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あれこれ考えるよりも作ってしまった方が早いんじゃね?と思う、ギークなサラリーマンのアジャイルな日々。

精巣腫瘍患者から見たWELQの記事の問題点

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とうとう全記事の非公開という事態に至ったDeNAさんのWELQ。

DeNAさんに知り合いもいるし、私もコンテンツマーケティングやWEBのマネタイズの仕事をしているので、その苦労はわかるし、同じ業界で頑張っている人たちを矢面に立たせたくはないけど、一個人、一患者だった立場から見るとやはり今回の問題は酷い。

私は2007年10月に精巣腫瘍というガンに罹った。

最初に受診した泌尿器科の医師に副睾丸炎と誤診され、2~3か月抗生物質だけを処方され続けた。そのまま放置していれば、リンパ節、肺、脳へと転移して命を落とすか、辛い抗がん剤治療で生殖能力が無くなっていたかもしれない。

そんな私を救ってくれたのが、同じ病気と闘ったがんサバイバーの先輩が当時mixiに作っていた「精巣腫瘍 戦友会」というコミュニティだ。症状とそのとき掛かっていた医師の診療内容を相談したところ、すぐに信頼のおけるセカンドオピニオンに掛かることを勧めてくれた。そのお陰で、次に受診したクリニックでは正しい診療を受けることができ、確定診断を待つことなく特定機能病院への紹介状を書いてもらい、1週間も経たないうちに検査入院、確定診断、手術、退院まで事が進んだのだ。

今、「精巣腫瘍 症状」と検索するとWELQの「睾丸のしこりは精巣腫瘍の可能性も!痛みや腫れがあったら要注意!不妊の原因にもなる疾患の検査法や治療法とは?」という記事が出てくる。

google_welq.jpg

※該当記事のキャッシュ(2016/11/30時点)
https://webcache.googleusercontent.com/search...

タイトルからして、検索エンジンで検索されるようなワードを散りばめた「だけ」のユーザー(患者)本位でないタイトリングだ。

恐らくいろいろなサイトの文章を寄せ集めてリライトしただけだろうこの記事本文の中にも書いてあるように、精巣腫瘍の場合は「痛み」等の自覚症状はほとんどない。そう、「痛み」が無い方が要注意なのだ。普段はうずらのゆで卵くらいの硬さの睾丸が気持ち硬くなったり、左右のバランスが今までと違う(両方の睾丸に精巣腫瘍が"同時"に発生することは少ない)くらいの状態でも気になるなら"精巣腫瘍の診断経験"がある泌尿器科でエコー(超音波診断)をとってもらった方がいいかもしれない。※硬さや大きさには個人差があると思うので、自分の普段の硬さ、大きさを認識しておくと良い。

"精巣腫瘍の診断経験"がある泌尿器科と書いたのはどうしてか。日本人男性の場合10万人に1~2人と言われる精巣腫瘍の場合、日本人口の半分が男性だとして6,000万人中、患者は600~1200人ということになる。厚労省が2004年に出したデータによるとその時点での泌尿器科の医師数は約6,000人。おそらく、泌尿器科の看板を出していても精巣腫瘍を診断したことがある医師は先に挙げた数字だけを見ても多くてその1/5である。それだけ稀な病気で、診断経験も無い医師は睾丸に違和感があるという患者に対して、私が受けた診察のように、副睾丸炎だろうと安易に診断してしまってエコーも取らないということがあるのだ。私の場合は、当時ネットで調べた情報を元に精巣腫瘍の可能性は無いか?と医師に詰め寄ったのだが、それをその老齢の医師は一笑に付して棚から医学事典を取り出して、精巣腫瘍がいかに稀な病気かということを私に説明したのだ。

話が横道に逸れてしまったが、それにしてもWELQの記事はめちゃくちゃだ。

おそらく、ただ引用(コピペ)しただけだとGoogleからコピーコンテンツとされて評価を落とされる可能性があるため、文章の語尾や順番を変えたり、無理やりリライトしているため、タイポやライターの理解不足で誤った情報になっていることが多い。

たとえば、本文にもリンクがはってあるオリジナルの医療記事では、

「10万人当たりの発生率はおよそ1人で決して多くはなく、男性の全腫瘍の1%程度ですが、15~35歳の男性においては最も多い悪性腫瘍です。」

とあるのに、WELQの記事では、

「男性の全腫瘍の1%程度しか発症はみられないのですが、15~35歳の男性においては最も多い悪性腫瘍なのが精巣腫瘍です。」

とあり、別のセクションでは、以下のような記述がある。

「精巣がんは日本人がかかる率は0.1%と非常にわずかです。」

これでは、男性10万人に1人=0.001%の、100倍の千人に1人ということになる。日本人というのが男女が含まれているとしたら男性の罹患率はさらにその2倍だ。

どうして、このような間違いが発生するのか、それは内容を理解せずにリライトしているからだ。そして、上記の記述の誤りはなぜ生じたのか、それは、本文中にはリンクを張っていないが、参考にしたと思われる以下のサイトの記述をライターが読み誤っているからだ。

「精巣腫瘍による死亡が、がんで亡くなる人全体に占める割合は0.1%未満と少なく、比較的予後のよいがんの部類に入ります。」
http://ganjoho.jp/public/cancer/testis/
(c) 国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス

という記述が、ライターの理解不足で、

「精巣がんは日本人がかかる率は0.1%と非常にわずかです。予後も大変よい癌ですが、・・・」

という誤った記述になってしまった。

そして、精巣腫瘍に縁も知識もないだろうそのライターは、

「精巣腫瘍の種類」というセクションで、

1.陰嚢水腫
2.精巣がん
3.精索静脈瘤

という誤った分類をして、さらに患者を腹立たせ、症状に悩んでアクセスしてきたユーザーを混乱させる。

精巣腫瘍=精巣がん

であり、1は赤ちゃんによく見られる水が溜まって腫れる症状で腫瘍ではないし、3についても血管が詰まってできる静脈瘤は腫瘍ではない。

精巣腫瘍の分類といえば、セミノーマ、非セミノーマであり、さらにそこから細かい分類があり、高位精巣摘除術後の治療方針(経過観察/抗がん剤/放射線治療)が進行ステージとタイプによって異なってくる。

他にもいろいろと突っ込みたいところがあるが、これまであげた内容は、患者だったり、専門分野の医師だったら当たり前のことだ。そして、これから精巣腫瘍の戦友となる人たちにこのような誤った情報を安易に出すのは許せないし、そういう誤った情報をインプットされた患者が来ると医療現場も混乱するだろう。

なにより、この記事は7月14日に公開されてから、11月25日までの間に49,682viewsも見られている。1PV=1人とは限らないが、多くの悩める人々に誤った情報を与え、不安や逆に診療の機会を奪ってきたならばその罪はとても看過できるものではない。

記事の非公開が決まった今も、WELQの該当記事はGoogleの検索結果に載り続けている。今後、医療関係者等の専門家の監修を受けて再公開する記事もあるとのことだが、そもそもが寄せ集めの価値がゼロどころかマイナスの記事は監修のしようがない。できれば、WELQの記事が復活しても、その記事内容を注意深く読んでもらえるように、可能であれば本記事をシェアしてもらいたい。※念のため言うとオルタなブロガーはITmediaさんからは報酬も何ももらっていないし、1字いくらで書いているようなライターもいない。なので、SEO対策など意識しているわけもなく若干メディアパワーが落ちているかも^^;ということもあるが。。逆にとても正直なメディアかと思う。

DeNAの南場さんも旦那さんが癌に罹患したと聞く。
がん患者、その家族の想いを1,000回表示してたかだが数十円にしかならない広告収益のために踏みにじることにどういう判断をし、今後どのようにされていくのか、今後の経緯を見守りたい。

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追記:2016/12/5時点でWELQのGoogle検索結果が消滅しました。Googleが動いたんでしょうか?
詳しくは「Google八分?WELQ(ウエルク)がGoogle検索結果から消えた」をご覧ください。

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参考までに、当時mixiでつけていた日記を貼っておきますね。精巣腫瘍と診断された方、もしかしてと思う方、あくまで1個人のケースとして参考にしてください。

▼2007年10月16日 00:52
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入院
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今週の水曜日から●●●●総合病院に入院します。
木曜日に手術です。

病名は。。
あんまり大きな声では言えないので
爆笑問題の田中と似たような病気とだけ言っておきましょう
男性のみの病気で10万人に1~2人という結構マレな病気らしいです。
つまり日本の人口が1億2千万人として半分が男性とすると6千万人、
日本全国で600人~1200人くらいしかいないということですよね。

正直ショックでしたが命に別状はなさそうなので
早期発見に感謝して頑張って治療していきたいと思います。

結構深刻な病気の割には土曜日には退院できるということですので
お見舞いとかはお気持ちだけで充分です。

▼2007年10月16日 19:54
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<コメントへの返信>
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みなさん励ましの言葉ありがとうございます。
この機会に心を入れ替えて?早く元気になれるように頑張ります

みなさんもお体にはくれぐれもお気をつけくださいね。
健康第一です!!

▼2007年10月17日 12:22
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<コメントへの返信>
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みなさんありがとうございます。本当はお一人お一人にお礼をしなくてはいけないと思うのですが携帯からなので経過報告だけ。

今日の9時半に入院しました。簡単な検査をしただけでとても暇です...

▼2007年10月17日 21:45
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手術
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明日の朝一に手術することになりました。

今日は手術のための検査、説明、抗生物質の点滴などをして、もう消灯時間。明日の朝は6時起床ということでもう寝ます。おやすみなさい


▼2007年10月18日 11:52
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オペ終了
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無事オペがおわりました
まだ麻酔で下半身が動きません

今日いっぱいはベッドから降りれないし、寝返りもうてない...。ご飯も食べられないし。


いい加減暇。。

▼2007年10月18日 16:13
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<コメントへの返信>
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みなさんありがとうございます

>●●●さん
ルービックキューブは一面止まりです。看護士に笑われました

>●●●さん
下腹部左を縦に3~4cm切って、精巣上体ごと引きずり出す?みたいな感じだと思う。見てないからわからんが。
とりあえず腹膜を引っ張られて痛かったのとレーザーメスの音、臭いが不快だった...。

▼2007年10月19日 01:35
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<コメントへの返信>
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痛みで目が覚めた...
ナースコールで痛み止めGET

▼2007年10月19日 16:37
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自由の身
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朝食後に尿道カテーテルが抜け(痛!!)、午後にやっと点滴の管が外れました。これで傷口の痛み以外からは解放!

今日退院することも出来たのですが、まだ痛みが残るなかでトボトボ一人うちに帰るのも不安なので明日まで泊まることになってます。

明日の午前中に退院します。ご心配、そして励ましの言葉をいただいた方にこの場を借りまして、御礼申上げます。

▼2007年10月20日 11:53
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退院
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先程無事退院してもう家です。たった三泊四日の入院だったけどとても長く感じました。

先週近所の病院で診察を受けて2週間で検査、入院、手術とほんと目まぐるしく色々なことがあったけど、無事悪いところを取って、退院することができますた。今後は失ったものよりも与えられたものを大切に、有意義な人生を過ごしていきたいものです。

とりあえずタバコは止めようかな、、

▼2007年10月30日 01:32
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一病息災
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【一病息災】
病気もなく健康な人よりも、一つぐらい持病があるほうが健康に気を配り、かえって長生きするということ。

本日、病院に行ってきました。
先日の手術で取ったものの病理検査結果を聞くために。

9割がた覚悟していましたが、さくっと「癌」でしたと言われると
ちょっと拍子抜けしますね。

ドラマとか映画だったら、まずは家族に告知されて、、

俺:「親父、本当のこと言ってくれよ、、、俺、、、やっぱ」
父:「な、何を言うんだ、先生も言ってたろ、良性だったって!」
俺:「もう、いいんだ、わかっているんだ、、、」
父:「・・・」

みたいなやり取りの後で、さらにCMを2個くらい挟んで
やっと本人に告知だよねぇ、やっぱり

え、僕、癌?
ガーーーーーーーーン!

なんて冗談も言えるくらい今は健康なので何の心配も要りませんが。。

冗談はさておき、今回、早期発見、早期摘出、転移無しということで
一昔前だったら、予防的な放射線治療を行うことがあったそうですが
たとえ転移したとしても抗癌剤などがとても良く効く癌ということで
最近では放射線治療の患者の負担と転移のリスクを考慮したうえで
予防的な治療はせず経過観察を選択することが多いということなので
今後は毎月通院して採血やCTで転移を確認していくことになります

まあ、元来あまり健康には気を使っていないほうだったので、
逆に毎月、病院で精密な検査をしてもらえるというのは
むしろ良いことだ、それこそ一病息災だと前向きに考えて
日々の息災に感謝しつつ今後の生活を送っていきたいと思います

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