

しかし、実際の法律と法律を運用するための指針となるガイドライン(省令)では、届出申請不要の3号事業者という定義がされ、先に述べたようにインターネットで事業を行う事業者のほとんどが対象に入るような形になりました。また、クッキーだけでなくアプリなども含めた全ての通信に課せられるという、むしろクッキーに限る法律としてくれた方がまだマシという内容になってしまいました。

当然、現場は大混乱で有識者や弁護士に相談するわけですが、所管の総務省側ですら細かいことに答えられず。

なぜならば、当のお役人たちのほとんどはアドテクやデジタルマーケティングの現場のことなどそこまで詳しくないわけですね。従来の航空法を元に規制がどんどん強まっていったドローン業界と似たようなものです。機体登録や許可申請を受け付ける側は実はドローンにそこまで詳しくない人がやってたりします。そして、改正法成立を受けて、法律を施行運用するための細則を決めた政令(省令)であるガイドライン、そしてそれでも運用できないのでガイドラインの解説まで必要となったのですが、施行の約1か月前までその辺の内容が固まらない状態だったのです。

とはいえ、大混乱した現場はごくごく一部の感度の高い大企業や一部の業界団体の人たち、さらに言うとそういった企業の中でも法務部門やリスクマネジメントの方くらいで、施行された今でも多くの企業や一般の方は何それ?という感じと思います。

ただ、そのごくごく一部の人たちにとっては、法律改正によって生じる新しい規制の内容を知っているがために対応をしなくてはいけないというタスクも生まれるわけです。そのタスクをこなすための労力は企業規模に比例して大変になるわけで、一部界隈では本当にコレ対応できるの??ってまさに大騒動になっていました。


そんなこんなで、施行を迎えた今日、あれだけ一部界隈で騒いでいたのに結局、真面目に対応した企業さんのサイトの片隅に外部送信情報に関する一覧が出来たのと、日経さんやIT系のメディアで少し記事になった以外は、誰も外部送信規律という単語も知らず、世の中の人々の生活は昨日と何も変わっていないわけです。

さらに言うと、真面目に対応した企業さんにお勤めの方も関係者を除き、ほとんどの人は知らないでしょうし、対応した企業さんも外部送信規律に対応するツールを入れただけみたいなところも多いわけです。


そもそも、所管の総務省さんご自身のサイトですら、

自分に関する情報が第三者に送信される場合、 自身で確認できるようになります。

 総務省では、利用者が安心してウェブサイトやアプリを利用できるよう、透明性を高めるルールを設けました。具体的には、ウェブサイトやアプリを利用する際に、利用者の意思によらず、第三者に自身の情報が送信されている場合があります。利用者に関する情報が第三者に送信される場合に、利用者自身で確認できるようになります。


という要件を満たしておらず、第三者であるユーザーローカル(UserLocal)さんが今は管理しているnakanohito.jpに、総務省サイトに訪問する人の情報を、訪問者の同意なく送信しているわけですし、公表やオプトアウトなどの措置も行っていないわけです。

細かいことを言えば、総務省さんのサイト自体は今回の外部送信規律の対象ではないとは思いますが、上記のような内容を今回の法律改正の目的としているのであればまずは自らその規律を守るべきかと思います。

また、個人情報保護法などへの対応をコンサルしているような弁護士事務所や個人事業をやっておられるような方のサイトを見ても今回の改正電通法の外部送信規律に完全に対応できているようなサイトの方が少ないように思います。


今回の改正電気通信事業法の外部送信規律に違反したとしても、一発アウトで即検挙というわけではなく、まずは行政指導になるわけですが、そもそもその違反を誰が取り締まるのか誰が違反を判断するのか(警察?検察?総務省?総務省だとしたら窓口は?)を有識者であっても答えることは難しいと思いますし、今後もおそらくそういった状態が続くので、感度の高い事業者だけ対応し、あとはよく分からないので対応しないという状況が続くのではないかなと思います。

ただ、Google検索で「外部送信規律」と検索したときに広告に出てくるようなツールベンダーやコンサルティング会社は、引き続き、この法律をダシにツール導入や対応するためのコンサルティングを提案してくることでしょう。


なんか批判、皮肉めいた言説になってしまいましたが、私自身は、今回の法改正の目的は悪いものではないかと思います。ユーザーの情報を扱う企業の担当者のプライバシーに関する意識を向上できたとしたらそれは良いことかなと思いますので、今後も、法改正とか規律とは関係なくそのようなことに資するような活動を公私問わずしていこうと思います。



最後に宣伝となりますが、改正電気通信事業法や外部送信規律にお悩みの方はぜひ私までご相談ください。フリーランスとしてそのような方へのコンサルティングをしておりますので(笑)

ご連絡はこちらまで↓↓↓
ambit.business@ezmag.net

あと、こちらで講座もしております。
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https://www.second-academy.com/lecture/TUS14475.html

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