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ITの技術や方向性考え方について別の選択肢を追求します

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2008年10月1日の投稿

2008年10月2日 »

9月30日、【第6回 ITmedia エグゼクティブ セミナー】に参加しました。ブロガーとして参加して、感じたことを書いて欲しい、とのことだったので、今回と次回、二回に分けてこのセミナーのブログを書こうと思っています。

ガートナージャパンの日高社長は、あまり講演をされないそうです。ご自身の話では、講演に登壇されて話すより、多くの人と話をしたいからだ、ということです。もちろん、 ガートナーには、多くの人材がいて、社長自ら講演して回る必要もない、ということもあるでしょう。

ですので、この『ITmedia エグゼクティブ セミナー』は、普段なかなか聞けない講演が聴ける、『お値打ち』セミナーということも言えます。もちろん、ITmedia エグゼクティブ会員限定のセミナーなので、ITmedia エグゼクティブの会員にならなければなりません。ただし、このITmedia エグゼクティブは、経営者の立場の方々のコミュニティという狙いなので、会員になるには、一定の基準があります。

■□■
IT投資の戦略的重要性 - 「守り」か「攻め」か

日高氏の講演タイトルは『 ICT の流れと経営の変化 - CIO の優先順位を中心に』であった。ガートナー社の全世界に渡るCEO / CIO とのコネクションと、それを元にした精緻な調査結果を挙げて頂いた。IT投資についての質問。CEOが期待するITとは。CIOのIT戦略に於ける優先順 位、テクノロジの優先順位など、全世界の最新の動向と日本の動向の比較をされた。

全世界のCEO / CIO が、自社のビジネスプロセスの改善や企業コストの統制等、社内の改革については、すでに成果を出したか、実施を始めたと考えている。これから(2008年以降)は、新たなビ ジネスへの戦略事業力の展開、インテリジェンス利用の拡大などの優先順位を上げている。企業の独自性を高めることを ITに期待しているのだ。

これは、IBM が隔年で行っている、『IBM Global CEO Study 2008』の結果とまったく一致している。経営変化を如何に迅速に行っていくか、新たなビジネスへの戦略事業力の展開するか、そして、それに対して重要な 手段となるのが、BPM (Business Process Management) なのである。この件については、私は今年7月の私のブログに記載した。BPM が重要である、というのは、IBM の調査でも、ガートナーの調査でも明白になっている、世界的な潮流だということがいえる。

さて、ここで、世界と日本を比較した時に、際だった違いが見られる。世界の CEO / CIO は IT 投資について、新規顧客の開拓、新しい商品やサービスの提供など、IT を『攻め』の武器として使っている。特に、元気な企業、調査対象の約 20% は、自社独自の IT を追求しているのだ。

日本に比べて、世界の CEO / CIO が、数年前からシステム化、ビジネス・プロセスの改善により積極的であったことについて、日高氏は、面白い考えを話された。彼のアメリカ駐在経験では、たとえば、来るは ずの電車が来ない、とか、電話を購入したのに電話番号がない、とか、勝手に自分の銀行口座にお金が間違って振り込まれるなど、日本では当たり前に出来るこ とが、他の国では出来ない。だから、システム化し、多重化してなんとかプロセスが確実に稼働できるようにするのだ、というものだ。

それは、当たっているような気がする。逆に日本の良さは、思いやりがあり、作業は確実にきちんと出来、細かく改善してくれる。日本では、新規顧客の 開拓よりも既存顧客を大切にする。さらには、ITにおいては、目の前の事を詳細に調べなければ前に進まない。つまり、ビジョンなどに飛びつくことが少ない、とい うのだ。

しかしその為か、IT 戦略の優先順位として、業務の効率化やコスト削減など、『守り』の戦略に重きを置く特徴がある。しかも、そういった『守り』の IT 戦略を極端に取っているのは、世界で日本だけだ。一番『攻め』に出ているのはアジア太平洋、次にヨーロッパ、北米と続く。

アメリカの経済がこの数年下がる傾向にあったためか、攻めの度合いが低く、結果、今日のような凋落が発生してしまったのだろうか。そうすると、日本はどう なるのだろう。

さらに、日本の IT 投資マインドが極めて低いという状況も発生している。これは昨年の夏頃、やはりガートナーが出した調査で、これも私が 『「IT投資マインド、日本最下位」に再度思う』というブログを書いている。

私は、この日本的な状況を、極めて危険だと思っており、なんとか打破できないものだろうか、と思っている。 『自国では通用するが他国では通用しない価値観』などというブログも書いた

しかし、日高氏の考え方は『日本は日本の流儀でやればいいんだ』というもの だ。たしかに、日本人の気質など、私が憤慨したところで、変わるわけがない。それよりも、BPM や BI、HPC などの浸透を通して、日本に於いても、ITを強力な武器にすることを推進していくべきだな、と思った。

ガートナーの調査のひとつで、たいへん特徴的であったのは、『IT戦略と経営戦略の同期が出来ている会社ほど、競争優位性がある。』つまり、強い会社は、 IT 戦略と経営戦略が合致しているのだ。この結果は、今後 IT業界が日本の企業に対して、どのような提案をしていくのか、という意味合いでも重要だ。

さらには、日本の企業は現在、グローバル化が最重要だ、と考えていることだ。世界的にはすでにグローバル化が出来ているとも言えるのだが、日本の企業では、グローバル化を優先順位第一位にしている。グローバル化は、私個人も最優先で推進したい事柄だ。

現在の、この世界の金融状況を考えると、守りに入らず、攻めの経営をしていかなければ、波に飲み込まれるかも知れない。日高氏の講演を聴きながら、鼓舞されている気持ちになった。

とおる

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現在サン・マイクロシステムズにて、様々なミドルウェア・ソフトウェアの販売推進・ビジネス開発を担当しています。旅行、食べ歩き、読書が趣味。

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