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私たちはクラウドコンピューティングに一度救われた

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クラウドコンピューティングは私たちIT産業の従事者を一度救ってくれたのかもしれません。

昨年は大変な不況でした。IT、非ITのあらゆる業界で商売が縮小したように思います。そんな中でIT業界はクラウドという道標に沿って前向きに進むことができたのではないでしょうか。

クラウドコンピューティングというビジョンがあり、またgoogleやamazonといった企業がクラウドを部分的ながらも現実のものとしてくれたことで私たちは目指す方向を見失わずに済みました。大変な不況下で、皆が目指すべき方向をバラバラに定めていたとしたら、大きな混乱と損失が生じたように思います。しかしながらクラウドの熱は国を問わず、データベース、アプリケーション、ネットワーク、ハードウェアに留まらずデータセンターのあり方から開発手法に到るまでIT産業の従事者(IT技術者のみならず)をすべて巻き込んで活発な議論が行われました。

同様のことがweb2.0の時にもあったように思います。web2.0の渦に巻き込んだ要素はクラウドほどではないかもしれませんが、webサービスを中心とした構成、コモディティ化したサーバの複数台分散稼働による高可用性とハイパフォーマンス、オープンなアーキテクチャなどはweb2.0の成熟とともに花開いていったように思います。もちろんそれ以前の積み重ねがあったことは言うまでもありませんが、各個人が温めていた技術がweb2.0という目標に向かって怒涛のように押し寄せた、そんなイメージがあります。

何かの技術や産業を育てたい時、公共事業などの形で手元に落ちてくれば言うことはありません。アメリカとソ連の宇宙開発であれ、暗号解読のコンテストであれ、そういった機会から新しいものが生まれた例は枚挙に暇がありません。しかしながらそういった状況に刺激を受けるのは直接的な関係を持つ人だけですし、巨大な計画の中で、決められたタスクに挑みます。それと異なり、ITの世界に時折訪れる流行り言葉は際限なく多くの人を感化し、自発的に考えさせ、物事に取り組ませ、はたまた全然関係ない人と人とをくっつけたりします。

クラウドコンピューティングは絵に描いた餅と言われることもあります。しかしながらITに関連する人々がアイデアと技術を持ち寄り、議論し、クラウドの実現に向かって努力するそのプロセスこそが尊いのであり、クラウドコンピューティングが定着するかどうかはまた別の問題であるのではないかと思います。

何年かしたら、「残業禁止で時間が余っててね。それで家に帰って毎日あのプログラムを書いたんだ」なんて具合に素晴らしい技術が生まれた背景を振り返ることができるかもしれません。まだすぐに景気が回復しそうにありませんが、そういった状況だからこそクラウドコンピューティングのような明るいビジョンに向かい、一人一人ができることをしていきたいものです。

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